10 〇ーっこにっ〇動画
近頃、時田が思うコトがある。
今実際に会っている、話している人の音声送信が聞こえてきて、疑問だ。
(目の前の人が、未来とかから話し掛けてくるのか……? もしそうだったら、先輩と話している時が気まずい)
「おはよう」
「おはようございます!」
「――、――」
「はい、そうですね(と、いうコトにしておこう)」
『何だ? そんなことを考えてたんだ?』
先輩からの音声送信が頭に響いた。
「!(す、すいません……)」
相手が何も言っていないのに、時田は心の中で謝った。
(やりづらいな)
『思っても言うな』は分かる。
『思っても思うな』は無理がある。
ちょっとでも邪な考えを持つだけで、周りに知れ渡る。元々、聖人でも何でもない時田が、常に模範となる感情で生きているとは言えず、つい、反感を受けるコトを思ってしまう時がある。何より、
(自分の時間が、一秒もない……)
音声送信は、朝起きてから夜寝るまでひっきりなしに聞こえてくる。
『また、朝が来てしまった』
中学の時と同じようなコトを思う日もある。誰かに見られているだけではなく、常に誰かに話し掛けられているのだ。その上、
『今集中したいから、黙ってくれ』
これが、通用しない。しかも、音声送信をしている人同士で、時田を媒体として会話を始める時もある。
『――だよな』
『ああ、――だ』
『それで……』
(自分が道具扱いされてる……? 俺は携帯電話か何かかよ……)
ひとまず、問題だらけの生活だ。
(早く思考盗聴器や音声送信を使用できない様にして、人間らしい人生を送って行きたいものだ)
「オイーっす、ヤガイに時田。通信科、もう飯やったんやな」
「おーう」
「北村……」
平日、昼休憩のことだった。北村とは、ヤガイと同じ高校出身で、電子科の同級生のことだ。よく3人で食堂で話す。
「アレ、言うとったやろ? 6画面でゲームするやつ。ヤガイ、アレ見ぃ」
「ぜってぇ見ぃひん」
「はは、見てみよ。そういや、緑のキノコが襲ってくる奴、新しいの――」
時田は、悪い縁も良い縁も持ち易い気質なのか、ナルや店長みたいなのに目を付けられることもあれば、こんな感じにたわいない話をする友人をすぐ作れていた。
「今期アニメな、何かないんか、ヤガイ?」
「バイトで見てへん」
ここで時田が切り込む。
「アニメというと、2人とも……」
『ん?』
「『お兄ちゃんのことなんかきらい』みたいなやつあるじゃん」
「あぁーあるなぁ」
「あれどうなん? 何なん、あれ?」
「あれ、実際妹の方な……」
『ゴクリ……』
食堂全体が、時田の次の言葉を待つように静まり返った。
「めっちゃ好き」
『ぎゃっはっはっは!! マジかぁ!?』
「ははっ、はぁー……(案外、上手くやっていけてる。独りで関東に出て、たった1人で戦っていくとか、気負い過ぎていたのかもな……)」
時田が過去を振り返った時、一番楽をしていたのが、この18歳から20歳の頃の2年間だった。平穏は、赦されていないようで、案外――




