188.我らの戦い方を見せてやれ
王都はぐるりと低い塀が巡らされている。これはアルダ王国が建国する前、別の小国家が造り上げた防衛ラインだった。その小国家は人ではない獣と戦ってきた。畑を荒らす害獣の侵入を防ぐための塀は、アルダ王国に滅ぼされた後で王都を示す境界線として利用される。
塀の内側に住居から畑に至るまで。すべてを収納した小国家と違い、アルダ王国は徐々に肥大してきた。そのため一部の塀を壊し、外側へはみ出ている。なんとも醜いことだ。太りすぎて破けたズボンの尻のようだ。以前にそう表現したら、カランデリア様が笑い転げていたっけ。
思い出して口元が緩む。頬に風を感じながら、モニカを走らせた。すぐ脇でグラシアナが剣を抜く。塀が目の前に迫っていた。一般的には馬が急停止する高さだ。しかし崩れた塀の残骸が積まれている一角を利用し、モニカが塀を飛び越えた。
同じルートを使い、グラシアナが続く。さらに弓に矢をつがえたカンデラが追った。カンデラは騎乗しながらも正確に的を射抜く。その能力は一族の中でも抜きん出ていた。ゆっくりと弓がしなり、弦につがえた矢が飛ぶ。
「よくやった、カンデラ!」
見事、敵兵の腕を抜いた矢に味方から歓声が上がった。モニカが拓いた道を通り、ウルティアの戦士が街に侵入する。カンデラは馬を止め、馬上から味方を援護する戦い方を選んだ。軽く手を振って横を抜け、街道を塞ぐ門の裏側へ入る。
「おっと!」
狭い道から飛び出した槍の穂先を、身を仰け反らせて避ける。直後、その兵士の腕はグラシアナによって切り落とされた。悲鳴と血飛沫にも、若い同族は怯まない。分家の次期当主やその補佐として頭角を現している有望株ばかりだ。背を任せて不安はなかった。
「やれやれ、俺の出番がなくなる、だろ!」
軽い口調で割り込んだガスパルが、語尾に力を入れて剣を振るう。いくつかの槍をまとめて折った。姿勢を戻して手を振る。ガスパルが私を追う展開で、そのまま大きな門に到達した。見上げる高さの門は放置しても問題ない。
ここに兵士が集中しているため、落としておいたほうが背後の懸念が減る。その程度の場所だった。実際、私も含めウルティアの戦士は勝手に塀を飛び越えている。それでも……総領家の跡取りが裏から出入りするのは外聞が悪いから、な。
門を壊す槌は持ってこなかった。重い荷物だからだ。だが門の破壊に使える武器が常備されているのは……知っている。この門を壊すためではなく、敵国の装備を破壊するためだ。破城槌と呼ばれる類だが、やや小ぶりなのは持ち運びを考えてだろう。
「ウルティアの力を見せるときだ。シルベストレが待っているぞ!」
号令をかける私の横を走り抜けるのは、力自慢の男達だ。普段は鍛冶屋だったり、大木の伐り出しをする木こりだったり、はたまた石畳を直す建築屋だったりもする。太い腕を見せつけるように袖のない服で、革鎧を身に着けた彼らは容赦なく門を攻撃した。
彼らを守り切るのが、我々の役目だ。グラシアナと並んで剣を振るう。槍の先と矢を落とし、形相を変えて襲ってくる兵士をなぎ倒し……気づけば周囲は赤く染まっていた。




