121.繋がったのならいっそ
モニカやブリサに置き換えれば、感情移入してしまう。一瞬しんみりしたが、すぐにリエラ侯爵が場の空気を変えた。
「ところで、ソサ商会の代表殿とどういった繋がりが?」
ソサ商会……ああ、商隊主のことか。一瞬きょとんとした後、笑顔で説明を始める。彼の出身地がウルティアであるため、両親経由で旅の同行をお願いした。途中で盗賊に襲われ撃退したので、そこからは護衛としての仕事を請け負ったこと。
一つ手前の街へ向かう道中で戦った盗賊は、大きな集団だった。彼らは旅人の脇を抜ける地元の農夫の振りで、背後から襲い掛かる手口を使ったこと。そういった話の最後に、現場に残された黒鹿毛フィトの情報を足した。
矢が掠めた切り傷で、後ろ脚を痛めていた。馬を連れて移動すれば商隊を危険に晒す。そこでベスと二人、別行動を取った。その部分まで話すと、リエラ侯爵はごくりと喉を鳴らした。息を呑む仕草の後「女性二人で、か?」と尋ねられて天井を仰ぐ。
「私の男装はそこまで下手か?」
苦笑と嘆きが混じった呟きに、ベスがくすくすと肩を震わせた。あっさりと見抜かれ、当たり前のように口に出される。もう言い訳の余地がなかった。どうやら私の振る舞いのどこかに、女性を思わせる部分があったのだろう。歩き方も気を付けていたのだが。
「どう見ても女性だろう。顔の傷は化粧か?」
心底不思議そうに返され、傷は本物だと伝えた。すると少し考え、顔を上げる。じっと傷を見つめてから「もしかして」と切り出した。
「アルダ王国に国王を守って傷を負った王太子妃候補がいる、と話に聞いたことがある。辺境伯家のご令嬢だったとか」
「ああ、それなら私のことだ。第二王子の婚約者だった」
王太子妃は別にいる。第二王子イラリオのことを久しぶりに思い出した。あの男は今どうしているか。思いを馳せるほど、気にしたことはなかった。それは婚約者時代から変わらない。
「ウルティア辺境伯家だったが、独立した」
ちょうどいい。ここから話を切り込んで、根回しをしてしまおう。顔に出さず決めた私の隣で、ベスも援護体勢に入った。
「我が一族の名はご存じでしたか?」
「ああ、武人ならウルティアを知らぬ者はない」
リエラ侯爵は真っすぐな性格らしい。誤魔化したり駆け引きしたりする様子はなかった。恩人というフィルターも役立っているようだ。付け込むようで申し訳ないが、ここは押していこう。
「アルダ王国の辺境伯家として数世代を過ごしましたが、本来、ウルティアは独立した一族です。アルダ王国の反対側を守るモンタネール家も同様でした。アルダ国王は我らの信頼を損なった」
尊敬できない王に敬語は使えない。はっきりと示しながら、かいつまんでアルダ王国の情報を流した。




