148 悪役令嬢と義妹の社交界デビュー。
月日が経つのはあっという間で、今日はついにアリシアの社交界デビューの日だ。
「わぁーパトリシア様、とても可愛いです。」
「本当に?変じゃない?」
アリシアと色違いでおそろいのドレスを身に纏い、鏡の前で一度回ってみる。
アリシアの髪色に似た淡いピンク色のドレスが、私の動きに合わせて揺れる。
「はい、お嬢様はどんなお色もお似合いになりますね。」
ピンク色だけど、甘過ぎないデザインのおかげかそこまで違和感はないようだ。
「お姉様ー」
「アリシア様、走られたらドレスがシワになってしまわれます。」
まだ私の部屋に到着はしてはいないけど、アリシアとアリシアを追うデイジーの声と足音が聞こえる。
「お姉様、開けてもよろしいですか?」
私の部屋の前に到着したようで、律儀にノックをしてアリシアはそう言った。
「ええ、どうぞ。」
扉が開くと、そこには可愛らしい春の妖精がいた。
「か、可愛い…アリシアは寒色より暖色が似合うわね。」
普段は、結われることのないサラサラなロングヘアはハーフアップになって、少し大人っぽく見える。
私のドレスよりも目立つように、フリルの段数は多く、バックリボンが付いている。
アリシアの黄色のドレスには、青い花の刺繍が散りばめられて、私のピンクのドレスには黄色い花の刺繍が散りばめられている。
デザインはほとんど一緒だけど、アリシアのドレスはオフショルダーだけど肩は完全には出ない形。私は肩がしっかり出る形。
おそろいだけど、私達に似合うように作ってくれたのだろう。
「お姉様、とても可愛らしいです。うぅ…ドレスがシワになってしまうから、抱きつけないのが残念です。」
アリシアはシュンとした顔で私を見上げる。
私も撫でてあげたいけど、せっかく綺麗に結われた髪型が崩れたしまうため、我慢した。
「姉さん、アリシアいる?」
セシルが扉を叩いてきた。
そろそろ出発の時間だ、迎えに来てくれたのだろう。
扉を開けると、セシルは私達を見た。
「……へぇー、綺麗だね。アリシアも黙っていれば、ちゃんと淑女に見える。」
「むぅ、失礼ですね。」
アリシアは頬を膨らませて、セシルを睨んでいるが全然怖くないし、むしろ可愛い。
「父上と母上が下で待っているから、そろそろ行こう。」
セシルに続き、私とアリシアは部屋を出た。
セシルは私とアリシアをチラッと見ては、目を逸らすを繰り返している。
「セシル、どうしたの?」
私が尋ねると、セシルは少し寂しそうな顔をした。
「……二人だけおそろい。」
セシルは、聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
そっか、寂しかったのか。今日はセシルとおそろいのピアスは外しているし。
「セシル、これでおそろいになるかしら?」
私は片方のイヤリングを外してセシルに渡した。トパーズと小さなピンクの石のついたイヤリングだ。
「…ありがとう。」
セシルは嬉しそうにイヤリングを耳につけた。デザインは女性向けだから、断わられると思っていたけど喜んでくれて良かった。
「来たね。……皆、本当によく似合っているよ。これから、可愛いうちの子たちを自慢しに行くと思うと楽しみだ。」
「ええ、本当に…こうして皆で夜会に参加できるなんて嬉しいわ。」
お父様と母上は穏やかに笑った。
「いいかい、アリシア。知らない人にはついて行ってはダメだよ、それから具合が悪くなったらすぐに言ってね。後、嫌なことを言われたりされたときは、家名を必ず聞いておきなさい。そうしたら僕が何とかするからね。」
馬車に乗って、早々にお父様はアリシアにそう言った。私もセシルも言われた事だ。
「はい。でも、わたくしにはお姉様とお兄様がついていますので大丈夫です。」
……可愛い。アリシアは本当に嬉しい事を言ってくれる。
「ええ、私が必ずアリシアを守るわ。」
可愛いアリシアに変な虫が寄り付かないように、頑張らないと。
「うぅ…何だか緊張してきました。」
無事に到着し、今は会場の前。
セシルにエスコートされつつも、ぎこちないのは緊張のせいだろう。
「大丈夫よ。私の腕も貸してあげるから。」
「お姉様…」
私の腕を掴むアリシアの手は少し冷たく、私まで少し緊張してきた。
「フローレス公爵ならびにご夫人、ご子息、ご令嬢のご到着です。」
一呼吸して、会場へと足を踏み入れた。




