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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
7章 天国から地獄へと墜落した大学編

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9 社会にちょっと出られたつったって、所詮はビギナーズラック。段々と現実が見えてくる

「いらっしゃいませ!」




 居酒屋でのアルバイト生活が始まった。

 時田はキッチンで料理を作るポジションで働く事となっていた。結構体を動かす仕事だったので、席に座って集中して頭を使う勉強よりは、幾分か楽だった。音声送信も、気にならない程、集中して仕事ができていた。


(働くのって案外簡単じゃないか?)


 余裕をこいてそんな事さえ思う時もあった。


 そう、始めのうちは――。



 ――、


 バイトを始めて一ヶ月くらい経っただろうか。時田の持ち場の揚場に、注文が殺到した。


クリームコロッケ、

唐揚げ、

タコ唐、

クリームコロッケ、

タコ唐、

タコ唐、

クリームコロッケ。


 混乱して、あたふたしてしまっていた。その様子を店長は見過ごさなかった。


「おい」

「!」


「お客さんから唐揚げまだか? ってクレーム入ってるぞ?」

「はい!」


 焦らされても、状況を判断して、時間のかかるモノからフライヤーに入れて仕事をこなしていった。ひと段落すると、


「おい、裏へ来い」


 店長から呼び出しがあった。ゴミ箱などがあるお店の裏へ促されるまま入って行った。不意に、店長が胸ぐらを掴む。


「!」


 視界が、揺れた。


「お前、仕事が遅ぇんだよ。お客さん待たせて……何週間働いているんだ?」

「はい……」

「何だと思ってんだよ?」

「はい……すいません」

「いいか? 今度お客さん待たせたらただじゃ置かないぞ?」

「はい……」


 急だった。一ヶ月間、会話もろくにしなかった店長が、急に怒鳴り散らしてきた。胸ぐらを掴んで


 ――。


(でも、お金をもらっているんだ。自分のミスだし、仕方ない)


 そう自分を納得させて、仕事に戻った。これが、店長から受けるパワハラの始まりに過ぎないと、知るよしもなく――。


「お客さん呼んでるよ!」


(……まさか)


 ホールの人が対応に向かったのを見た。暫くして、店長がこちらへやって来る。やけにニヤついていた。口だけは笑っている様に見えたが――



「お客さん待たせたな! こっち来い!!」



 またしても胸ぐらを掴まれた。


「仕事なんだよ!! 分かってんのか!?」


 ゴンゴン!


 店長は時田の頭を分厚い壁に打ち付けてきた。

 重たい痛みが、後頭部にズンズンと響いてくる。


(さっきはニヤニヤしていたのに……まさか、怒りたくて怒ってる……?)



「――! ――!!」



(何か説教してくるけど……?)


 頭に血が上っている時田の耳には、その言葉は入ってこない。


「なんだその目は!!」

「……はい」


(頭が痛い)


「もういい!! お前はクビだ!!!!」


「!」


「いいな!?」

「はい……」

 クビ宣告を受けた。


(丁度辞めたいと思ってたところですよーだ。こんな良く分からない店長の下で働いても、ギスギスするだけだ。別の場所で働こう)


 その日の締め作業中に、店長が話し掛けてきた。


「クビって言ったけど、今月のシフト分はしっかり働いてから辞めろよ?」

「はい……(当たり前の事かも知れないけど、コイツが言うとムカつく)」


 クビ宣告を受けた時田は、明日からこの店長と顔を合わせる事が無いのだろうと、安心していたが、少し社会の厳しさを知る事となった。


『すげぇ店長だね』


 音声送信が聞こえてきた。


『手ぇ出してきたんだから、何かしてやれば?』


 暴力で何かを解決したことのない時田には、無縁のアドバイス(?)だった。



 次のシフトの日、休憩中にバイトの先輩と話す機会があった。


「お疲れ。今の店長、どう思う?」

「……厳しい人だと思います」


 時田は当り障りのない言葉を探し、言った。すると、思いがけない言葉が返ってきた。




「今の店長はクソだよ」




「!!」


「昔の店長の方がいいね」

「そう……なんですか」

「お客さんも店長のコト嫌っているよ。しかもアイツ、ピークタイムに事務所で内職してるんだぜ? 家で帰ってからできるのに」

「!! ……クソ、ですね」


 時田は少数派では無かった。店長を嫌っている人は、居る。しかも弱みに付け込む情報も得られた。今度のピークタイム、店長を探してやろう。


『それでいいよ』


 音声送信の声も、流石に時田に味方してきた。


(本当に味方するのなら、音声送信を二度とできない状態にしてほしいものだが……)

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