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202/208

141 悪役令嬢とカイルのお願い。

街での一件から、三日経った。

報告したいことがあるからと、カイルがやって来た。


「ハンスだけど、調査を進めるため一時的にだけど、私の近衛にすることにしたよ」

応接室に入って、早々にカイルが口を開いた。

ハンスは収容されてないのか……少しホッとした。

調査って、私の事を殺そうとしている、真の黒幕をだよね。

ハンスが依頼した内容を知っていた上で、ハンスが支払う金額よりも多く払って、私を殺すように依頼したのかな?


「片がつきそうと言ったのに、こんなことになってしまってごめんね」

カイルが申し訳なさそうに言った。

「カイルが悪いわけじゃないのだから、謝らないで」

ハンスが男達に頼った要因は、カイルと私の関係に思うところがあったからだろうけど、カイルが私のために色々と動いてくれていたのを私は知っている。

「私の婚約者は本当に優しいね」

そう言ったカイルは、立ち上がり向かいに座っていた私の隣に座ってきた。


「ところで、覚えているよね?何でもお願いを聞いてくれるって言っていたの」

そういえば、そんな約束をしていたな。

「ええ、私にできることなら」

男装をすることになるのかな?

アンナ達に用意してもらわないと。

「それなら……抱きしめてもいいかな?」

抱きしめ……ん?そんなことでいいの?

今更、お願いしてまですることなのかとも思うけど。

そっか、ハグはストレスを軽減させるって言うし、カイルも疲れているのか。

「……どうぞ」

私はそう言って、抱きしめられるのを待っているのに、中々来ない。

「うーん。それも良いけど、パトリシアから来てほしいな」

私からって……いつも抱きしめられる側だから、私からと言われても。

いや、アリシアが普段やっているんだ、私にもできるはず。

それに、約束したわけだから仕方ない。

「…こ、これで良い?」

私は羞恥心に耐えながら、カイルに抱きついた。

思っていたよりも、ずっと恥ずかしい。

「……」

カイルの反応がない。もしかして、違った?

「カイル?」

恐る恐るカイルの顔を見上げると、カイルの顔は真っ赤に染まっていた。

自分からお願いしたのに、まさか照れてるの?

いや、普段恥ずかしげもなく、歯の浮くようなセリフを言うカイルが、こんな事で照れるわけがない。

となると……発熱?

ここ何日か忙しくしていたみたいだし、疲れが取れてないのかも。

「パトリシア!?」

私はカイルから少し離れて、頬に触れた。

やっぱり、頬が少し熱い。

「その…嬉しいけど、私は……」

「あれ?でも、熱はないのね」

カイルのおでこと自分のおでこを合わせるも、頬に比べたらそこまで熱くなかった。

「……パトリシア」

カイルに肩を掴まれて、座らさせられた。

「どうしたの?具合悪い?」

「具合?ああ、そういうことね」

そういうこととは?

「パトリシアは全然分かってないね。こんなに可愛い婚約者に抱きつかれて、平静でいられるわけがないでしょ」

ということは……

「本当に照れていたの?」

「……はっきり言うね。そうだよ、まったく人の気も知らないで」

カイルが私の肩に頭を乗せた。

「ふふっ、カイルも照れたりするのね。なんか可愛いわね」

セシルもいつの間にか、手を繋いだりお昼寝するのを恥ずかしがるようになったな。

少し寂しさもあるけど、これが思春期ってやつかな?


「……」

私の肩からカイルの頭が離れると、カイルの手が私の口を覆った。

「ふぁいふ(カイル)?」

カイルの顔が近づいてきて、私は思わず目を閉じる。

顔にカイルの髪がかかり、少しくすぐったくて私は薄目を開けた。

カイルは、私の口を覆った自分の手にキスをした。

「あまり煽ると、次は本当に唇にするよ」

「なっ……」

「ふふ、パトリシア。顔が赤いけど、どうしたの?」

分かってて、言っているな。

「す、少し暑いみたい。外の空気を吸ってく――」

「じっとして、熱を測ってあげる」

立ち上がろうとした私はまたも、肩を掴まれて、座らさせられた。

「熱はないみたいだけど…あれ?さっきよりも顔が赤いね」

カイルは私がしたように、おでこを合わせてきた。

まさか、仕返しのつもり?

さっきは私が抱きついただけで、顔を真っ赤にさせていたのに……

「パトリシアは本当に可愛いね」

そう言って、満面の笑みを浮かべたカイルは上機嫌で帰っていった。



「姉さん、カイル様は帰ったの?」

「セシル……」

私は見送りはせずに、応接室にいたが部屋を出るとセシルがいた。

「わっ、ちょっ姉さん!?」

「少し疲れてしまって……」

セシルに抱きついた、カイルのせいで疲れてしまった。

「……姉さん」

私の背中に、セシルの手が回ってきた。

「ありがとう、セシルおかげで少し落ち着いたわ」

ハグに本当にストレス軽減の効果があるとは。




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