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セシルの策略

姉さんが社交界デビューして以降、カイル様が来る頻度が増えた。元々結構な頻度で来ていたが、姉さんも準備で忙しくなってからは減っていたのに…

姉さんは今まで、カイル様から向けられている好意に気づいていなかった。それなのに、あの一件以降少し意識し始めた。僕とアリシアで妨害をしてはいるが、難なくかわされている。

かくなる上は…

「姉さんにお願いがあるんだけど…」

「セシル、何でも言って」

姉さんは嬉しそうだ。

「カイル様に剣の稽古をつけてもらいたいんだけど、姉さんから頼んでもらえないかな?」

カイル様の事だ、姉さんのお願いは断らないはず

「…分かったわ、伝えておくわね」

姉さんは少しぎこちなく笑った。


カイル様が姉さんに会いに来た。僕は物陰から様子を見る。

「カイル様にお願いがあるんですけど」

姉さんが話を切り出すと、カイル様は満面の笑み浮かべている。

「私にできることなら何でもするよ」

「あの…カイル様、セシルの剣の稽古に付き合ってもらえませんか?」

「……ん?」

流石に姉さんの頼みでもダメか?

「やっぱり、ダメですか?」

こちらからは姉さんの表情が見えないが、きっと愛らしい顔をカイル様に向けているのだろう。カイル様の顔が赤くなっている。

「可愛いパトリシアのお願いなら仕方ない、良いよ」

作戦が上手くいって嬉しい反面、これからカイル様と顔を合わせる頻度が増えると思うと憂鬱だ。でも、これは姉さんを守るためだ。僕が頑張らないと



「やあ、セシル頼み事ならパトリシアを通さず、直接私に言ってもらわないと」

後日、訓練着を着たカイル様が恐ろしい笑顔でこちらを見てくる。

「僕なんかの頼み事を聞いてくれるなんて、カイル様はお優しいですね」

僕は毅然とした態度で振る舞う。

「義弟君の頼みなら、聞いてあげるよ。私は君の義兄あにになるのだからね。義兄にいさんって呼んでくれていいよ」

アリシアがいたら、間違いなくカイル様に掴みかかっているだろう。僕は心を乱されるわけには行かない。

カイル様が訓練用の剣を構える。

「良いですよ、呼べる日が来たらですけど!!」

僕はカイル様に斬りかかる。



「…君、私が稽古をつける必要はないと思うけど」

カイル様とはほぼ互角だった。それでも、僕の方が少し劣っている。

「カイル様に褒めて頂けて嬉しいです。でも、互角では意味がないですからね」

「そうだね、私もパトリシアにカッコいい所を見せたいからね」

互角では意味がないとは言ったものの、カイル様の前では、カイル様より少し弱いままでいないと、カイル様に一本取れてしまったら稽古に付き合ってもらえなくなるからね…

もちろん、わざと少し弱い振りをするだけだ。



「セシル、お疲れ様」

訓練場から出ると、姉さんが駆け寄ってきた。カイル様ではなく僕に

「怪我はない?」

姉さんは僕の顔や腕を見て、傷がないかを確認している。僕のあとから訓練場を出てきたカイル様から、突き刺すような視線を感じる。

「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう」

姉さんに心配をしてもらえるのは嬉しいが、今はこの場を切り抜けないと

「姉さん、着替えてくるから後でね」

「うん、カイル様ありがとうございました」

姉さんがカイル様の方を見てお礼を言っている。

「どういたしまして」

カイル様は姉さんにお礼を言われた途端、突き刺すような視線が消えた。

流石のカイル様も訓練着のままでは、姉さんにあまり近づかない。


僕の作戦通りだ。カイル様は当分の間、姉さんには近づけないし、近づかせない…



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