↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
182/215

ある日のフローレス兄妹

姉さんに、アリシアのダンスの練習相手を任せるようになってから、アリシアが、やたらと僕の予定を聞いてくるようになった。

今日は、散々足を踏まれた仕返しに、少し意地悪をしようと思う。


僕はアリシアに、今日は予定があると嘘をついて、アリシアが、待っている部屋の扉を開けた。

「お姉様、お待ちして……げっ、何でお兄様が?」

キラキラとした瞳から、一瞬で光が消えて、露骨に不快そうな顔をした。

「姉さんに任せっきりもよくないからね」

姉さんは優しいから、僕に気を使って、アリシアの練習相手を名乗り出てくれた。

「それはそうですが、それなら前もって言ってくれても良かったじゃないですか、お姉様が来てくれると期待していたのに…」

「言ってしまったら、お前の残念そうな顔が見れないだろ」

見られたのは、残念そうな顔ではなかったけど…

「お兄様って、良い性格していますね」

「お前にだけは言われたくない」


姉さんとの練習の成果か、今のところは足を踏まれていない。

「お兄様、そのピアスは…」

「ああ、姉さんとおそろいでつけてるんだ」

「やっぱり……それ、引き千切って良いですか?」

踊っている途中で、アリシアは僕の左耳に手を伸ばそうとしてきた。

「あっ、姉さんだ」

「お姉様!?違うんです、今のは……」

アリシアは焦った表情で、慌てて扉を見た。

姉さんなんて、来てはいないのに。

「私を騙したんですか?」

アリシアがヒールの部分で、足を踏んできた。

「痛っ、お前……姉さんだ」

「ふふん、その手には乗りませんよ」

いや、今回は冗談ではない。

「セシル、大丈夫?」

「お、おおお姉様!?違うんです」

本当に、姉さんがいることに気づいたアリシアは困惑している。

「アリシア、落ち着いて」

姉さんはアリシアに近づいて、なだめている。

「姉さんは、どうしてここに?」

今日は僕が行くからと、伝えておいたのに。

「二人の練習している所が見たくて、来ちゃった」

可愛い…でも、普段の練習風景はとても姉さんに見せられるものではない。

「アリシア、大丈夫よ。私との練習のときは一度も踏まなかったじゃない。久しぶりに、セシルと踊ったから踏んでしまっただけよ」

姉さんは、アリシアが誤って僕の足を踏んだのだと思っているようで、アリシアを慰めている。

「お姉様…」

アリシアは、姉さんに抱きしめられて、恍惚とした表情をしている。

僕と目が合った一瞬で、したり顔に変わったけど。


「それにしても、二人は本当に仲が良いわね」

「「全然良くないよ(です)」」

「ふふっ、喧嘩するほど仲が良いって本当ね」

否定をしているのに、姉さんは楽しそうに笑っている。

考えてみると、姉さんは、僕とカイル様が揉めていても、微笑ましいものを見るような目をしていた。それも仲が良いと思って見ていたのか。

「私は、二人に叱られるばかりで、喧嘩することなんてないから、少し羨ましいなって…」

姉さんは、そんな事を気にして…

「姉さんは、すぐに反省して謝ってくれるから、喧嘩にならないんだよ。アリシアは言い返してくるから、喧嘩になってしまうけど」

「言い返すのではなく、正当な反論です」

姉さんの前だからか、アリシアは頬を膨らませてあざとく怒っている。

たまに僕も煽るときはあるが、そもそもアリシアの沸点が低過ぎるだけな気もする。

「なるほど、反論…」

姉さんは真面目な顔をしてそう言った。姉さんに余計な事を言ってしまった気がする。



「お姉様は当日、カイル様と踊るんですか?」

「ええ、一応婚約者だから、そうなると思うけど」

一応…カイル様が聞いたら、ショックを受けそうだ。

今回は、エリオット様もエリーゼのエスコートがあるだろうし、姉さんが心配だ。

「姉さん、カイル様と二人きりならないように、気をつけてね」

アリシアも激しく、頷いている。

「アリシアは初めての社交界だものね、できる限り、二人の近くにいるつもりだから、大丈夫よ」

そういう事では、ないんだけど…多分、分かっていないんだろうな。

でも、カイル様にはこの間のことを話しておかないと、ナイセル伯爵令嬢はパトリックの正体が、姉さんだと気づいたはずだ。今後、何かしらの形で、接触してくる可能性がありそうだ。


それに、久しぶりに剣の稽古もつけてもらいたい。

あの日、姉さんは迫ってきた男を投げ飛ばした。

細い腕で、相手の勢いを利用してというのは分かっているけど、咄嗟に動ける姉さんはすごい。

姉さんを護るには、もっと強くならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。