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スキルマスター  作者: とわ
第一章 ムーン・ブル編
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第51話 カブト割 前編


(ん~。三層に来てから、ウォータークラブのせいで極端に戦闘効率が落ちてるな。そろそろ、本格的にスキルの技を使っていかないと厳しいか…)


 ゲームの序盤では技を使用したくないタイプの今の俺は、頭を悩ませながら思考しつつサンゴの椅子に腰を下ろして網を乗せた焚火の上で分厚い肉を焼いている。悩みの原因は、偏にウォータークラブが硬過ぎるためだ。


 先程のリリーの件は、俺が再び天幕を張り直し、モモが落ち込むリリーを引き連れて2人でシャワーを浴び直した。そのあと俺もシャワーを浴びた。


「もう、お嫁に行けないよ~。しくしく」


「大丈夫だよ! そんないいものが付いてるんだし!」


 天幕の側でパジャマ姿のリリーとモモが何やら騒がしくしているが、俺は右から左だ。


(ボボンが、カブト割が使い易いじゃろう、って言ってたが、あれはたぶん俺達がウォータークラブとの戦闘で苦戦すると予想してたんだろうな。似た技にチャージドスラッシュがあるが、これは力を溜めて攻撃力を上げるやつだから少し違うし…。カブト割は相手の脆い部分を見極めて、そこを寸分違わずに攻撃する技だ。それは相手の弱点を見抜くようなものだが…。相手の弱点を見抜く!?)


「お兄ちゃん、お肉!」


「あ…」


 思考している俺が何かに気付き掛けていると、突然モモが俺の右肩を揺らしながら叫び声を上げた。曖昧な視線の焦点を肉に合わせた俺は、それが黒い煙を立ち上げていることに気付いて弱々しく声を漏らした。モモはいつの間にか俺の隣に近付いていたようだ。そんな俺を気にしたためか、リリーもこちらに近付いて来る。


「大丈夫ですか?」


「ああ、ごめん。少し考え事をしてたんだ」


 俺の左隣で立ち止まったリリーは、前のめりで肉と俺を確認しながら尋ねた。俺は返事を戻しながら肉を裏返した。裏側は、まっくろくろすけだ。


「しまったな。焦げを削れば食べれるか…?」


「お兄ちゃん、メロンの事を考えてたの?」


「あわわわわわ」


(リリーは、焦るとあわあわするのか…)


 呟いた俺がトングで焦げを削り落としていると、前のめりでこちらに顔を近付けたモモが何食わぬ表情で首を傾けて尋ねた。頬を真っ赤に染め上げたリリーは、背筋を伸ばしながら声を上げつつあわあわし始める。不思議な挙動のリリーを見つめている俺は、少し呆れ顔で思考した。


「違うよ。そんなことより、飯にするか!」


 ウォータークラブの悩みが軽減した俺は、少しだが頭の中がスッキリしたため爽やかに返事を戻した。動きを止めたリリーは、目を見開いたままで口をぽかんと開けいてる。


「そう言えば、さっきリリーが転んだ時に砂が付いてなかったが、あれはなんだったんだ?」


「えっ? あ、あれは………。ダンジョンでは、不思議な現象が時々起きるんです!」


(怒られてもな~。あんな格好で転んでたのはリリーのせいだし。不思議だったから見てただけだしな…)


 立ち上がった俺は尋ね、リリーは不機嫌に返事を戻しながらサンゴの椅子に腰を下ろした。俺は理不尽だと思考しながらも、モモと2人でリリーの分も含めて焼けた食材を皿に移し始めた。


 このあと、何故かリリーに元気がなかった。しかし、満天の星の下で美しいサンゴ達に囲まれながら食事をしていると、リリーは少しづつ元気を取り戻す。リリーは、モモとテントに向かう頃にはすっかり元気を取り戻していた。2人はそのままテントに入り、今日は一緒に眠るようだ。それを見て安心した俺もテントに入り、眠ることにした。



 ◇



 翌朝。


 目覚めた俺達は、朝食を取りながら今日の予定を立てる。そして、海を目指すことになる。


 海は、三層の出入り口に対して正面奥に進んだ場所にある。リリーの説明によると現在地からのルートは、このままサンゴの群生地を進むか、一度引き返してから小川沿いを進むかの二種類だ。前者は倒し辛いウォータークラブと数多く遭遇し、後者はモンスター達との遭遇は比較的少ないとのことだ。海に早く辿り着く事が目的な俺達は、後者を選択した。


 キャンプの片付けを済ませた俺達は来た道を引き返し、サンゴの群生地をあとにする。リリーの案内で、付近に流れる小川に向かう。無事に小川に辿り着いた俺達は、これを下流に向かい歩き始める。若干の草木の生い茂る道中では、ヒトデやタツノオトシゴやウニなど、新たな海に生息するモンスター達と遭遇する。


 ウニは、勿論棘がある。接近戦は危険と判断した俺達は、魔法で奴を難なく倒す。その他のモンスター達は、体が柔らかいため通常攻撃でサクサク倒す。


(ここのモンスター達は、二層の虫達よりも寧ろ倒し易い…。二層の、むしよりも、むし、ろ…)


「お兄ちゃん、寒いから!」


「ふあっ!?」


「えっ、えっ?」


 戦闘中だが、俺はダジャレの可能性を探るために必死で思考していた。突然、モモが叱咤し、意表を突かれた俺は思わずモモを見ながら変な声を上げていた。杖を構えていたリリーは、驚いたためか声を漏らしながら何やら戸惑い始める。


(ちょっ、ちょっと待てよ。俺は今、声に出してない。それなのに、モモはツッコミを入れてきた。これは、やっぱりニュータイプのスキルのせいか…? なんとなく、そんな力はあると思ってたが…。まだあのスキルは未知数でこれだけじゃないと思うが、たぶんそういう事なんだろう…。だが! そんなことよりも! 酷い………)


 思考しながらモモのスキルを推測していた俺は、最後に非常な悲しみを覚えて思わずその場で項垂ていた。


【ダブルスラッシュ!】


「あっ! お兄ちゃん!」


「なんだ? うおっ!」


 モモはスキルを発動させたあと声を上げた。声を漏らしながら顔を上げた俺は、ブーメランのように回転しながら飛来するヒトデを見て思わず声を上げていた。


(不味い! ヒトデの口が! 防御が間に合わない!)


【ファイアーボール】


『ボウ!』


「あつつ」


 危機感を抱いた俺は、それをスローモーションのように見ながら思考していた。その間に、リリーは魔法を使用した。リリーの放った火球が、俺の顔面をかじろうと迫り来るヒトデに直撃して音を上げた。燃え広がる炎に包み込まれた奴はそのまま木まで吹き飛ばされて霧となり消滅し、顔面を少し焦がした俺は手で顔を払いながら声を漏らした。


「大丈夫ですか、ルーティーさん!?」


(ダジャレどころじゃなかった。今は戦闘中だ)


「大丈夫だ。ありがとう、リリー」


「任せてください!」


(やっぱり、後衛が居ると頼もしいな!)


 リリーは慌てた様子で声を上げた。思考した俺は剣を握る手でサムズアップしながら礼を告げ、微笑んだリリーは得意気に返事を戻した。安堵した俺は、思考しながら戦闘に復帰した。




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