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69 悪役令嬢とお泊り会

「兄様には我慢なりません!私、家出しました!!」

バンッと激しい音とともにズンズンと馬車から降りてきたのは、むくれた顔をしたエリーゼだった。

私はちょうど温室へ向かう途中だったため、出迎えるかたちになった。

「エリーゼ、久しぶりね」

「パトリシア、聞いてください。兄様ったら酷いんですよ」

エリーゼはツインテールを揺らしながら、ぷりぷりと怒っている。エリーゼの後ろには困り顔の侍女がスーツケースを持っている。

「家出ってどういうこと?」

「大丈夫です、両親には伝えてあります。それと…」

後ろにいた侍女から手紙を渡された。私宛ではなく、お父様宛だ。

「そちらをフローレス公爵様にお渡ししていただければ」

エリーゼは自信満々と言う感じだ。差出人を見る限り、エリーゼではなくてブライス公爵が書かれたように思える。

「とりあえず、中に入りましょう」


応接室に向かっていると、アリシアがやって来た。

「エリーゼ、久しぶりですね」

「アリシア…私、今日ここに泊めてもらうことにしたから」

「本当ですか?それなら私のお部屋に泊まってください」

アリシアは楽しそうに笑っている。エリーゼも嬉しそうだ、お泊り会みたいで楽しそう。

「もちろん、お姉様も」

「そうです、パトリシア様もご一緒に」

二人の圧にやられて、私も参加することになった。


食事と入浴を済ませ、アリシアの部屋に集まる。

お父様宛の手紙には、エリーゼが迷惑をかれることと、泊めてあげてほしいという事がやんわりと書いてあったようだ。

「そういえば、エリーゼはどうしてエリオットに怒っていたの?」

家出するほどということは喧嘩でもしたのかな?

「先日、兄様が伺ったと聞いてるんですけど…」

ツインテールを解いて、ナイトキャップをかぶっているエリーゼが唇を尖らせながら話し始める。

「いつもなら、フローレス邸にお邪魔するときは私にも声をかけてくれるんです。それなのに先日は一人で勝手に行かれたんです」

あのときエリーゼがいなかったのは、忙しい合間を縫って時間を作ってくれていたのかな

「私は迷惑をかけるからって兄様と一緒じゃないと遊びに行けないのに…」

エリーゼはまた唇を尖らせる。そっか、エリーゼもアリシアと会えなくて寂しかったよね。

「今日は大丈夫だったんですか?」

アリシアが尋ねると

「まあ…父様と母様に説得をして許可をもらったの」

少しモゴモゴとしながらエリーゼが答える。説得するのが簡単ではなかったのかな?

「そんな話はどうでもよくて、あの…パトリシア様、兄様と何かありました?」

エリーゼが困った顔をして私を見ている。もしかして、私が変な話をしたせいでエリオットに何かが起きてしまったの?

「何かって?」

「兄様ったら帰ってきてから気持ち悪いんですよ。ボーッとしてると思ったら、急に顔を真っ赤にして何かをブツブツと言って…それに隈も酷くなって」

ただでさえ忙しいのに、私が余計なことを話したせいで眠れないなんて申し訳ないな。

「エリオット様はお姉様のお膝を枕にしたんですよ、その心地良さが忘れられなくてまともに眠れなくなってしまったんです」

アリシアはキリッとした顔で的外れなことを言っている。

「お膝を…枕に?」

「はい、油断も隙もないです」

「へぇ、兄様もなかなか隅に置けないのね。つまりパトリシア様から膝枕をされたことを思い出して顔を真っ赤にしてたってことね」

それが原因ではないと思うんだけど…まあいっか


「そろそろ寝ましょうか」

アリシアはともかく、エリーゼは眠そうにしている。

「私はお姉様の隣がいいです」

アリシアが元気よく手を挙げている。

「じゃあ、アリシアを真ん中にして寝ましょう」

ベッドに入ると、エリーゼはすぐに眠りについた。

「…兄様」

「お姉様、エリーゼはエリオット様の事が大好きなんですね」

エリーゼの寝言を聞いて、アリシアは楽しそうにしている。

「私もお姉様の事が大好きですよ」

この子は本当に…可愛いなぁ。

「ありがとう、私もアリシアの事が大好きよ」

「お姉様、私幸せです」

アリシアは大袈裟だな。でも、この子が幸せなことは良いことだし。それにしても、誰かと一緒に眠るのは久しぶりだな。暖かくて心地が…


目を覚ますと、朝を迎えていた。夢も見ることなく熟睡ができた。私が伸びをしていると、エリーゼがあくびをしながら身体を起こす。

「おはよう」

「…おはようございます」

まだ少し眠たいのか、目が半分しか開いていない。アリシアはまだ眠っているようで、突然マットレスをぽすぽすと叩き出した。可愛いアザラシみたい。

「…ねえさま?…お姉様!?」

「おはようアリシア」

「お姉様がいなくなられたのかと思って、びっくりしました」

マットレスを叩いていたのは私が隣にいるかを確認していたのか。

いつもより、少し早く起きてしまったため、まだアンナ達は来ない。私も普段着に着替えるだけなら自分でできるし、着替えだけでも済ませておくか

「お、お姉様…突然お洋服を脱いでどうされたんですか?」

アリシアは、両手で目を隠しながら顔を真っ赤にしている。同性だから気にすることないのに、それにアリシアもデイジーに着替えさせてもらってるはずなのに。

「着替えだけ済ませておこうと思って」

私が着替えを進めていると、アリシアも着替え始めた。エリーゼは身体を起こしたまま眠っている。

「お姉様、リボンが上手く結べません」

アリシアが困った顔をして私を見上げている。まだまだ甘えん坊さんだな。私がアリシアのリボンを結んでいると、エリーゼが起きてきた。

エリーゼは半分しか開いていない目で、両手を上に上げてこちらを見ている。もしかして…着替えさせて欲しいってこと?


「…寝ぼけてパトリシア様に着替えを手伝わせてしまって、ごめんなさい」

「良いのよ、気にしないで」

私はエリーゼの頭を撫でる。柔らかい赤ちゃんみたいなな髪だな、アリシアの髪もサラサラで綺麗だけど。エリーゼの髪は柔らかくて触り心地が良い。

「エリーゼ、良かった髪を結ってもいい?」

「パトリシア様がですか?」

「簡単なのしかできないけど」

手先が器用なわけではないけど、三つ編みくらいならできる。

「お願いします」

エリーゼの了承も得たことだし、どんな髪型にしようかな?エリーゼはいつもツインテールだし…

「出来た」

私は羊ヘアというやつを試してみた。意外と上手くいったのでは?

「エリーゼ、可愛いですね」

「パトリシア様、ありがとうございます」

エリーゼは手鏡を見て微笑んでいる。気に入ってもらえたようで良かった。

アリシアの髪もやってあげると、ものすごく喜んでくれた。

「お姉様は私がやります」

アリシアと、エリーゼに髪を結ってもらうと、普段のエリーゼと同じ高さのツインテールにされてしまった。

「可愛いです、今日から毎日その髪型にしてください」

アリシアはベタ褒めしてくれているが、流石に恥ずかしい。

アリシアの部屋で朝食を食べたてゆっくりしていると、エリーゼの迎えが来た。

「楽しかったです。またお泊まりしたいです」

エリーゼは最初は家出と言っていたが、いつの間にかお泊まりに変わっていた。

「是非、今度は一日じゃなくて三日ぐらい泊まってください」

アリシアは余程楽しかったのか、興奮気味に言っている。

「そうね、今度はエレノアも誘いましょう」


いつか、ステラも紹介して五人でお泊まり会というのも楽しそうだな。

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