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スキルマスター  作者: とわ
第二章 アクアンシズ編

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34.流し焼きとブラウンスネーク

また、話が長くなったので分けました。


(料理か~)


 俺はマジックバッグを購入したので、改めて料理のことを考えることにした。


 キャンプをした時の料理で言えば、まずは干し肉、それと日持ちのする堅いパン。他には、小麦粉を水で溶かして焼いた流し焼き。


 流し焼きはパンの替わりにもなるし、砂糖を混ぜて焼いたり、焼いた後に砂糖を振りかけたりすれば甘いおやつにもなる。このおやつは懐かしい。小さい頃はよく食べたものだ。焼かずに、お吸い物に入れればすいとん様にもなる。


 それと芋類だ。サツマイモやジャガイモのようなものも堅いパンの代わりになる。


 あとは果物。これは日持ちもするし、そのままでも十分に美味しい。


 今回、冷凍保存のできるマジックバッグを購入したので、今後は冷凍の肉や魚、パンなどを持ち運べることになる。流し焼きに肉や野菜を炒めて包めば、なんちゃって肉まんもできる。


 こうして考えてみると、料理もまだまだ可能性が見えてくるものだ。


 そして、2泊3日のキャンプでの料理の種類が増えるのはありがたい。これは、ますます料理の腕の見せ所だ。


 欲を言えば卵が欲しいが何か良い方法はないか? 冷蔵用のマジックバッグがあれば良いのだが…。


 また金が掛かるが、今度アクセサリー屋に聞いてみよう。


 次の冒険の楽しみがまた一つ増えた。



 ◇



 翌朝。


 俺達はもう一度ゴールド・ダンジョンの2層へ向うことにした。ギルドのクエストも行いたかったのだが、まずは先にこちらの用事を済ませることにした。


「混まないうちに、広場に行くぞー」


 俺は隣の部屋に居る皆に声を掛けた。


「はーい。今日はブラウンスネークを倒しに行くんだよね?」


「ああ、そうだ」


「どんなモンスターなんだろ?」


「楽しみね」


 モモ達は返事を返しながら支度をしている。


 ブラウンスネークは、所謂、ヘビのモンスターだ。このモンスターを倒すとヘビの毒袋というアイテムが手に入るのだが、これはポイズンポーションの材料となる。


 ポイズンポーションは相手に毒の効果を与えるアイテムで、短期戦の戦闘ではあまり使われないのだが、錬金術のレベル上げを行うのに必要だった。今後、何かと忙しくなると見越して、今回はその材料を先に集めることにした。

 

「それじゃあ、出発するぞ」


「「「「おー!」」」


 ということで、俺達は急ぎながらもまったりと、ゴールド・ダンジョン前の広場に向かった。





 広場に辿り着くとまだ朝が早いというのに、それなりの人が集まっていた。そして、


「テレポート屋はこちらだよ~! 20階層まで行けるよ~!」


「こっちは30階層まで行けるぞ! テレポートはうちに任せてくれ!」


 広場からは客引きの声が上がっていた。看板を立てたテレポート屋が所々に点在している。


(朝早くから頑張るな。こういう人はゲームの中にも居たが、きっと、こういうことをするのが好きなのだろうな)


 テレポート屋は元高ランクの冒険者が多く、小遣い稼ぎとしてやっているそうだ。そして、朝の時間帯が過ぎるとテレポート屋の数は減り、日本で言うところの駅前のバスのようだが、今回はそれを利用してみることにした。


 俺達は目の前のテレポート屋に声を掛ける。


「おはよう」


「やあ、おはよう! お? 利用するかい?」


「2層のキャンプ地までだが、送ってもらえるか?」


「もちろんさ。金は大金貨1枚になるが、それで良いか?」


「ああ、頼む」


 俺達は大金貨を1枚を男に渡す。


「皆、準備は良いか?」


「良いよー!」


「なんかドキドキするね!」


「ど、どうなるのかしら?」


 3人はそわそわしており、ドキドキとワクワクを隠しきれないでいる。


「それじゃ、頼む」


「気を付けて行ってきな」


【テレポート】


 一瞬、目の前が真っ白に光る。そして次の瞬間、景色はキャンプ地に変わっていた。


「もう着いた!」


「早ーい!」


 モモとリリーは辺り見渡しながらはしゃいでいる。


「便利なものね~」


「ああ、金額もそれ程でもないし、これなら次からも使い易いな」


 ダンジョンを毎回進むことに比べれば、この値段は格安に思えた。


「でも、もうお金ないんでしょ?」


 アイラが痛いところを突いてくる。


「まあな。それは今回で稼げば良いだろ」


 俺達は昨日のマジックバッグと今回のテレポート代で、遂にすっからかんになってしまった。だが、今回はそれなりに狩りを行うので、金のことはあまり心配してはいなかった。


「それじゃ、行くぞ!」


「「「おー!」」」


 俺達はブラウンスネークを探すために、森の方へと歩み始めた。



 ◇◇



 森には1層と同じような、1本の街道があった。俺達はその街道をしばらく進み、途中で森の中へと進路を変える。


「ここからは、サーチの魔法を交代で使っていくからな」


「うん」


「わかったよ」


「わかったわ」


「まずは俺から使っていくな」


 3人は軽く頷く。


(今回の対象は、モンスターと薬草類だな。よし!)


【サーチ】


 俺の頭の中にミニマップのようなものが表示された。


 サーチという魔法は、以前、薬草採集の時にも使用していたが、今回のようにモンスターを探す場合にも使える魔法だった。対象を正確にイメージをすることができればより精度は増すのだが、今回は初めて出会うモンスターなので、モンスターと意識して魔法を使うことにした。


 それと、ついでに薬草類も採集したかったので、まとめてサーチを行った。ゴールド・ダンジョンの2層は森林地帯なので、薬草類が豊富に取れると聞いていたからだ。


「辺りにモンスターは居ないが、薬草の生えている場所は見つけたぞ。あっちだ」


 俺はその方角に指を差す。


「あっちに行ってみる?」


 モモが俺の方を向いた。


「そうしよう」


 俺達は薬草の反応があった方へと歩き始めた。


 しばらく歩いていると、アイラが渋い顔で口を開く。


「ねぇ。これって…、もしかして、もの凄く大変なんじゃない?」


「大変だな。でも仕方ないだろ? ブラウンスネークはヘビだからな。岩の間に居たり、木の上にも居たりするから、こうやって進まないといきなり噛みつかれたりするぞ」


「それはそうだけど…」


 ブラウンスネークは体の色が茶系で隠れるのも上手く、目視では見落とす可能性があると聞いていた。なので、これは仕方のないことだった。


「慣れれば、こんなことをしなくても見つけられるようになるさ」


「そうよね。初めの内、だけよね」


 アイラは両手をぎゅっと握りしめて、改めて気合を入れ直したようだった。


(本当、始めの内だけにしてもらいたいな。このやり方は、非効率過ぎる)


 俺はそう願いながら、歩みを進めることにした。





 目的地に辿り着くと、目の前には毒消し草の群生地と思われるような場所が広がっていた。そして次の瞬間、


「居たよ」


 モモが俺達を制止させた。


 群生地の中を目を凝らして見ると、何やらうねうねと動くものがある。


「あれがブラウンスネークか」


 俺の言葉にリリーとアイラが息を呑んだ。


 ブラウンスネークは俺達の気配を感じ取ったのか、頭を持ち上げてこちらをじっと見ている。そして舌をチョロチョロと出し入れしているが、その舌の先は2つに裂けており、太さと長さは普通のヘビと比べると比較にならない程のものだった。

 

(ちょっと気持ち悪いな。それに結構デカい。もし、巻き付かれでもしたら直ぐには引き剥がせそうにないな)


 ヘビの顔は可愛いと思う方なので嫌いではないのだが、この大きさともなると可愛いからは掛け離れたものとなっていた。そして胴体は細い木の幹程もあるので、あれは少しワニをイメージさせた。


「噛みつかれると毒をもらうからな。気を付けてくれよ」


 小声で伝えると、3人は小さく頷いた。


 ブラウンスネークは毒を持つモンスターなので、噛まれると毒の状態になってしまう。だが、今回は以前に作ったキュアポーションを所持しているので、多少は噛まれても平気だ。勿論、噛まれたくはないが。


「あの様子だと、こっちに気付いてるな」


「どうするの?」


 モモが前を向いたまま俺に尋ねた。


「俺が引き付けるから、その後、攻撃してくれ」


「わかった」


「「う、うん」」


 モモはいつも通りだったが、リリーとアイラは少し緊張した声だった。


「行くぞ!」


 俺は小声で、気合を入れた声を出した。





 今回は相手の出方を見たかったので、俺は盾を構えた状態で反時計回りにブラウンスネークへと近づくことにした。これならば、左の盾を前に構えながら姿勢は半身の状態を維持できるからだ。そして、モモは俺と反対の動きをしている。


 モモがブラウンスネークの側面に位置したので、俺はここでスキルを使う。


【タウント】


 タウントとは、所謂、挑発のスキルだが、その効果は範囲内の対象の注意をこちらに惹きつけるものだ。


 タウントに釣られてブラウンスネークの頭がゆっくりとこちらを向く。そして次の瞬間、その頭が凄まじいスピードで迫ってきた。それは今までのどのモンスターよりも素早い動きだった。だが、


『ガン!』


 俺はその動きを容易に盾で捉えることができた。何故なら、その動きは直線的だったからだ。


 ブラウンスネークは痛がるようにして頭を元の位置に戻す。そしてこの隙に、モモがブラウンスネークの側面から体を切りつけた。


『スパ』


 攻撃はしっかりとブラウンスネークの体を捉えた。が、モモの表情はいつもとは違い、何かに戸惑っている様子だった。


(なんだ?)


 俺は疑問に思いつつも、ブラウンスネークの攻撃をまた盾で防ぎながら反撃をした。すると、剣がブラウンスネークに当たった瞬間に、グニャリと明後日の方向を向いてしまう。


(チッ!? ヘビだから柔らかいのか!)


 その手応えは、切れ味の悪い包丁で鶏の皮を切る。そんな感触だった。


 弾力のあるものを切るというのはなかなかに難しい。上手く刃を立ててやらないと今のように剣が明後日の方向を向いてしまい、それを切ることはできない。


 その後も俺とモモの攻撃はダメージは与えているものの、なかなか致命傷に繋がらなかったが、


【ファイアボール】


『ボウ!』


「シャーーー!」


 リリーのファイアボールが見事に命中すると、それは、効果は抜群だ! と言わんばかりにブラウンスネークはもがき苦しんだ。そして、今までのダメージの蓄積もあったため、そのまま無事に倒し切ることができた。


「やったー!」


 リリーは止めを刺せたことで喜んでいたが、俺とモモは歯がゆい表情をすることとなった。





 俺達はブラウンスネークのドロップ品を拾いながら、周囲に生えている毒消し草を採集することにした。


(ブラウンスネークは、毒を持っているから毒消し草のところに来たのか?)


 安直な考えを巡らせながら毒消し草を集めていると、少し離れた場所に2匹目のブラウンスネークを見つけた。


「居たぞ」


 俺の声に3人は振り向き、姿勢を低くしたままでこちらに集まってきた。


「毒消し草に集まってきたのかしら?」


 アイラも俺と同じ考えだったので、俺は少し戸惑った。


「そ、それは分からないが、今度は魔法を使っていくぞ」


「どんな魔法を使うの?」


 リリーは先程ブラウンスネークに止めを刺していたので、今回はリラックスした様子だった。


「クネクネされるのが厄介だからな。初めにあいつの動きを鈍らせたいからスローでいこう。リリーはブラインを頼む」


「わかったよ!」


「了解」


「わかったわ」


 この間までは皆で時魔法のレベルを上げようという話だったのだが、リリーは時魔法が苦手な魔法だったようで、俺達よりもレベルの上がりが遅かった。なので、それならばということで、今は闇魔法のレベルを上げてもらっている。


 俺達はブラウンスネークに魔法が届く位置まで移動した。


「準備は良いか?」


「「「うん」」」


「いくぞ!」


【【【スロウ】】】


【ブライン】


 魔法が直撃するとブラウンスネークは動きが少し鈍くなり、そして視界も奪われた様子だった。


 俺とモモはそれを見て一気に駆け寄る。だが、ブラウンスネークは音に反応したのか、その場から逃げようとするも、スローの効果で動きが鈍くなっていたため、俺とモモはあっさりとブラウンスネークに追い着いた。


 そして、俺は剣の刃をしっかりと意識しながら首を狙って攻撃を仕掛ける。


「食らえ!」


『ズバン!』


 ブラウンスネークの頭は見事に刎ね上がった。


(硬いのもきついが、こういうタイプもまた厄介だな…)


 倒れたブラウンスネークは、ドロップ品を残して霧となって消滅した。

初心者です。

☆を付けていただけると嬉しいです。

ブックマーク登録もして頂きたいです。

アルファポリスで読んでもらえると非常に助かります。

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