144 悪役令嬢と義妹の想い。
エリオットと応接室へ向かうと、アリシアとエリーゼもやって来て四人でお茶をした。
エリーゼは、相当ストレスが溜まっていたようで、「アリシアと会ったことで元気になって良かった。」とエリオットが言っていた。
エリーゼもだけど、アリシアも屋敷に籠りっきりで退屈していただろうし、良い息抜きになったと思う。
ブライス家の迎えの馬車が到着し、アリシアと二人を見送った。
部屋へ戻ろうとすると、アリシアに袖を引かれた。
「どうしたの?」
「お姉様!!その…お話したいことが沢山あるので、今晩はお姉様のお部屋で一緒に……」
最初は強かった語気が、みるみると弱くなって、モジモジと恥ずかしそうにしている。
「ふふっ、一緒に寝ましょうか。」
「はい!!」
アリシアもまだまだ甘えん坊で可愛いな。
夜になって、枕を抱えたアリシアが私の部屋にやって来た。
「えへへ、お姉様のベッドで眠るのは、久しぶりです。」
眠るには少し早いため、二人でベッドの上に座っている。
「アリシアの話したいことって何?」
社交界デビューも近づいてきて、不安になってきたのかな?
「そうでした。……お姉様、お姉様は……」
さっきまで、楽しそうに笑っていたのに、不安そうな顔で私を見つめてくる。
「どうしたの?」
私はアリシアの手を撫でる。
「…お姉様は本当に、カイル様と結婚されるんですか?」
「え!?」
何でそんなことを?
やっぱり、アリシアはカイルのことを好きになったとか?
「…エリーゼが言っていたんです。婚約者がいる方は、十八歳ぐらいで結婚する人が多いと……」
…知らなかった。言われてみれば、ステラもそろそろ結婚するかも的なことを話していたけど…
でも、私はまだ……
「大丈夫よ。まだ、結婚はしないわ」
私が死なないとは限らないし……
「…そうですよね。良かったぁ」
これはどっちなんだろう。私が結婚するのが寂しいのか、カイルと私が結婚することが嫌なのか。
「アリシアは、好きな人いないの?」
「私はお姉様のことが大好きです。」
「ありがとう。でも、そうではなくて…」
今まで、それなりにお茶会とかに参加してきたわけだし、カイル達以外の男性とも話しているのを見かけたりもした。
「?」
アリシアはキョトンとした顔で、小首を傾げた。
この感じだと、本当に好きな男性はいなさそうだな。
「えっと、エリーゼとはこういう話はしないの?」
エリーゼも可愛いし、公爵令嬢だから引く手数多だろうな。
「エリーゼは「私に見合う男性がいないの。私には一国の王子様とかでないと」と言っていたので、カイル様を勧めてみたんですが、「タイプじゃないから嫌っ!!」って…」
「ふふっ、エリーゼらしいわね」
「因みに、私もカイル様は嫌なので、エリーゼとは気が合うんですよね」
アリシアは、ほわほわとした口調でそう言った。
小説では結ばれるはずの二人が…私が変えてしまったのは分かるけど、人の想いまで変わってしまうのか。
それにしても、カイルほどのイケメンが嫌だなんて、二人は外見ではなく中身が重要な感じかな?
「アリシアは外見よりも、中身を重視するのね」
「うーん、どうでしょう。私はお姉様の全てが大好きなので、深く考えたことはないです。」
……あれ?今の流れで、何故私のことを?
「いえ、私のことではなくて…カイル様のことよ。」
「…カイル様は外見がどうこうではなく、性格が苦手です。」
「そっか…」
少し意地悪なところもあるけど、優しくて良い子なんだけどな。
「まさか、お姉様はカイル様のお顔がお好きなんですか?駄目ですよ!!お顔で選ぶとろくなことがないと私、本で読みましたから。」
アリシアに肩を掴まれて揺さぶられている。
「アリシアっ、落ち着いて…」
「お姉様、ごめんなさい。お姉様がカイル様に取られると思ったら…」
アリシアは一呼吸置いて、ようやく落ち着いた。
そっか、私が取られると思って……
「アリシアは本当に可愛いわね」
「きゃっ、お姉様」
私は思わずアリシアを抱きしめた。
こんなに可愛いアリシアに婚約者ができたら、私はその相手を許せるだろうか。
「そろそろ寝ましょうか」
私達は布団に入り、灯りを消した。
「……お姉様?」
「なあに?」
アリシアが温かくて、うとうとしてきた。
「お姉様は、ずっと私のお姉様でいてくれますか?」
私の手をギュッと握ったアリシアの表情はよく分からないけど、寂しそうな顔をしているんだろうな。
「ええ、もちろんよ」
仮に誰かと結婚したとしても、アリシアが私の大切な妹であることは変わらない。
初めて会ったあの日から、この子を大切にしようと決めたんだもの。




