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真犯人の正体

「警備の強化と飲食物の注意、後は…」

 私の執務室で、王宮で行われる社交界デビューの夜会について話し合いを行っている。


「常に、誰かが側に入れば近づいては来ないんじゃないかな?特に男の人がいれば…僕は当日暇だから、トリシャちゃんの側にいられるよ。」

ミシェルは、ニコニコと笑ってそう言った。

 確かに、誰かが側に入れば狙っては来ないだろう。当日は、セシルはアリシアのエスコート。アルフレッド宰相はフローレス夫人のエスコート、その後は父上の近くにいるだろう。

「いや、婚約者の私が側にいるから、ミシェルは気にしなくても大丈夫。」

ミシェルが隣にいる方が厄介だ。

 早いとこ、パトリシアと結婚をして警備が厳重な王族席で……と言いたいところだけど、パトリシアに思われていない状態で結婚をしても、虚しいだけだ。



「カイル殿下、犯人を捕らえました。」

バタバタと慌ただしい足音と共に、扉が勢い良く開いた。

ノックもなしに入ってきたことを問いただしたいところだけど、今はそんな事はどうでもいい。

「ハンス、犯人とはあ(・)の(・)件(・)のだよね?」

私がそう言うと、ハンスは静かに扉を閉めた。

「それで、誰だったの?」

「…ロジャー子爵でした。ただ、本気でパトリシア様を殺す目的で依頼したわけではないようでして…」

「というと?」

エリオットも話に加わってきた。

「ロジャー子爵は、悪漢達にパトリシア様を襲うふりをさせて、パトリシア様が襲われている所に助けに入ろうとしていたようです。」

「でも、実際に助けに入ることはなかったんだよね?」

ミシェルが不機嫌そうにそう言うと

「助けに入る前に、パトリシア様が縄を解いて小屋から逃げ出したようで…」

「小屋から逃げ出した後、パトリシア様は剣のような物を振るって悪漢達に立ち向かおうとしていたようで…そのお姿を見て諦めたようです。」

「はぁ……パトリシア。」

「トリシャちゃん格好良い。」

 パトリシア…そんな危険な事を……いや、逆に良かったのか?


 それにしても、ロジャー子爵ね。あの件では爵位の剥奪とまではいかなかったから、大人しくしていると思っていたけど、まだ諦めていなかったとは…

「ロジャー子爵はカイル殿下に脅されて、パトリシアが婚約を結んだのだとおっしゃっていました。」

「…それは間違ってないんじゃない?」

「パトリシアを脅したことなんて、一度もないんだけど。」

確かに、セシルがフローレス家の養子になったことを知って、婚約を進めたけど…

「それと『カイル様が私とパトリシア様の仲を引き裂いた。』とも…」

……引き裂く必要もない程、親しい間柄ではなかったのに、自分の都合のよいように記憶を改ざんできる頭をしているようだ。

それも三年前の事なのに…

「うわぁ、すごい執着心だね。まだ顔が良くて王族なだけカイル様の方がましだね。」

「ミシェル、君は私に喧嘩を売っているのかな?」

 執着心に関しては自覚をしているが、ミシェルに言われる筋合いはない。

「何で、怒ってるの?褒めてるつもりだったんだけど。」

 褒めている?「まし」と言っている段階で、決して褒めているわけではないだろう。

「…君、不敬にも程があるんだけど。」

「えー?僕を罪に問うの?そんな事をして、トリシャちゃんが悲しんでも良いの?」

 パトリシアが…悲しむ!?


「まあ、その話は一度置いておいて…ロジャー子爵はどうするの?」

エリオットが口を開いた。

「今は、牢に入れてあります。」

「とりあえず、ロジャー子爵の処遇はこちらで決めるから、エリオットとミシェルは口外しないように。」

 ミシェルに構うのをやめて、処遇について考える必要がある。

それに、ハンスの今後も…

「でも、夜会の警備は厳重にしておいた方が安心だろうね。」

「そうするよ。」


 これで、ようやく今回の件は片がつくだろう。パトリシアも安心して夜会に参加できるはずだ。


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