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気づかれない想い

今日はパトリシアの社交界デビューなのに、私は隣に立てない。それどころか、堂々と話しかけに行くこともできない。少しでも良いから二人きりになりたくて、父上の了承を得てバルコニーにパトリシアを連れて行くことができた。


「今日はいつも以上に綺麗だね」

化粧をしているのもあるが、普段おろしている髪もまとめられていて、大人っぽく見えた。

パトリシアの着ているドレス…肩から腕が露出されている。

「傷痕が残らなくて本当に良かった」

私のせいでパトリシアは傷を負ってしまったが、その傷はきれいさっぱりなくなっている。

「カイル様がくださった薬のおかげです」

パトリシアはいつもと違うふにゃふにゃとした笑みを浮かべる。

可愛い…また一つ新しい表情を見ることができた。

パトリシアはシャンパンがお気に召したのかニコニコと嬉しそうだ。完全に酔ってしまう前に話さないと…婚約者お披露目パーティーについて

「パトリシア、大切な話があるんだけど」

私がグラスを置いて、パトリシアを見つめると、パトリシアもグラスを置いた。

「そろそろ婚約…」

「もしかして婚約解消ですか?」

パトリシアは今なんて言った?婚約…解消!?

「え?」

「やっぱり、アリシアの事が好きなんですね。大丈夫ですよ、私は応援してますから」

パトリシアが私の手を握り、上下にブンブンと振っている。

パトリシアは、私がアリシアの事を好きだと勘違いして…そういえば、前にパトリシアの好みを聞いたときにアリシアの好みも教えてくれたのは…

「パトリシア、私は初めて君に会った日から、今も変わらず君をパトリシアだけを愛しているよ」

私はパトリシアを抱きしめる。パトリシアも特に抵抗をせずに私の腕に収まっている。

「…」

パトリシアの身体が私に委ねられる。

「パトリシア?」

反応がない。そこまで強く抱きしめたつもりはなかったのだけれど…

「…寝てる」

慣れない環境で疲れたのか、お酒に酔ってしまったのかは分からないがパトリシアはスヤスヤと寝息を立てている。この体勢でいるのは私もパトリシアも辛い。私はパトリシアを抱き上げ、横抱きにして座る。

「いつになったら、気づいてくれるのかな」

お酒のせいか赤らんでいる頬に口づける。


「自分がパトリシアと踊れないからって、他の男と踊らせないために俺たちに見張りをさせていた人だ」

「こんな所に隠れて何してたの?」

居場所は言っていなかったのに、エリオットとミシェルがやって来た。

でも、こうしてパトリシアと二人きりになれたのは、他でもないエリオットとミシェルのおかげだから文句は言えないが。

「パトリシア?…カイル、パトリシアに何した」

エリオットが私を冷たい目で見下ろしている。

「誤解だよ。お酒を飲んで寝ちゃってるだけ」

「よく寝てるね。トリシャちゃん可愛い」

ミシェルがパトリシアの頬をつついている。やめさせたいところだが、両手がふさがっているためできない。

「パトリシアはお酒が弱いのか」

エリオットは先程とは打って変わって、穏やかな表情をしている。

「トリシャちゃん疲れちゃったんだね。害虫がたくさん寄ってきてたから」

パトリシアは自分に向けられる好意に相当疎い、現に私の好意にも気づいていない…

「大したことない感じだったけどね、僕が少し睨んだだけで何処か行っちゃったし」

ミシェルが害虫の駆除を率先してやってくれて助かっている。

「あれをまともに食らったらトラウマになるよ」

「エリオットもなかなか怖かったけどね」

エリオットもなんだかんだ協力的だ。


「ところで、パトリシアはどうするの」

エリオットは風よけになってくれているが、流石にここにずっといるわけにもいかない。

「もう少しでお開きになると思うから、フローレス公爵を呼んできてもらえるかな?」

エリオットが会場に戻って行った。できればミシェルも一緒に行ってほしかったが、ミシェルはパトリシアの寝顔見て笑っている。


「カイル様、すみません」

アルフレッド宰相が慌てた様子でバルコニーに来た。

「パトリシアをこちらへ」

私は立ち上がり、パトリシアをアルフレッド宰相の腕に乗せるつもりだったが、パトリシアは私にもたれかかっている。少し名残惜しい…

「気持ちよさそうに眠っていますし、このまま城に泊めて…」

「カイル様、パトリシアは聡明な子です。この子は跡を継げるぐらいの裁量を持っているんですよ」

遠回しに婚約を解消することもできると言われているような気がする。

「それは困りますね」

結局、アルフレッド宰相に受け渡すことになった。

「パトリシア、お父様だよ」

「う…ん、おとう…さま」

パトリシアはアルフレッド宰相の首に腕を回して、そのままアルフレッド宰相の腕の中で眠っている。

「…可愛い、お嫁にやりたくない」

アルフレッド宰相はパトリシアを強く抱き寄せている。

私は羽織っていたジャケットをパトリシアに乗せる。


「それでは、カイル様失礼します」

アルフレッド宰相に続き、エリオットとミシェルも帰っていった。



パトリシアは婚約解消を望んでいるのか…いや、私がアリシアの事を好きだと思っているから身を引こうとしているだけなのでは?それに、私の事を嫌っているわけではなさそうだし、私がいかにパトリシアを好いているかを伝えて、意識してもらえるようにならないと…




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