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67 悪役令嬢は気づかない。

夜会から数日後、私は本当に一人でお城に行くことになった。

お城に入ると、応接間に通された。用意されたお茶を飲んで待っていると。

「パトリシアだ」

カーテンからシャルルが出てきた。

「シャルル様、何をしてたんですか?」

かくれんぼかな?

「えへへ、ないしょ」

いたずらっ子の笑顔で私の膝に乗ってきた。

トントンと扉が叩かれ、シャルルを横に座らせて私が立ち上がると

「パトリシア、かくして」

とシャルルが私のドレスの裾を掴み小声で言った。

「良いですよ」

私がそう言うと、ドレスの中に入ってきた。まあ、相手は子供だし…

私が扉の向こうに「はーい」と返事すると、扉が開く。

「パトリシア、待たせてしまってごめんね」

「大丈夫ですよ」

「庭でお茶をしようか」

カイルが私に手を差し出す。私は手を取ろうとした。でも、よくよく考えたら今は動けなくない。

私が躊躇っていると、カイルは一瞬、不思議そうな顔をした後

「そういえば、シャルルの好きなお菓子を乳母が作ってるみたいだな」

と言った。シャルルがカイルの言葉に反応し、そわそわし始めた。カイルはシャルルが隠れていることに気づいたのか。

それにしても、シャルルは誰から隠れてるんだろう。

「座学をちゃんと受けた良い子にしか食べさせないって言っていたなぁ」

少々わざとらしい口調だが、四、五歳の子どもには気づかれていないようだ。

「ぼくいってくる」

シャルルはもぞもぞとドレスから出てくると走っていった。

なるほど、座学をサボるために隠れていたのか

「…シャルルはパトリシアのドレスの中に隠れていたの」

カイルが唖然としている。気づいていたんじゃなかったの?

「気づいていらしたのでは?」

「シャルルがいることは気づいていたけど、ドレスに隠れているとは思わなかったよ」

「私も隠してとは言われたのですが、ドレスの中に入ってくるとは思いませんでした」

後ろに隠れるだけかと思ったんだけどね

「へぇ、シャルルには後でお説教が必要だね」

怖っ…口元は笑っているのに目が笑っていない。

「私は気にしていませんから…」

「もちろん君にもだよ、パトリシア」

巻き込まれただけなのに、なんで私まで…

「君は私が同じことを言っても、ドレスの中に隠してくれるのかな?」

何が言いたいのかな?そもそも、カイルのサイズだと隠れられないだろうに…うーん

「…私がもう少し背が高くて、カイル様の背が低ければいけると思います」

「そういう話じゃなくて、異性が服の下に入ってきたら怒るところだよ」

カイルはムッとした顔をして、私の両頬をつまんでいる。異性も何も相手は子供なんだし、悪気はないんだから怒りようがない…怒る、そういえば

「カイル様、もしかして私がマントに隠れたこと怒ってますか?」

頬をつままれている状態では話せないため、カイルの両手を握る。

「そんな事で怒らないよ」

カイルは穏やかな笑みを浮かべ、もう一度私の頬に触れてきた。

「それに、頼ってもらえて嬉しかったから」

カイルの顔が近づいてきた。何…これってキスされる!?私は思わず、目をぎゅっと瞑る。

「ふっ、そんなに身構えないで」

そんなことを言われても、頬を両手で包まれているため逃げられない。

コツンとおでこに何かがぶつかる。私は恐る恐る目を開けると、カイルと目が合った。カイルのおでこが私のおでこにくっついている。

「やっと、目が合った」

カイルは優しい声でそう言うと、私のおでこにキスをした。

びっくりしたぁ、口にされると思った…

「今はこれで我慢するよ。さあ、庭に出ようか」

カイルは私の頭を撫でたあと、私に腕を差し出してきた。私はカイルの腕を掴む。

顔が熱い…この状況でお茶なんてできるわけ…カイルの顔を見ると何事もなかったかのように平然としている。挨拶みたいなものだったのかな?だったら、照れてる私がバカみたいじゃん。…恥ずかしい。


庭に着くとすでにお茶の準備は整っており、私達が座るとお茶を淹れてくれた。

侍女達はカイルの指示で少し離れた所に控えている。

「パトリシアに話しておかないとなんだけど…」

カイルが口を開く、私は持っていたカップをテーブルに置く。なんだろう改まって。

「これから数週間忙しくなるんだ。だから、そのネックレス少しの間借りてても良いかな?」

私が今つけているのは、誰かにプレゼントしてもらったものではなく、自分で気に入って購入したものだ。何かあったときに売れるようにちゃんと宝石商から購入したサファイアのネックレス。プレゼントしてもらったものを売るのは心苦しいからね。

でも、何故ネックレスを?貸すだけだから別に良いけど

「構いませんよ」

私はネックレスを外して、カイルに渡す。

「ありがとう、これで会えない間も君の事を感じられるね」

カイルはそう言って笑った。よくもまあ、恥ずかしげもなく…

「あ、セシルに当分剣の稽古はつけられないと伝えてもらえるかな?」

「…はい」

そっか、忙しくなるって言ってたもんね。

「…パトリシア」

カイルは少し切なそうな顔をしたが、「なんでもないよ」と言って笑った。


カイルは何かを話そうとしていたが誤魔化している。…気になるけど詮索はできない。

結局、何も聞けないまま迎えの馬車が来てお暇することになった。


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