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126 悪役令嬢とエイミー=ナイセル

セシルとの予定も合い、今日は二人で貴族街に来ている。

何気に変装なしで来るのは今回が初めてだ。


「姉さんもドレスを新調するんだよね?」

「ええ、アリシアとおそろいなの。でも、着こなせる自信はないのだけどね」

私のドレスはピンク色に黄色の装飾品をつけたものになるようだが、デザインによっては似合わないかもしれない。

「姉さんなら、どんな服でも着こなせるよ」

「そうだと良いのだけど…」

「ねぇ…僕も、何かおそろいにしたいんだけど」

アリシアとおそろいにしたことで、ヤキモチ妬いちゃったのかな?可愛いな。

「もちろん、何にする?」

「とりあえず、ここ入ろ」

特に目的もなく歩いてたが、セシルは宝飾店を指差して止まった。

アリシアとおそろいのブローチを買った…そして、エレノアとセシルが二人で来ていたお店だ。

そういえば、エレノアは想い人に何をプレゼントしたんだろう。


宝飾店に入ると、セシルは見たいものが決まっているようで、一つのショーケースへ真っ直ぐに向かった。

「姉さんは、ピアスを開ける予定ある?」

そう言って、私の髪を耳にかけた。

セシルが足を止めたショーケースにはピアスが並んでいた。

「今のところはないけど…」

開けたことないから少し怖いけど、イヤリングもサイズとか重さによっては耳が痛くなるんだよね。

「一緒に開けない?」

セシルが耳たぶに触れてきて、くすぐったい。

そっか、セシルはピアスをおそろいにしたかったのか。

それなら、断るわけにはいかないな。

「ええ、いいわよ」

「良かった、姉さんに似合いそうなのがあったんだけど、ピアスだったから贈るか迷っていたんだ」

エレノアと一緒に来たときに、見つけてくれたのかな?

「このピアスなんだけど」

「綺麗…」

光の加減で、青色にも緑色にも見える石のついたピアスだ。

「これを二人で片耳につけたいんだけど、駄目かな?」

おそろいってそういう事か、デザイン的にも男女両方使えそうだから、二人でつけられそうだ。

「ううん、一緒につけましょう」

問題は開けるときだ。ピアッサーなら一瞬で開けられるだろうけど、そんな物この世界には存在しない。

まあ、矢がかすった時の痛みに比べたら大したことないか。


「次はどこ行こっか」

私達はピアスを購入して、宝飾店を出た。

本当は私が支払おうとしたが、セシルがすでに支払いを終わらせていた。

弟に支払わせてしまうなんて、情けないな。

「セシルの行きたい所でいいわよ」

セシルの行きたいお店で、今度は私がお金を払おう。

「カフェにでも入ろっか」

「そうね…」

あれ?あそこにいるのって…

「どうしたの?」

「ナイセル伯爵令嬢が」

「ああ、ほぼ毎日いるみたいだよ。この前はアリシアに絡んできたみたいだし、見つかる前に行こう」

ほぼ毎日!?そういえば、何故か男装した私を探しているんだっけ?

「アリシアは婚約者はいるか聞かれたのよね?」

アリシアとパトリックが婚約関係だと勘違いしていたと仮定しても、それが分かっても探しているのは、何でなんだろう。

「ん?姉さん、何でアリシアがナイセル伯爵令嬢に婚約者はいるか聞かれたって知ってるの?」

やばい、口が滑った。誤魔化さないと…

「え〜と…その……えへっ」

駄目だ、全然思いつかなかった。

「可愛い顔して誤魔化さない!ちゃんと説明してもらうよ」

「…セシルがエレノアと出かけるって聞いて、気になって…後をつけました。ごめんなさい」

こんな間抜けな理由でバレるなんて…

「一人で?」

エリオット達は私が巻き込んでしまったから、名前を出すわけには…

「正直に話してくれないと怒るよ」

「エリオット達と四人で行きました」

ごめん、エリオット達…でも、普段優しいセシルが、私のせいで不機嫌そうにしているのが申し訳なくて…

「はぁ…まだ、四人だから良かったけど…それに、わざわざ後をつけなくても、僕に直接聞いてくれたら話したのに」

セシルはムッとした顔をしてそう言った。

「じゃあ、カフェでアリシア達と合流した後何を話したの?」

「誤魔化そうとしたから、もう教えない」

顔をプイッと背けてしまった。

「どうしても?」

「教えません」

セシルに肩を掴まれて、後ろを向けさせられた。


「やめてください!!」

今の声、私は声のした方向に顔を向けた。

声の正体はナイセル伯爵令嬢だ。あからさまに達の悪そうな男に、腕を掴まれている。

真っ昼間とはいえ、一人歩きをしている令嬢は目立つだろう。

助けに行かないと、私はナイセル伯爵令嬢の所へ走った

「姉さん、ちょっと…」


「やめて…離して」

「エイミー待たせてしまってごめんなさい」

「え?」

突然現れて、合わせろとは言わないけど…

「なんだ?お嬢ちゃんの連れか?ちょうど良かった、こっちももう一人…」

嘘、もう一人いたの?

「もう一人って、この男?」

セシルが男の腕を捻りながら現れた。男は「痛っだだ」と悶えている。

「なっ!?」

「騎士も呼んであるから、大人しくしていた方が良いよ」

セシルぅ…よくあの短時間で、本当に賢い子だ。

男は、セシルの言葉を聞いて項垂れた。

ホッとしていると、男は顔を上げたかと思ったら、ナイセル伯爵令嬢に勢い良く迫ってきた。


「グエッ」

男は苦しげな声を上げて、地面に伏せている。

私が投げ飛ばしてしまったせいで…

迫ってきた男の腕を掴み、足をかけて勢いに任せたが、ちゃんとできた。

教わった護身術が役に立って良かった。

「姉さん、大丈夫!?」

「ええ、私は大丈夫」

私よりも、ナイセル伯爵令嬢の方が怖い思いをしたわけだから。


セシルが呼んでくれた騎士が来て、男達は連れて行かれた。

「突然、名前で呼んでしまってごめんなさい」

「いえ、ありがとうございました。パトリシア様、セシル様」

カタカタと震えている。よっぽど、怖かったんだろう。

「もう大丈夫、怖かったよね」

私は彼女を抱き締めて、背中をさする。

「……」

声を震わせて、泣いてしまった。

私は落ち着くまで、背中をさすってあげた。


「取り乱してしまい、すみませんでした」

私から離れたナイセル伯爵令嬢は、赤くなった目元を隠すように俯いている。

「エイミー様」

低い男性の声が聞こえてきた。

「迎えが来たようなので、失礼いたします。本当にありがとうございました」

「使用人や護衛をつけないと駄目ですよ」

「はい。……あの、パトリシア様」

不安そうな表情で、私の顔をチラチラと見ている。

「何ですか?」

「いえ、何でもありません」

そう言って、走り去っていった。

何だったんだろう。





エイミー=ナイセルは馬車に揺られながら、泣き腫らした目を冷やしている。

「もしかして、パトリック様の正体って…パトリシア様!?」

男を投げ飛ばす事ができるなら、女性一人軽々しく持ち上げられてしまうだろう。

「どうしましょう。私…」




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