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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
7章 天国から地獄へと墜落した大学編

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13 1年の終わりに訪れる声は、キャッチコピー風に言うと『敵か味方か?』

 正月休みを挟んで、1月第2週。時田はいつもの通りアルバイトをしていた。

 と、そこへ――、


「ウェーイ、また飲みに来たよー」


 カツヒコ達が現れた。


(また来やがったか、まあいい)


 時田はフーっと大きく息を吐いた。


(そういえばこの前、思考盗聴器を止めるとか言ってたよな。あれはどうなったんだ?)


 思考盗聴越しに話し掛けてみる。


「えっとねぇ……忘れた」




「! ! ! !!」




 時田は憤慨した。そしてカツヒコの事を1ミリでも信じた自分が馬鹿だったと思い知らされた。


(この野郎。仮にも昔友達だったヤツが本当に苦しんでいるのに、『忘れた』だと? そんなので許されると思っているのか?)


「ごめーん」



「! ! ! !」



 時田は言葉を失った。


(謝るよりもまず行動しろ。それに謝っても許さない……)


「ちょっと! 早く何とかしなさいよ!」


ナルも、思考盗聴器を早く使用不可能にして欲しいらしい。多分、時田の心配は1ミリもせずに、自己保身に走っているだけなのだろう。


「良いじゃん。総司君が困るだけだし。えへへ、注文しよっと」


(! コイツ……)


 時田がホール担当だったら、すぐにでもトレイを持って行き、顔面目掛けてぶち込んでやるだろう。


(なんてことだ。散々、思考盗聴器に苦しめられ、必死に耐えてきたのに、敵はここまでお気楽で呑気で馬鹿なのか……。耐えてきたこっちが馬鹿馬鹿しくなる。さて、推測ではあるが、思考盗聴器本体の持ち主は、カツヒコの家のオッサンだと分かっている。住所を突き止めて押し掛けてやろうか? いや、もし何もなかったらどうする? こちらは思考盗聴器の証拠、思考盗聴連結ブログすら手中に無い。そんな状態で家に押し掛けられるだろうか?)


 否――。


 そこまで冒険はできない。


(せめて思考盗聴連結ブログのURLを手にしてから、アイツの家に押し掛けよう


 それにしても……)



「あれが時田かぁ……」

「アレが機械人間」

「あいつ、普通に仕事してんな」



(視線を感じる……あっ、目を逸らした)


 店に、時田(思考盗聴器)目的で来る客が増えた。時田がこっちへ来て、半年以上経つ。関東の一部で何割かの人間が思考盗聴器を認知したのだろう、実在しているのか、確かめに動いている者も居る。


(そろそろ、潮時か?)


 時田は明日や今日にでも、NASA辺りの関係者に殺害される覚悟を決めたのであった。


 1月某日――。2、3回程アルバイト先の店に来ていたカツヒコ達だったが、遂に店に来なくなった。大方、あちらの大学の冬休みも終わったのだろう。


(休みは茶化しに来て、休みが終われば放置、とな)


 気楽なもんだな、加害者側は――。そう時田は心の中でぼやくが、それが何の意味も持たないのは分かっている。


(分かっているが……


 少し弱みを見せても、罪にはならないよな)


 1月は行く、2月は逃げる、とはよく言えたもので、月日は流れ、大学の春休みを迎える頃になった。


(成程、大学では優、良、可で成績がつくのか。あー、優少ねぇ)


 時田は図書館のパソコンで成績を確認した。思考盗聴器を仕掛けられて、被害に遭っても、進級はできるもんだなと感慨深かった。


(それに比べて、居ますわな。留年する人。よっぽど自制心が無いのか? それとも、笑ってしまうくらい、頭が悪いのか? 時田には判断し兼ねるが、さて、いよいよ、明日から春休みが始まる。これと言って、やるコトは特に無いが……部活とバイトくらいか。何にせよ、久しぶりの長期休暇だ。しっかり満喫しよう)


と、そこへ――、


『初めまして、時田総司君』


 聴いたことがない声の音声送信が届いた。


『私の名前は×××、とでも名乗っておこうか。思考盗聴連結ブログを探そうとしているようだけど、それは無理だ。君の携帯アドレスにそのURLが届かない様に、そのURL付きのメールを携帯会社がプロテクトを付けている様だ』


(!! 信用して……良いのか……? でもそれなら辻褄が合うような……あ、ありがとうございます……)


 時田が心の中で返答をするのを遮るように、音声送信の声が続く。


『君が仕掛けられている思考盗聴器は、確かに元友人のカツヒコ君の家に有りそうだ。近日中にカツヒコ君の家に立ち寄り、それがあるか確かめてみる』


(それで……、思考盗聴器はどうなるんで……)



『詳しくは話せない。国家権力が関わっているからな』



「!? まさか……」


 敵を把握する為の試行錯誤の日々が過ぎった。



(回想)


『この思考盗聴器は、謎だらけです。誰が、何の目的で作ったのかは分かりません。何の目的で作られたか、それを――


(回想終了)



(回想)


 ――そう言えば、2008年現在、地上デジタル放送の移行が進んでいる。アナログ放送の電波よりも、占める領域が少なく、地デジの電波なら空いた領域を他の信号が使えるようにできる。


(回想終了)



(2……2007年からマイナンバーとかいう国民に数字を付けるという制度が始まるとか、ニュースで言ってたな……)


 時田は寒気がして、足に力が入らなくなった。


『前にやっていた、“呼び掛け”だったかな? あれはもう、しない方が良い。また何かあったらこちらから“声”を送るよ。じゃあね』


「ッハッハ」


 過呼吸になるところだった。


 胸をドンドン叩いて、呼吸を落ち着かせた。多分、人生で一番緊張する『会話』をし終えた。

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