表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死者選定  作者: 修羅観音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/84

第八十一章:死神の宣告と、怨嗟のカルテ

視界を焼き尽くすような純白の壁と、逃げ場のない静寂。

目を覚ました4人の男たちは、そこがかつて彼岸の「最期」が無慈悲にライブ配信された、あの忌まわしい処刑場であることを悟り、全身に冷たい汗を噴き出させた。


ガタ、ガタガタッ!

豪華な椅子に固定された手足を必死に振りほどこうと、彼らは無様なあがきを見せるが、鋼鉄の拘束具は冷酷にその動きを封じ込めている。

嫌な予感が部屋の空気を支配したその瞬間、正面の巨大モニターが「ブゥン」と低い唸りを上げて起動し、あの閻魔の仮面が映し出された。


「ごきげんよう、存在価値マイナスな害悪四天王。……いえ、四天王だなんてあなた達には上等すぎますね。害悪四馬鹿よんばかとでも言いましょうか。」

仮面の奥から響くその声は、氷の刃のように男たちの心臓を突き刺した。


「ふ、ふざけんな! どういうつもりだよ! 俺たちは助かったんだよな!? 選定されなかったはずだろ! こっから出せよ、おいッ!」

翼が顔を真っ赤にして叫び、椅子を激しく揺らす。


「そうだ! 選ばれたのは彼岸さんだ! 俺たちじゃない! それに何なんだよこの椅子は!? 説明しろよ!」

智弘は真っ青な顔で涙を浮かべ、裏返った声で絶叫した。


慎介はガチガチと歯を鳴らし、震え上がる声で辺りを見渡す。

「なあ……ここは、彼岸さんが最期を遂げた場所だろう? 一体、どういうことなんだ……まさか、次は僕たちの……。」


「なあ、金か!? 金が欲しいんか! 儂は社長や、金ならいくらでもある! 欲しい分だけ小切手を切ってやるさかい、頼むから出してくれ!」

義彦は必死に醜い悪あがきを始めるが、モニターの中の閻魔は、ただただ呆れ果てたような、底冷えのする溜息を吐き出した。


「幸子さんには、まだ当事者としての意識や罪の意識がありました。一生をかけて自分の罪と向き合う覚悟を見せたからこそ、私は彼女を辛うじて解放しましたが……あなたたち4人は、本当に救いようがありませんね。確かに、全国から推薦されるだけのことはあります。」


「ど、どういうことや……推薦って、何のことや!?」

義彦が狼狽しながら尋ねると、閻魔は淡々と、逃れようのない事実を突きつけた。


「おたくら4人はね、他人様から恨まれている人物リストの中から選ばれたんですよ。覚えているでしょう? この企画が公になった際、全国民に一斉に送られてきた、あの『第1回死者選定』のアンケートメール、この場に送り込むにふさわしい人物の名前を書く欄が記された、あのメッセージを。」


4人の脳裏に、かつてスマートフォンに届いた不気味な通知がフラッシュバックする。

あの時、彼らは自分たちが選ばれる側になるとは露ほども思わず、誰かを見下しながら冗談のつもりで名前を書き込んだり、鼻で笑って無視したりしていたのだ。


「全国民に送られた設問の回答として、名前を書かれた人物の中からランダムに抽出されたのが……おたくら4人と、幸子さんだったというわけです。」


閻魔はそこで一度言葉を切ってから、淡々と続ける。

「因みに、鶫さんと彼岸さんは、別の特別な理由があって選ばれたから、いわば別枠ですが、おたくらがそれを知る必要はないので教えません。」


そして、閻魔は冷酷に言い放つ。

「要するに、おたくらは少なくとも複数人から、『死んだほうがいい』『是非とも死んでくれ』と思われるほどに深い恨みを買っているということです。この数日間の態度や在り方を観れば一目瞭然でしょう。恨みを買って当然の、社会の害悪共です。」


閻魔の言葉に、翼が目を見開いて震え声を出した。

「そ、そんな……いったい誰が……あ、まさか、鶫か!? あいつが俺の名前を書いたのか!?」


「今し方、別枠だと言ったでしょうに。これだから頭の悪いガキは困ったもんです。鶫さんは届いたメールの記入欄には誰の名前も書かず、返信すらしていません。中間選定と最終選定での彼女のフリップボードをしっかり見ていたなら、容易に想像も理解もできたはずですが……。それすらわからないほど知能の低いクソガキ君は、正直、私がこの手で直接撲殺したいレベルですよ。」


閻魔の声から温度が完全に消え、獲物を狙う猛獣のような殺気がモニター越しに伝わってくる。

「ちなみに私、あらゆる体術をマスターしておりますから。あなたの骨を一本ずつ折ったりと、丁寧に、時間をかけていたぶる事が出来ますよ。やりましょうか?」


「ふ、ふざけんなよ! やめてくれ! そんなこと、冗談じゃない!」

翼は椅子に体を押し付け、必死に顔を引きつらせて懇願した。


その場にいる4人の男たちは、閻魔が放つ言葉が単なる脅しではなく、本気で実行に移しかねないという確信めいた恐怖に支配された。

彼らの顔からは血の気が引き、純白の部屋には、ガタガタと震える椅子の音と、絶望に満ちた男たちの浅い呼吸音だけが空虚に響き渡っていた。


---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ