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65 悪役令嬢と夜会

今日は王宮で開かれる夜会に参加する。今回はお父様が来られないため、会場までのエスコートはダリルがしてくれることになった。

コルセットを締められる時に

「お嬢様、お食事を取られる際は注意してくださいね」

とレーネが耳元で話してきた。この前の話で毒を盛られる心配をしてくれているのかな。

「ええ、気をつけるわ」

最近はレーネから話しかけてくれることが増えてきて嬉しいな。

「今日のドレスもとてもお似合いです」

夜空のような青色にタッキングが特徴的なドレスだ。今回はダンスをする訳ではないため、少し歩きにくいデザイン、そしてスカート部分のボリュームが少ないためか、コルセットをキツめに締められた。


準備も終わり部屋を出ると、ドアの前をダリルがウロウロしていた。

「お待たせしてごめんなさい」

私が声をかけると、ビクッと肩を揺らした。

「…きょ、今日も、その…お綺麗ですね」

ダリルは火が出そうなぐらい真っ赤な顔をしている。

「ありがとう、ダリルも素敵ね」

ダリルは護衛兼エスコートのため、騎士団の制服を着てはいるが、髪型だけはキチッとしている。

「あ…ありがとうございます」

ダリルが勢い良く頭を下げる。せっかく整えられた髪型が崩れてしまうのでは?と心配していたが、しっかり固められているようで要らぬ心配だったようだ。

「…お手をどうぞ」

カタカタと手が震えている。緊張しているのか動きもぎこちない。

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ」

ダリルの手を取って歩き始めるも、ゼンマイで動く人形のような歩き方をしている。まあ、緊張するのも無理はないか、平民だったダリルが王宮に行くことなんてなかったのだから。


馬車に揺られている間もダリルは挙動不審だった。

「ダリル、大丈夫?難しいようならエスコートはしなくても良いのよ」

「違うんです、エスコートの練習は沢山したんですけど、いざ本人を目の当たりにしたら…緊張してしまって」

「じゃあ、着くまでの間こうしていましょう」

私はカタカタと震えているダリルの両手を包み込む。すごく冷たい、震えは緊張だけではないのかな?と思っていたが、あっという間に手は温かいを通り越して熱くなった。

「あ、あの…俺もう…限界です」


結局、ダリルはぎこちない動きのままだったが、しっかりエスコートはしてくれた。


会場に入ると知り合いを探す間もなく、声をかけられた。

「パトリシア様お会いしたかったです」

彼は確か、セシルが捨てた肖像画の男性でロジャー子爵…

「えっと、…ロジャー様?」

家名しか知らない、どうしよう…

「ご存知いただいていたとは、恐悦至極にございます。ニコラス=ロジャーと申します」

名乗ってくれてよかった。それにしても、何の用で私に?

「パトリシア様は、エスコートを公爵様に頼まれていましたよね」

「はい、そうですが」

「フローレス公爵様は容姿はとてもお若いですからね、私と同い年ぐらいに見えるほどに…」

何が言いたいんだろう。確かにお父様は、十五歳の子供がいるようにはとても見えないけど…

「パトリシア様は年上の包容力のある男性がタイプなのでしょう?」

なるほど、要するに公爵令嬢なのに婚約者もいない、父親にエスコートをしてもらっている。以上のことでファザコンか、年上好きとでも思われているのだろう。

「私は適任ではありませんか?」

…貴族の世界で年の差婚は当たり前かもしれないけど、前世で十五歳の子に手を出そうとしている三十代はちょっと…

「…あの」

「突然言われても困りますよね、まずは私のことを知っていただかないと…」


「私は今年で三十五歳になるんですけど、私に釣り合う女性が今まで見つからなくて…」

セシルはすごいな、あの肖像画で年齢を当てている。

「そんなとき、あなたに出会った。つまり、一目惚れですよ」

…まだ話していた。

「あ、年の差は気にしませんよ、それにパトリシア様は年齢よりもずっと成熟していらっしゃるようなので」

私の身体を舐めるように見ている。ってか、この場合年上の方が気にしないって言うのおかしくない?どうしよう、気持ち悪いそろそろ良いかな?

「すみません、そろそろ失礼しますね」

私は軽く会釈して、その場を離れる。


あれ?ついてきてるどうしよう。走るわけにはいかないし、ちょうどいい所にカーテンが…

私はカーテンの中にしゃがんで隠れる。

「ふふ、可愛いことをしているね」

突然頭上から声をかけられ

「カイル様!?」

カーテンだと思った布はカイルのマントだったのか、でも今出ていくのはまずい。

「すみません、もう少しだけこのままで…」

足音が近づいてくる。

「カイル第一王子殿下、こちらにフローレス公女は来られませんでしたか?」

やっぱり追ってきてたんだ。

「…こちらには誰も来ていませんよ」

カイルがそう言うと、ニコラスの足音は遠ざかって行った。

「もう大丈夫だよ」

「ありがとうございます。助かりました」

良かった。これだけ人がいるし、巻けたかな?

「ロジャー子爵とは知り合いだったの?」

「いえ、お話したのは初めてです」

そもそも、ほぼ初対面でよく求婚できるな。

「そっか、終わるまでここに隠れてていいよ」

カイルがマントを持ち上げて笑う。

「大丈夫です」


はぁ、疲れた。まだステラやエリオット、ミシェルとも話せてないのに…



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