7 気を付けろ!! 思考盗聴器は存在する
『気を付けろ!! 思考盗聴器は存在する』
(いきなり何だ? このキャッチコピーは)
時田はそのサイトのトップページの字面に、微笑しつつ、続きを読んでみた。
『いずれ、全国民は思考盗聴器を仕掛けられる』
「!?」
何を言っているんだ……? ひとまず続きを読もう。
『国家は、犯罪の抑止力として――』
「?」
『思考盗聴器を使えば――、危険な感情を持っていたら――そしてその人間の行動を――』
(おいおいこれって……)
(回想)
『犯罪心理学などを学んで思考盗聴器と向き合えば、○○と考えたときに、犯罪に走ると予測が立ち、未然に防ぐ事ができるかもしれません』
(回想終了)
(俺が呼び掛けで言っていたことが……アレは気を引くための……)
『国民全員に思考盗聴器を仕掛けて――、犯罪の無い平和な国創り――』
(こ……これは……)
『自由権とやらを約束しない――これで犯罪の未然防止が完全にできるか――観測者が現場に居ない分、文字だけ把握するのは、誤認逮捕も有り得る――』
(重たい……)
これは数日に分けて読もう、そう決めて時田はブックマークだけしておいた。両手を頭の後ろに添えた。
(同じ考えの人間が居るとは……)
「あ!」
(そう言えば、2008年現在、地上デジタル放送の移行が進んでいる。アナログ放送の電波よりも、占める領域が少なく、地デジの電波なら空いた領域……使える……?)
「地デジ……領域……電波……信号……まさか、な……」
(流石に、笑えない
日本は、国レベルで……? もしそうだったとしたら――、
多分、NASAか何か、めっちゃ技術力がある研究所の依頼……か? 日本にそこまでの技術はない……。世界のトップが、日本の国民を使って、生体実験して、また新型の思考盗聴器を作っていくんだろな。何がしたいのやら。本当に犯罪の未然防止が目的か? その研究機関の目指すモノは……?
疑問は尽きないが、いっぺんに読むと重たい内容だ。明日また読もう)
――、
そして、昨日の今日。
「あっ」
昨日ブックマークしたサイトに飛べない。
「履歴から行ってみるか……」
履歴のそれらしい項目が文字化けしていた。
(PCの不調……? 他のサイトは……?)
『月曜日なーのに♪』
有名動画サイト。音声、映像がしっかりと動作していた。
(あのサイト……消された? おいおい、サイト造ったヤツも消されたんじゃないか?)
そう思えばゾッとする。時田もこの前まで、『呼び掛け』であのサイトと同じようなコトを話していたからである。
気を紛らわすため、他の思考盗聴器関連情報を見る。
『犯人は苦しめ! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!』
(あらー。これは良くないな、犯人煽ってるだけだ。おっ、2ちゃんにも何か書き込みがある)
『誰かどうか助けてください。本当に困っています』
『被害者装っているのはみんな糖質、病院池』
……。
『助けてください』
……。
(回想)
「そういうヤツなんよ! こんな奴なんよ!!」
「あぁぁあああああああ!!」
(回想終了)
(一方的な、暴力。逃げられない、理不尽――)
あの苦しみを味わっている人が、他にもいる事実に、時田は心が震えた。
(やるしかねぇな)
時田は徐にキーボードを敲き始めた。
『皆、安心してください。もう少しの辛抱です。もう少しで皆、助かります』
そして――、
『私の名前は時田総司、通信工学科専攻、学籍番号は20170です。私は今、とある事情を抱え、困っています』
時田は『呼び掛け』を行い始めた。数分で呼び掛けを行い終え、メールが来るのを待っていた。そこで、驚きの内容の『声』が聞こえてきた。
『意味ないんよ。携帯会社が脅されて、メールが届かんようになっとるで』
(! まさか……音声送信が嘘を吐いている可能性も……でも!
もしそれが本当なら、敵はどこまでも卑怯で残酷だ。
……なら!)
時田は学校敷地内のB棟2階の階段前に向かった。
(直接見せてもらえばいい……)
(回想)
「障害児が……!」
(えっ……?)
(回想終了)
アレが、あの場所への歩みを鈍らせる。
しかし――、
時田はそこへ辿り着いた。
「よっしゃ……」
足が棒になるまで立ち尽くした。
2時間は経っただろうか……?
「今日も収穫無し――、か」
それでも時田は引くに引けなかった。
『皆、安心してください。もう少しの辛抱です。もう少しで皆、助かります』
あんな事を言った手前、被害者の皆を助けなければならない。使命感が時田を突き動かす。
それから――、
雲がかかる日――、傘をさす時田の靴下はじっとりと嫌な湿り気を感じる。
誰ともすれ違うことすらない日もあった。
それでも時田は2カ月にわたり呼び掛けを行った。そこで気付いた。
(呼び掛けが無視され、時田に協力者が居ない、この状況が蔓延化している……!)
これでは到底、思考盗聴器の被害は解決しない。時田は為す術が無くなり、ひとまずは『呼び掛けを』やめる事とした。
(非常に不本意ではあったけど)




