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68 悪役令嬢は打ち明ける。

私が寂しいと言った事を覚えてくれていたのか、エリオットが来てくれた。

「来てくれて嬉しいわ」

私はエリオットに駆け寄る。エリオットの目には少し隈ができている。

「眠れてないの?」

「…少しね、忙しくて」

エリオットは眉を下げて困ったように笑う。忙しいのに来てくれたのか、申し訳ないな。

疲れているエリオットと勉強するわけにはいかないし、天気も良いから日向ぼっこでもしようかな。


アリシアとセシルのおかげか、毛虫は綺麗さっぱりいなくなったようだ。

私は木にもたれかかって、膝をポンと叩く。

「ん?」

エリオットが不思議そうに首を傾げる。

「私寝かしつけるのは得意なの、アリシアとセシルもこうやって寝かしつけてきたのよ」

「いや、大丈夫だから」

エリオットは首をブンブンと振って断る。でも、疲れているのに会いに来てくれたんだ、少しぐらい休んで欲しいな。

「…分かったから、そんな顔しないで」

そんな顔って…私はどんな顔をしてたんだろう。


「眠たくなってきた?」

私はエリオットの頭をゆっくり撫でる。アリシアとセシルはこうしていると数分で眠りにつく。

「眠気よりも…なんかその」

木陰にいても少し暑いのか、エリオットの顔が少し赤い。

「そういえば、エレノアはもう来てないの?」

「エレノアも来年社交界デビューでしょ、それで忙しいみたい」

あのときはマナーの勉強にダンスに大変だったな。

「その二年後にエリーゼが社交界デビューか…」

エリオットは頭を抱えている。ノスタルジーになっているわけではなく心配なのだろう。

あと三年か…大切な人が増えすぎて、当たり前になってきていたこの幸せも、終わりが来る。

「ねぇ、エリオット」

「ん?」

「もし、もしもよ。この世界が誰かの手によって創り上げられた物語だとしたら信じる?」

この話をするなら、エリオットにと決めていた。

「どういうこと?」

エリオットが起き上がろうとしたので、頭を撫でてそのまま寝てもらう。

「例えば、王子様とお姫様が結婚して幸せに暮らして終わる物語があるでしょ」

アリシアが小さいときに、よく一緒に読んでいた童話の話だ。

「そのお姫様には意地悪な義姉がいて、王子様とお姫様の仲を邪魔するの」

「その王子様がカイル様で、アリシアがお姫様だとしたら、意地悪な義姉は私…」

「…うん?」

「でもね、私も幸せになりたいから物語を書き換えるの。お姫様に沢山の愛情を与えて可愛がるの。そして、王子様とお姫様が幸せになるのを見届けて終わりたいの」

「……」

エリオットは何も言わずに私の話を聞いてくれている。

「人生ってさ、ある程度の結末は決まっているんだと思うの。沢山の選択肢があっても、どの選択肢を選んだとしても結局その先は一緒だと思う」

私が変えようとしても、起きる事は起きる。早く対策ができたとはいえ、ダリルの村に奇病が流行った。

ただ、ダリルの村の件は偶然上手くいっただけに過ぎない。何故なら、小説でシャルルと王妃様が狙われたように、こっちの世界では私とカイルが狙われた。だから対象が代わるだけで、物語の結末はきっと同じように進行していくんだろうな。


「夢の話なんだけどね、子供の頃からずっと見ている夢」

さっきは童話で例えたけど…

「うん」

エリオットは目を瞑りながらも返事をする。

「夢の中の私はアリシアをいじめてるの、屋敷の中でも孤立してて…」

「ふふっ、パトリシアがアリシアを?」

今の仲が良い私達からは想像もできないだろうな。

「…うん、そんな時に私はカイル様の婚約者になったの。でもね、カイル様は孤独で無機質な私に愛想を尽かして、天真爛漫で可愛いアリシアを好きになるの」

こっちのアリシアも天真爛漫、純真無垢で、あどけなさが残る本当に可愛い子だ。

「……」

「私は嫉妬で、アリシアに刺客を送るの…でもアリシアはカイル様に守られて、犯人が私だってこともバレちゃうの」

「それで、どうなるの?」

「…内緒」

エリオットは不満そうに私を見上げている。

でも、この先を話してしまったら…

「…殺されるなら斬首が良いな」

最終的にはそうなるが、指を折られ、目をえぐられるような拷問を受けるのは嫌だな。まあ、カイルがいかにパトリシアを痛めつけたいかが分かるシーンだよね。

「ごめん、なんて言ったの聞き取れなかった」

心の中で呟いたことが、まさか声に出ていたとは

「なんでもない、難しい話をしたら眠くなるかなって思っただけ」


エリオットは物語には出てこない、だからこそこんな話をしてしまった。

まあ、こんな突飛な話信じたりしないだろうけど。


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