66 悪役令嬢と同年達
何はともあれ、カイルのおかげで助かったことには変わらない。けど、ずっとここにいるわけにはいかないし…ステラ達を探しに行こうかなと考えていると、
「カイル様、こっちに変なおじさん来てない?」
ミシェルが慌てた様子で、カイルに近づいてきた。
「変なおじさんじゃ分からないだろ」
その後ろをエリオットがやってきた。
「おじさんってロジャー子爵のこと?」
私がカイルの影から出て、尋ねると
「トリシャちゃん大丈夫だった?」
ミシェルが私の肩を掴んできた。エリオットはミシェルを私から引き剥がそうとしている。
「ええ、カイル様のおかげで…」
二人も私が追いかけられているのを見て心配してくれたのかな?
それにしても、二人に会うのは久しぶりだなぁ…元気そうで良かった。
「パトリシア、どうかした?」
「なんか、久しぶりな気がして」
エリオットとミシェルが顔を見合わせた。
「寂しかったの?」
私はエリオットの言葉に素直に答えた。
「うん、寂しかった」
エリオットが忙しいからか、エリーゼもあまり来なくなった。エレノアも来年は社交界デビューだからか忙しい。
「…そっか」
「トリシャちゃんは本当に可愛いね」
何故か私は二人に頭を撫でられ、幼い子供を見るような目を向けられている。
寂しいと言ったことで、子供扱いされているのかな
「私が会いに行ってるのに、寂しい思いをさせてしまってごめんね」
カイルに肩を抱き寄せられる。会いに来ているというより、セシルの剣の稽古に付き合っているだけだよね。
「え?カイルも忙しいんじゃないの?」
「パトリシアに会うためならいくらでも時間を作るよ、まあ今はセシルに使ってるようなものだけど…」
「そんなことより、トリシャちゃんまた家においでよ」
そういえば、ガーネット伯爵邸にお邪魔したのはダリルの村の件が最後だったな。私が返事をするより先にカイルが
「またってどういうことかな?」
と言って、ミシェルを見て笑っている。仲間はずれにされたのが嫌だったのかな?でも、フランクさんも王族が突然やって来たら困るだろうな。
「ミシェル、誤解を招くようなことを言うと面倒だから…」
エリオットはカイルとミシェルの間に入り、ため息をついている。
「そもそも、俺も一緒だったし」
「私は誘われてないんだけど」
カイルが私の方をじとーっと見て頬をつついてくる。
やっぱり、仲間はずれにされたから不機嫌なんだ。可哀想だけど流石に…
「カイル様も来られたら、ガーネット伯爵が驚いちゃいますよ」
「うんうん、トリシャちゃんの言うとおりだよ。だから仕方ないよ」
ミシェルがニコニコ笑っている。ミシェルは前に、カイルと仲が良いと思われるのが嫌だとか言っていたけど、なんだかんだ仲が良いように見える。
カイルがミシェルにムッとした顔をした後、
「パトリシア、今度はフローレス公爵の付き添いではなく、一人で城においで」
と言ってきた。穏やかな笑みを浮かべているけど、何故お父様と一緒じゃないの?私何かしでかしちゃった?もしかして、マントに隠れたのがダメだった?と悶々としていると、ステラが手を振ってこちらに近づいてきた。
「パトリシアー」
ステラはカイルがいることが分かったからか、手を降ろしてカーテシーをした。
「ステラ嬢だね。パトリシア、友人ができて良かったね」
その言い方だと、私が友達のいなかった可哀想な子みたいじゃないか。
「ブライス様とガーネット様はパトリシアとどういうご関係で?」
ステラが不思議そうにこちらを見る。
「二人はただの友人だよ」
またしても、私が答える前にカイルが答える。
「まあ、トリシャちゃんからしてみたらカイル様もただの友人とし…」
ミシェルが何かを話しているが、エリオットに口を塞がれて後半はモゴモゴ言っている。
「あれって、ステラの婚約者じゃない?」
ステラの婚約者は、辺りをキョロキョロとしながら歩いている。恐らくステラを探しているのだろう。
「本当?行ってくるね」
ステラは嬉しそうに笑みを浮かべて歩いていった。可愛い、見ているこちらまで思わず笑みが溢れる。
「…彼が少し羨ましいな」
カイルがステラとステラの婚約者を見て、小さく呟いた。私がカイルを見るとカイルは「なんでもないよ」と言って笑った。
何が羨ましいんだろう…まさかカイル、ステラに惚れちゃったの!?




