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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
7章 天国から地獄へと墜落した大学編

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8 嫌でござる! 絶対にはたらきたくないでござるよ!!

 時田の通っている大学の学生は、貧しい人が多い。奨学金をもらい、更にバイトをしている学生もざらにいる。深夜3時、トイレに起きるとへとへとになりながら寮に帰って来る学生と廊下ですれ違った。


(きっと深夜のバイトだ……)


 時田は比較的、お金に困ったことは無く、学生の期間のお金は全て父に出してもらっていた。寮の家賃も、電気水道代も、食費も、部費も――。

 時田は、自分だけ楽しているんじゃないかという罪悪感や、学業や仕事に勤しむ学生を目にし引け目を感じていた。

 そこで、せめて部活動の部費くらいは自分で払おうと、バイトの面接を受ける事となった。音声送信は、面接時も鳴り響くと予期して、それでもできるだけ気に留めない様、自分に暗示をかけていた。

 この、時田がバイトを始めるという判断は、後々分かるのだが、大いに間違っていた。今ある財産に感謝し、自由に使っていればいいものを、変に気を使った為、最悪の人物と出会う事となるのだった。

 バイトは居酒屋にすると決めていた。なんとなく、料理が作れて、自炊できるようになりそうだし、時給も高いからだ。面接の一軒目は、関東近辺にあるチェーン店の居酒屋だった。


『何しょうるんかなー?』


(うるさい、黙れ)


 音声送信は案の定、鳴り響く。面接が始まった。


「――ですか?」

「はい、――です」


 序盤は、スムーズに応答できていた。


そこで――、




『何なんかなー』




(うるさい!)


「? どうかされましたか?」

「! いいえ、何でもないです」


つい、音声送信に反応してしまった。表情がこわばってしまったのだ。少し動揺しつつ、面接は終わった。


その後も、


『何なんかなー』


(無視だ無視……)


『何なんかなー』


(!……)


『何なんかなー』


(あ……今、お店の人、何て?)


『何なんかなー』


(急に話し掛けられる……集中できない……!)


 時田は徐々に音声送信にペースを握られて、思った様に面接の応対ができなくなっていった。


「(アイサツくらいはしっかりしないと……)本日はありがとうございました!」

「はーい、じゃあね」

「失礼します!」


 と――、

 ここで時田は大きなミスを犯す。行儀悪く、靴を履いて帰ってしまったのだ。店の人の目線が、時田の足の方へ傾いているのが分かった。


(み……見られてる!)


 早く終われ、早く終われと考え込んでしまったばかりに、最後の最後でミスが出てしまったのだ。居酒屋のバイトは接客業。行儀が悪ければ、即NGだろう。


(やられた……)


 時田は音声送信に反応してしまった。それだけならまだしも、平静さを欠いてしまった。


(今回の様なコトがこれからもあるのだろうか?)


 そう思うと酷く憂鬱な気分になる時田だった。


 音声送信――。

 思考盗聴だけなら、個人情報流出に目をつぶれば耐えられるのだが――、




『騙された!』




「!」


 頭に直接鳴り響くこの声を、耐える方法が見当たらない時田だった。居酒屋のバイトの面接から、一週間経ち、電話が掛かって来なかった。


 ――というわけで……。



 初バイトの初面接、見事に落ちる!



 案の定、と言った感じだった。音声送信に反応したのもそうだが、致命的だったのは最後、店を出るときの行儀の悪さだ。


(何故あんなにテンパってしまったのか……?


 悔やまれる。だが、こうも落胆してばかりはいられない)


「次、だ!」


 時田は次も居酒屋のバイトの面接をするべく、求人広告を読み漁った。時田はすぐに次の店を決めて履歴書を書き、面接へ向かった。


 面接当日、時田は最寄り駅に近い居酒屋に立ち寄った。店は、落ち着いた雰囲気の店だった。


「宜しくお願いします」

「宜しくお願いします」


 面接が始まった。


「――ですか?」

「はい――」


 質問に答えていく。今回は、珍しく音声送信は聞こえてこなかった。


(アレ……? この人、目が笑っているのに笑ってない……?)


 時折見せる、店長の笑みが不自然に見えたのが、気がかりだったが――。


「ではこれで終わりです」

「ありがとうございました」


 無事、面接は終わった。


(よし。特別な事情が無ければ、受かっただろう)


 時田は自信を持って行儀よく店を出た。



 そして――、


「今回、時田君とは一緒に働いてもらうということになりました」


「はい、ありがとうございます」


 時田は面接に受かった。


(よし! これで親に迷惑を掛けずに部活ができる!)



 しかし――、

 これが最悪の出会いに繋がることを、時田はまだ知るよしも無かった。

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