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可愛い弟を溺愛しながら生きていく  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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101/104

101.美女の定義に当てはまらない

 兄妹を装った姉妹ということで、納得したらしい。旅はどうしても物騒だ。盗賊ならば金で見逃される可能性もあるが、誘拐は別だった。貴族の子女、護衛なしの旅となれば目を付けられやすい。数回失敗しても諦めずに追ってくるだろう。


 貴族という生き物は高く売れるのだ。実家に身代金を請求してもいい。逆に敵対する貴族に売りつければ、法外な値をつけてくれるはずだ。貴族の血筋を奪おうとする連中もいる。子を産ませてしまえば、その子を使って家の乗っ取りを企むことも可能だった。


 危険を承知しているから、親は子に護衛をたっぷりとつける。姉妹で商人と同行となれば、何らかの事情を勘繰られる状況だった。ましてや他国の親族を訪ねると口にした。虐げられ、逃げたようにも見えるのだ。


「誤解させただろうな」


「せっかくだから利用したらいいわ」


 ベスは欠伸しながら、梳かした髪を三つ編みにしていく。慣れた手つきで作業を終えると、ぽんと背中に放った。ベッドに寝転び、溜め息を吐く。


()()()を口説こうだなんて、百年早い」


「ん? アロンソか。あれは貴族へのお世辞だな」


 からりと笑って「美女はない」と言い切る。振り返ってじっと私を見つめ、ベスは大きく肩を落とした。それから吸い込んだ息を長く吐き出す。


「自覚がないみたいだけど、お姉様は美人だよ。頬の傷だって貴族の結婚でなければ、気にしない人が多いの。自覚したほうがいいんじゃない?」


「自覚してどうする。襲われても叩きのめせるぞ」


 さらりと受け流した。美人? 美女? そんな表現が似合わないことは、私が一番知っている。ベスは身内だし、ウルティア一族の気質を強く受け継いでいた。だから、傷があっても好ましく感じる。一般的に、男性は顔が整った大人しくて胸の大きな女を選ぶのだ。


 アロンソも当然そうだろう。傭兵稼業は厳しい分、報酬が高い。傭兵や騎士が色街で女を買う話はよく聞いた。後腐れなく遊べるのに加え、激しい戦闘があった際は気持ちの高揚に任せて発散する。男とはそういうものだ、と知っていた。


 色街の女性達は、たおやかで美しい。自分の身が商品であると知っているから、高く売るために磨く。そんな美女の集団を見慣れた男が、男装した顔に傷のある女を「美女」と呼んだ。どう考えてもからかわれたか、お世辞だ。


 決めつけて言い切った私に、ベスが「お姉様って本当に残念な人」と嘆いた。意味は分からないが、可愛くないという意味なら、同意する。

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― 新着の感想 ―
自己評価が低いのはたしかに残念ー
世間的に美女なのに、分かっていないというか、自身の美しさはどうでも良い??自身の周りの、可愛い(ベスさんやルカちゃん)が大事なんですね!アリスさんは明らかにモテてても、気づいてないw
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