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58 悪役令嬢の社交界デビュー

今日はついに社交界デビュー。アンナをはじめとした侍女達は慌ただしくしている。

お風呂に入れられ、マッサージをされ、メイクに着替えと大忙しだ。

「マリー、そっちの香油をお嬢様に髪に塗って差し上げて」

「レーネはアクセサリーを持ってきて」

「お嬢様、コルセットを締めますので息を吐いてください」

私がふぅっと息吐くと同時に、レーネにギュッとコルセットを締められる。結構苦しい…一応体型管理には気をつけていたけど、メリハリのある体型に見せるにはウエストを締めるしかないのか。

私はドレスを着せてもらい、髪をセットしてもらった。

「パトリシアお嬢様とてもお綺麗です」

私は全身鏡の前に立つ、アンナが後ろも見えるように鏡を持っている。オフショルダーの深海のような青いドレス。スカート部分は4段のティアードがグラデーションになっていて一番下の段は白い。金色の刺繍が沢山施されていて、シルクのロンググローブにも刺繍がされている。そして、腰にはレースのリボンが巻かれている。髪はギブソンタックで、花やリボンが編み込まれている。ドレス合わせてか、サファイアのネックレスもつけられている。すごい…自分で言うのもなんだけど、本物のお姫様みたいだ。

「きっと会場で一番お美しいですよ」

感極まったのか涙を流しているマリーの隣で、レーネは静かに頷いている。

「楽しんできてください」

私は部屋を出ると、アリシアが駆け寄ってきた。

「お姉様、本当に本当に本当に素敵です」

いつもなら抱きついてくるところなのに、今日はもじもじして私を上目遣いで見ている。ドレスがシワになることを気にしているのかな?

「アリシア、おいで」

私が両手を広げると、ゆっくりと私の背中に手を回す。アリシアは可愛いな…もし私とアリシアが同い年で、一緒に社交界デビューしていたら、アリシアが一際輝くのだろうな。

「…姉さん?」

アリシアを抱きしめていたら、セシルがこちらに来ていた。アリシアもセシルに気がついたのか、私から離れてしまった。

「綺麗…」

「ね、本当に私にはもったいないぐらい素敵なドレスよね」

セシルが見惚れのも無理がない。お父様達に気合が伝わるぐらいの出来前だもの。

「いや、ドレスだけじゃなくて…良く似合っているよ。本当に綺麗だね」

「ありがとう、セシル」

私はアリシアと同様に抱きしめようと手を広げるも、断られてしまった。

「お嬢様、旦那様も用意が整ったようです」

「姉さん僕にエスコートさせて」

私はセシルの手を取り歩く。アリシアがキラキラした瞳でこちらを見てくるため、左手はアリシアと繋いだ。

エントランスに着くと、お父様と母上、ランドルフ隊長にダリル達騎士団の方々がいた。お父様は黒い燕尾服に、胸ポケットには私のドレスと同じ色のポケットチーフが入っている

「パトリシア…僕のお姫様はとても綺麗だね」

私はアリシアとセシルの手を離し、お父様の手を取る。

「パトリシア、とても素敵ね。社交界で注目の的になるわね」

母上が優しく笑う。その横でランドルフ隊長は男泣きをしている。ダリル達にも褒めてもらった。

みんなに見送られながら、馬車は発進した。

「パトリシアいいかい?知らない人にはついて行ってはダメだよ、それから具合が悪くなったらすぐに言ってね。後、嫌なことを言われたりされたときは、家名を必ず聞いておきなさい。そうしたら僕が何とかするからね」

向かいに座るお父様には、お城に着くまでくどくどと小さな子供に言い聞かせるように注意事項を言われた。


扉の前に来た途端に緊張が走ってきた。そんな私に気づいたのか、お父様は

「堂々としているんだ。大丈夫だよ僕がついているからね」

そう言って、肩を抱き寄せてくれた。

扉が開かれ、中に入る。貴族達の視線が一気に集まる。

「フローレス公爵様と公女様よ」

「素敵」

少し恥ずかしいが、堂々としていないと…私はゆっくりと辺りを見回す。エリオットとセシルを見つけ、思わず顔が綻ぶ。二人も気づいてくれたのか笑いかけてくれた。見知った顔を見つけたおかげか、緊張も少し和らいできた。

よし、頑張って女の子の友達を作るぞ!!


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