55 悪役令嬢と社交界準備
私は社交界デビューに向けて、ダンスの練習が始まった。ダンス自体は前から授業で習ってはいたけど、今までと違うのはパートナーがいること。
「付き合ってもらって悪いわね」
私はセシルと練習をしている。私が社交界デビューしたら次はセシルだし、丁度良いと言えばそうだけど。
「ううん、練習とはいえ、姉さんの初めてのダンスのパートナーになれて嬉しいよ」
セシルもいつの間にか、身長が伸びて私の背を越してしまった。寂しいような嬉しいような。
「姉さんは社交界デビューの日、カイル様にエスコートしてもらうの?」
「私も分からないわ」
結局、私とカイルが婚約をしていることは一部の人しか知らない。それなのに、突然カイルにエスコートされた私が来たら…考えただけでも憂鬱だ。
「お父様にお願いしようかしら」
「それが良いよ、でも来年は僕にエスコートさせてね」
セシルが社交界デビューするときはエレノアもだから、その時までに二人の仲が進展していないようなら仕方ないもんね
「ええ、良いわよ」
「約束だからね」
「お父様、お願いがあるんですけど」
私は毎度のことながら、お父様の書斎にいる。
「どうしたの」
お父様は優しげに私の続く言葉を待っている。
「…社交界デビューの日、お父様にエスコートをお願いしたくて」
エリオットやミシェルにお願いするのでも良かったんだけど、二人に迷惑をかけるわけにはいかないからね。
「……」
お父様は黙っている。やっぱり忙しいのかな?
「お父様?」
「僕で良いのかい?嬉しいよ、ドレスは決まってる?会場で一番のお姫様にしてあげるからね」
お父様は立ち上がると、私を子供のように抱き上げられてくるくるとしている。お父様は今まで見た中で、一番嬉しそうな顔をしている。
「早速、仕立て屋を呼ばないと」
お父様は私を下ろした後、足早に出かけてしまった。
こんなに喜ばれるとは思わなかったな。
それからが大変だった。ドレスの色や素材、形や装飾まで、なぜか私よりもお父様達が張り切って選んでいる。
「お姉様にはこちらのような深い青がお似合いですよ」
アリシアも沢山の布を見て楽しそうだ。
「パトリシアはスラッとしているからグローブは長い物が良いわね、素材は…」
母上も真剣に選んでいる。
「うーん、迷うね5着ぐらい仕立ててもらおっか」
お父様は腕を組みながらうんうんと唸っている。
「お父様流石にそれは」
社交界デビューは一回だけなんだから5着は多いでしょ。
「そうだね、5着は少ないね。もう3着お願いするよ」
「そういうことでは…それにお父様の礼服は仕立てなくて良いんですか?」
デビューするのは私だけど、一緒に行くお父様も礼服は必要だ。
「パトリシアのドレスが決まったら適当に決めるよ」
私のドレスにはこんなにこだわってるのに、自分のは適当なんだ。
「姉さん、社交界で着るドレスの形ってこういうものなの?」
コソコソと耳打ちしてきたセシルが、何とも言えない顔でカタログをチラチラと見る。
カタログに載っているドレスはどれも露出のあるものばかりだ。肩が出ていたり、胸元が大きく開いていたり。今までお茶会で着ていたものとはまったく違う。
この世界では成人とはいえ、まだ15歳、大人と言えるほどの体型ではない。
「私にはまだ似合わないわよね」
「え?いやそういう話じゃなくて、似合うよ絶対大丈夫」
セシルが早口で言う。弟に気を使わせて申し訳ないな。
結局ドレスは10着仕立てる話しになってしまった。




