12 間抜けがまんまと尻尾を掴ませに来やがった
勉強――、試験――、部活――、バイト――。
日々そういったサイクルをこなしていくうちに季節は流れ、
12月――。
忘年会シーズンの季節がやって来た。
「宴会Bコース8人分! 出して!」
「はい!!」
「お客様6名ご来店です!!」
「いらっしゃいませ!」
時田は未だに居酒屋のアルバイトをしていた。
そこへ――、
「うわぁ、すごい店だ……」
中学の時に時田と岸田君を売った男、カツヒコの声が聞こえてきた。
「ふん!」
永遠の天敵、ナルの声もする。
(アイツら……!)
どうやら中学の同級生が思考盗聴器を頼りに時田が勤務している居酒屋へやって来たようだ。キッチン担当の時田に見えない位置の座席へと進んで行った様だった。
(んなコトやってる暇があったら、さっさと思考盗聴器を使用不可能にするとか、いろいろやるコトあんだろ!)
「うわーい! ハイボール頼もっと」
「! ! ! !」
頭の血管が切れそうだった。
(のんきに酒なんか飲みやがって!!)
「のんきに酒なんか飲みやがって? お客さんに何だとを思ってんのー?」
(! ! ! !)
あの野郎……! 時田がキッチンじゃなくてホールの係だったら一目散に座席まで行ってジントニックを顔面にぶちまいてやったろうに……。
(まぁいい、聞こえてるか? というか、見ているか? お前らの親があの夏、時田に仕掛けた思考盗聴器は、人伝に伝わり、この県中に流通してしまっている。どう責任を取るつもりだ?)
「え? ……え?」
カツヒコはキョドっていた。
「おっ? 何か中学の同級生が来てるってよ」
「!!」
お客さんの中にも、思考盗聴器連結ブログ(携帯サイト)を目にしている人がいた。
「はっ……早く何とかしなさいよ」
ナルが今更事の重大さを理解したようだ。
お前の所為で――、
あの大会――、
あの時しかない仲間――、
あの思い出を――、
(どう責任を取ってくれる……!!)
「し……知らないわよ。カツヒコ君、何とかしなさよ」
「え? えっと……えっと……」
(埒が明かない。こうなったら仕方ない。俺が動こう
見ているな? 今日、集まった人だけでいい。五十音順に自分の実家へ電話を掛けろ。『思考盗聴器について、何か知っているか?』と質問しろ。いいな? まずは、カツヒコからだ)
「えっと……電話電話。……もしもし、お父さん? ……え?
『もうどうせ助からない、私には関係無い』?」
!!
(ンだと!?)
余りにも身勝手な発言を、時田は聞き逃さなかった。
「お父さん、何なん?」
(ていうか、いきなりヒットだな。情報戦なら負けないぜ?)
「総司君、何なん?」
(カツヒコ、お前んちのオッサンが黒、だな)
怯えるカツヒコに、時田は追い打ちを掛ける。
「あんたの家のお父さんが持ち主なの!? 早く何とかしなさいよ!」
ナルも震え上がっている様子だった。
(確か、あの夏、あのキャンプで言ってたな。
『これだけは使いたくなかった』
とか。じゃあ、使うなっての
あれから5年程経った。被害者だけがどんどん有名になって、加害者はその他大勢の陰から監視してれば良いなんて、正に恰好のいじめの道具だな、ナル。事は中学生や高校生のいじめの域を遥かに超えているぞ? どう責任をとる気だ?)
「そんなコト言われても知らないわよ」
ナルは何とか誤魔化そうとし、キッチンまで耳障りな声を響かせる。
(ナルは無視の方向で、とりあえずカツヒコ、今すぐ家に帰って設定を変更させて来い)
「えっとお父さん、設定を……」
(……)
「うわぁーん、総司君。設定変えられないって」
(なら壊せ。破壊して来い)
「え? えっと……えっと」
(この酔っ払いは役立たずか? 住所さえ知っていれば次の正月休みに乗り込んでやるのだが……)
「手ぇ止まってるぞ?」
「あっはい! ごめんなさい」
社員さんに注意されて、時田は持ち場のキッチンの仕事に戻った。
「総司君!」
(何だ? これから忙しいって時に)
カツヒコが遠くから話し掛けてくる。
「時田、実家に戻って思考盗聴器を止めてくる!」
(本当だな? 嘘だったら容赦しないぞ?)
「うん! 任せて!」
それから小一時間経過しただろうか? カツヒコやナル達は帰って行った。
(信用して良いだろうか? 不安しかない)
そしてその不安は的中する事となる。




