4 『呼び掛け』全文
『私の名前は時田総司、通信工学科専攻、学籍番号は20170です。私は今、とある事情を抱え、困っています――
今あなた方がご覧になっている文字は、私の脳内で考えた言葉が、機械で読み取られて文字になっているものです。自分でこのような機械を使用していると考えている方もいらっしゃるようですが、私はその機械を何者かによって仕掛けられた被害者なのです。
例えば私が、住所、氏名、年齢などの個人情報を書類に記入する時、自分で機械を仕掛けたのならば、電源をOFFにして個人情報が周りに漏れないようにするはずです。しかし、その機械はそのような状況でも動き続けているはずです。キャッシュカードによる現金引き落としの際にも、暗証番号を頭で考えている時、思考盗聴器は動き続けているはずです。このように、私は思考盗聴器を自分で操作しているのではなく、他人によって仕掛けられているのです。
さて、なぜこのような呼び掛けをしているのかというと、私は皆様にとある協力をしてほしいからです。
私に協力して何のメリットがあるのかと、思われる方もいらっしゃると思います。メリットは無いと言えば無いのですが、これを放置することに対するデメリットはあります。それは、私の在学する大学に対してです。
このまま思考盗聴器が流通し続けると、この都市の人々はその存在について知ろうとします。
この思考盗聴器と連動している人物はどんな人物か。
学生なら、どのような学校に通っているのか。
等、様々な疑問も上がるはずです。
その学校が工学部系の大学だったら――
人々は学生を使って生体実験をしているのではないか、と考える可能性もあります。
ひとまず、不気味な機械です。私達の所属する学校に悪いイメージがつくかもしれません。就活を控えた先輩方にとって、企業へのマイナスイメージに繋がるのではないでしょうか。根も葉もない噂を囁かれるかもしれません。かつて、噂だけで潰れた銀行もあります。それも、ちょっとした冗談から始まった噂だったそうです。
このように、この思考盗聴器を放置することは学校全体にとってデメリットになります。なら、どうしてほしいのか。
その思考盗聴器のディスプレイのソースをコピーしたサイトのアドレスを、私にメールして頂きたいのです。
この思考盗聴器は謎だらけです。誰が、何の目的で作ったのかは分かりません。何の目的で作られたのか、それを予想してみます。
1つ目、
元々、言葉が話せない、または何らかの事故で話せなくなった人が、コミュニケーションをするために作られた。
2つ目、
国民全員に思考盗聴器を仕掛けて、犯罪の未然防止、犯罪の無い平和な国づくりをするために作られた。
3つ目、
戦争で優位に立ち、戦っていくために作られた。
以上、3つの理由が考えられます。
1つ目のコミュニケーションのために作られた、という予想について話します。頭で考えたことが文字になるという点では、思考盗聴器はコミュニケーションに役立つため、この予想は完全には否定されないでしょう。しかし、思考盗聴器という名前から、コミュニケーションが目的である可能性は低いかもしれません。
次に、2つ目の犯罪の未然防止のために作られたという予想について話します。犯罪心理学などを学んで思考盗聴器と向き合えば、○○と考えたときに犯罪に走ると予測が立ち、未然に防ぐことができるかもしれません。しかし、思考盗聴器を監視するには莫大な人数が必要となり、また監視する人間の適性を厳しく審査しなければ、逆に悪事に利用されるかもしれません。
最後に、戦争のために作られたという予想について話します。情報が戦況を左右するというのは今に始まったことではなく、遥か昔から存在する定説です。思考盗聴器を敵軍の幹部クラスの人間に仕掛ければ、相手の作戦、武器や軍の人数などの戦力、敵の本拠地等がリアルタイムで分かり、大きく優位に立つことができます。この予想が、3つの中で最も現実味があるでしょう。
しかしながら、これらの予想が真の目的ではなく、本当はもっと恐ろしい目的で思考盗聴器が作られたのかもしれません。思考盗聴器がこれ以上認知されると、国中がパニックに陥るでしょう。一刻も早く、思考盗聴器を使用不可能にしなければなりません。どうか、協力をお願いします。』
私の携帯電話のメールアドレスはsh…….jpです。どうか、思考盗聴器の証拠を私に送ってください。最後までお読みくださり、ありがとうございました。では、失礼します。




