第四十三章:断罪の円卓と、凍てつく覚悟
鶫は自室の冷え切った空気の中で、昨夜書き上げたフリップボードを慎重に黒い袋へと滑り込ませた。
その袋は、一人の人間の命の重みが凝縮されているかのように、ずしりと腕に響く。
彼女は意を決して部屋を飛び出し、迷いのない足取りで円卓の部屋へと向かった。
扉を開けると、そこには既に彼岸が座っており、静寂の中で石像のように動かず、穏やかな笑みを湛えて待っていた。
鶫は吸い寄せられるように、彼のすぐ左隣の定位置へと腰を下ろす。
それから間もなくして、廊下から重苦しい複数の足音が近づき、慎介、智弘、義弘、幸子、そして翼の5人が一斉になだれ込んできた。
彼らは一様に視線を泳がせ、あるいは不自然に固い表情を浮かべており、鶫はその様子から、この部屋に入る直前に廊下で「最終的な口裏合わせ」を終えてきたのだと直感した。
結託の鎖で繋がれた5人が無言のまま席に着くと、正面の大型モニターが「ブツン」というノイズと共に点灯し、閻魔の仮面が冷酷に浮かび上がった。
「揃いましたね。では、早速始めるとしましょうか。これが、皆様にとって最後の選定、『最終選定』となります」
閻魔が事務的な宣告を始めようとしたその時、鶫が鋭く声を上げた。
「あの、お願いがあります。」
「何でしょう? もしトイレに行きたいというのであれば、今のうちに済ませてらっしゃい。失禁されては掃除が大変ですからね」
閻魔は相変わらずの毒舌を吐くが、鶫はひるむことなく、真っ直ぐにモニターを見据えて進言した。
「いえ、そうではなく……。私の選定は、最後に回して頂けませんか? 中間選定の時とは、逆の順番にして頂きたいのです。」
鶫の真意を測るかのように、モニター越しの沈黙が数秒間続いた。
「……まあ、いいでしょう。私、個人的に鶫さんの真っ直ぐなところは気に入っていますからね。特別な配慮です。では、鶫さんの左隣、慎介さんから時計回りで順番にフリップボードを出していって下さい。」
閻魔の指示が下ると、室内には胃が捩れるような緊張が走り、隣り合う者たちの呼吸の音さえもが刺さるように響く。
「じゃあ、僕からだな。異論はないよ。さっさと終わらせて、こんな悪夢からはおさらばだ」
慎介は事務的にそう言い放つと、テーブルの上に置かれた黒い袋に細長い指をかけ、中にある死の宣告を引き抜こうとした。
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