183.一緒に入るか?
「なんら問題ない。こちら側から合流すればいい」
けろりと言い放つガスパルは、本当にそれでいいと思っているようだ。キロス国王の考えは違うだろうに。騎士団長を始めとする騎士達は重要な戦力なのでは? 突きつけたガスパルは、きょとんとした顔で「だが、行って来いと言ったのは陛下だぞ」と返した。
ああ、うん、そうだな。曖昧な返事が頭に浮かぶも、言葉に出すのは憚られた。直訳すると「王の考えが足りないだろ」と肯定する形になるからな。反論は呑み込んでおく。
「騎士達は明日には準備が整う。いつでも随行できるぞ」
キロス王国の騎士団長を「随行」させてしまって問題がないのか……いや、婿だから構わん。考えるのは母上やベスに任せよう。
「ウルティアは即日出発可能だ。あとは手合わせでもするか」
久しぶりに汗を流すつもりで提案すると、ウルティアの騎士が大喜びだった。なぜかガスパルも参加すると言い出し、乱闘に近い手合わせが始まる。うちの騎士達がガスパルを避けて私に群がるが、さすがに失礼だぞ。私の実力を舐めすぎだ。
ガスパルの強さに、腰が引けるような連中ではないはずだが? 疑問に思いながら捌いていく。途中で「呆れた、私は部屋に戻るわよ」とベスが離脱する。ちょうどいいと母上が続き、父上は最後まで戦いを見守った。
当主として、戦力の把握は重要だと考えたのか。しかし、父上は戦いに出ないはず。ああ、そうか。戦略を立てるのに必要なのだ。納得しながら最後の一人を叩きのめし、額の汗を拭う。
「風呂に入って汗を流さなければ……ん? ルカも洗うか」
きゃう! 風呂を嫌がらないルカを連れて歩き出せば、後ろからひょこひょことガスパルがついてきた。ルカの子分に見えるぞ? 出会った頃のどっしりした侯爵閣下の姿はここにはなく、若手の騎士さながらの素直さで後を追う。
「一緒に入るか?」
「え、あ……え、えええ?!」
ちょっとした悪戯心で誘うが、こちらが引くほどの勢いで首を振った。もげて落ちそうだが……眩暈がするまで振り続け、最後は玄関前の砂利に座り込む。
「お嬢様、いい加減になさいませ。みっともないですぞ」
玄関先でバシリオに叱られ、飛んできたナイフを叩き落とす。不意打ちにもだいぶ対応できるようになったし、今回の戦いでは活躍できそうだ。満足しながらルカと部屋に戻った。
「一緒に……風呂……」
「なりません」
呟くガスパルに、叱りつけるバシリオ。二人のやり取りを背で聞いて、弾んだ足取りで私は扉を閉めた。カランデリア様からの合図が楽しみだ。




