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女王の呪い唄  作者: 西季幽司
第二部「志尊の告解」
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転落死の真相②

 久しぶりにマンションに戻った。

 屋敷に長居をするとなると、マンションに置いて来たパソコンが欲しくなったからだ。大抵のことは携帯で事足りるとは言え、やはりパソコンが欲しかった。

 経兄の事件後に屋敷を出て、市内にマンションを借りて、そこに住んだ。

 暫く屋敷にいたので、マンションに戻るのは久しぶりだ。

 入り口で辺りを確かめた。

 大丈夫だ。特に怪しい人影はない。俺は逃げ込むようにマンションに滑り込んだ。

 だが、部屋に戻って五秒もしない内に、ピンポンとチャイムが鳴った。

(誰だ?)

 居留守を使おうかと思ったが、しつこい。何度もチャイムが鳴る。それでも、居留守を使っているとチャイムの音が止んだ。

 ほっと一息ついたのも束の間、今度はドアをドンドンと叩かれた。

「お~い。良いのか、廊下で騒いでやるぞ。金、返せってな~」

 ドアの向こうで怒鳴り声がする。やつらだ。マンションの住人が出入りする隙に便乗して、入り込んで来たのだ。いや、マンションの住人を脅してドアを開けさせたのかもしれない。

 仕方がない。俺はドアを開けた。

 男が二人、なだれ込んで来た。

「ふざけるなよ! お前」

 プロレスラーのような体をした男に胸倉掴まれて、壁に押し付けられた。そして、壁に押し付けられたまま、ものすごい力でぎりぎりと持ち上げられた。苦しい。息が出来ない。

「く、苦しい・・・」

「借りたお金はちゃんと返さなきゃあな。小学校でそう教えられただろう」

 そんなこと、教えられていない。だが、そんなこと言えない。

「ま、待ってくれ・・・返す・・・返すから放してくれ」

 男が手を放す。俺は壁に寄りかかったまま、ずるずると崩れ落ちた。

「金を出せ」

「い、今はない」

「何だと!」

「待ってくれ。兄貴が亡くなったの、知っているだろう」

「んなこと知るか!」

「兄貴は会社の社長をやっていた。遺産をたんまり持っていた。独身で子供はない。俺以外、遺産を相続する人間がいないんだ」

「ほう~それは耳よりな話だな」

「だろう。金を返す当てはある。だけど、ちょっとだけ、もうちょっとだけ時間がかかる」

「どれくらい待てば良い?」

「一カ月、いや、二カ月もあれば」

「よう~し、一週間、待ってやる」

「い、一週間!」

「いいか。一週間で方をつけろ。それでダメなら、分かっているだろうな。指の一本、二本、へし折られる覚悟をしておけよ」そう言って、男がにやりと笑った。

 背筋が凍る。

「そ、そんな・・・」

「一週間後にまた来る。今度は逃げ隠れするなよ!」捨て台詞を残して、男たちが去って行った。

 俺は廊下に蹲ったまま、暫く動けなかった。

 闇カジノに手を出してしまった。

 仮想通貨で大損を出し、金に困った俺は闇カジノにはまってしまったのだ。

「面白いところがある」

 バーで知り合ったガクという男に誘われた。今、思えばこのガクという男が怪しかった。妙に気が合った。俺のようなカモを探していたのかもしれない。

 ガクの言う“面白いところ”に案内してもらった。

 雑居ビルに一室に闇カジノはあった。

 インターホンを使いドアを開けてもらう。ガクは顔パスで、「紹介が無ければ入れないンすよ」と言った。ありふれたドアの向こうに華やかな別世界が広がっていた。

「簡単スよ。仮想通貨で損をした分、取り返せば良い」とガクが言う。

 カジノの遊び方なんて知らなかったが、ガクが手取り足取り教えてくれた。

 最初はもうかった。一晩で百万近く勝った。

「これは止められないね~」とガクと夜明けまで祝杯を挙げた。

 そこからはお決まりのパターンだ。

 二度目はチョイ負け。三度目から負けを重ね、気がついた時には借金まで抱えていた。イカサマを疑い始めた時には、どう見ても裏社会の人間らしき男たちが借金の取り立てにやって来るようになっていた。

 ガクはもう姿を見せなかった。

 そう。俺は金に困っていた。切羽詰まっていた。功兄を殺したのは、単純に金が欲しかったからでもある。

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