63 悪役令嬢と招待状
社交界デビューから一週間、私のもとには大量の手紙が届けられた。
「この人、肖像画が入ってるけど明らかに姉さんより20歳は上だよね」
「この方なんてお姉様と結婚したがっていますよ。おこがましいですね」
私宛に届いた手紙なのに、何故かアリシアとセシルが先に見ている。
肖像画を入れてくるのは、現世でいうお見合い写真みたいな物だろう。婚約者がいることを知らない人達がそういった手紙を送ってきているようだ。
婚約者か…カイルがまだ私のことを好きだったとは…それに、アリシアとセシルの前であんな事を言うなんて…思い出すだけで恥ずかしい。
「この辺は全て捨てて良いよね」
セシルが手紙を回収し始める、私はまだ見ていないのに…テーブルの上を見ると、未開封の手紙が何通か残されていた。
「これは女性からの手紙だから、姉さんが呼んでも良いよ」
私は残された手紙を手に取る。クランプトン…ステラからの手紙だ。
「…お茶会にご招待」
ステラが私をお茶会に招待してくれた。少ししか話していないの、私のことを覚えていてくれたんだ。嬉しいな…
「お姉様、楽しそうですね」
「ええ、少しお話したご令嬢にお茶会に招待してもらったの」
「良かったですね」
アリシアも嬉しそうにしている。
これで念願の同い年の女の子友達ができるかもしれない。
「本日はお招き頂きありがとうございます」
お茶会当日、クランプトン邸についた私は出迎えてくれたステラに挨拶をする。
「来ていただけて嬉しいです。案内致しますね」
私はステラに案内されて、ガゼボに着くとすでに令嬢が二人いた。
「フローレス公女様、ごきげんよう」
ステラの取り巻きっぽい令嬢達だ。私も「ごきげんよう」と返す。
「揃いましたし、始めましょうか」
あれ?お茶会ってもっと大人数を想像していたんだけど…まあいっか
「パトリシア様、先日はありがとうございました。あの後、私の婚約者が戻って来て二人でお話ししたんです」
ステラは少し恥ずかしそうだけど、嬉しそうに話す。
「良かったですね、でも私は特に何もしていませんよ」
「いいえ、パトリシア様のおかげです」
ステラが婚約者とどんな話をしたのか気になるが、ステラの反応を見る限り聞くだけ野暮だよね。
「そういえば、カイル様はパトリシア様の事をとても大切にされているそうですね」
私は突然のステラの発言に、ティーカップを鳴らしてしまった。
「ごめんなさい」
私はティーカップとソーサーに傷がついていないかを確認する。
「大丈夫ですよ、それよりパトリシア、その反応は何かあったのですか?」
ステラと二人の令嬢がキラキラした期待の眼差しで私を見てくる。そもそも、何故そんな事を…
「何故、カイル様が私の事を大切にしているとお思いなんですか?」
「私、お父様から聞いたんです。あの日フローレス公爵様に抱き上げられていたパトリシア様に、カイル様が羽織っていたジャケットをかけて差し上げているところを見たと」
ステラがそう言うと、三人でキャアキャア言い出した。
あれ?カイルが私にジャケットをかけた?ってことは、私が剥ぎ取ったわけじゃなかったんだ。あんなに悩んでたのバカみたい。この前私がジャケットを返したとき、私から返されると思わなかったって言っていたのは、もしかしたら、お父様が王宮に行くついでに返しに来るとでも思っていたのかな?
カイルは本当に私の事が…
「あら、パトリシア様お顔が真っ赤ですよ」
ステラに言われて、慌てて顔を隠す。また、思い出してしまった。手の甲にキスされたのはあの日が初めてではなかったけど、本物の王子様みたいだったな、まあ本物の王子様だけど…
その後、色々話してお開きになった。二人の令嬢の迎えが先に来た。私は迎えが来るのを待っているとステラが話しかけてきた。
「パトリシア様、本日はありがとうございました。それで…もしよろしければ、私のことはステラとお呼びください」
脳内では呼び捨てしていたからすっかり忘れていたけど、そういえば、一応様付けしていたな。
「ステラも、私のことはパトリシアって呼んで。それに敬語もいらないわ」
「良いんで…良いの?」
「もちろん」
私はようやく対等な女の子の友人ができた気がした。




