120 悪役令嬢は帰国する。
ルミネージュ王国を出て、今はイリース王国の王都まで近づいている。
ルミネージュ王城を出る前に、両陛下へ挨拶に伺った。その際に、クラーク王子の件で謝られてしまった。
「愚息がパトリシア嬢に失礼な事を…」
「本当にごめんなさいね」
両陛下は申し訳なさそうな顔をしていた。
私はフローラ王女の話を聞いていたから、もう何とも思ってはいないが、親や妹に謝罪をさせるのはいかがなものか…と思ってしまった。
でも、第一印象はあまり良くなかったフローラ王女とお話できるきっかけにもなったのかな?とも思った。
行きは長く感じたが旅路も、帰りはあっという間だった。
そういえば、何か忘れているような。何だっけ?……
「あ!」
「お姉様?どうかされました?」
「フローラ王女とお話したいことがあったのに、忘れてたわ」
訓練場で見た時に、剣を奮う姿がカッコよかったから、そのお話をしたかったのに…
「シャルル様の婚約者になられた方なら、また会えますわ」
「それもそうね」
エレノアに言われた通り、また会う機会があるだろう。
フローラ王女も最終的には、シャルルとの婚約も満更でもなさそうだったし
「この子が、今のカイル様のようなお顔に育つ過程を楽しむのも悪くはないですわね」
なんて言っていたぐらいだ。
お父様や母上、アンナ達は元気にしているだろうか。一ヶ月半の長旅ということもあって、私達が不在の間、アンナ達には長期休暇が与えられたようだけど、ゆっくりできただろうか。
今年はアリシアの社交界デビューもあるし、私達が帰ってきたら、また忙しくなるだろう。
私はアリシアに色を選んでもらったけど、アリシアは何色のドレスを着るのかな?
普段から暖色系のドレスを好んで着ているから、暖色系かな?何を着ても可愛いだろうから、楽しみだな。
今年はエリーゼもいるから、二人を不埒な事を考える男から守ってあげないと。
王宮に着くと、迎えの馬車がすでに到着していた。
「やっと、姉さんと同じ馬車に乗れた」
荷物を積み終わり、慣れ親しんだフローレス家の馬車に乗るとセシルが嬉しい事を言ってくれた。
それなりに長い付き合いとはいえ、年上しかいなかった中で寂しかったのかもしれない。
私はセシルの頭を撫でた。
「お兄様ずるいです。お姉様、私の事もなでなでしてください」
「向かい側なんだから難しいだろ」
「お兄様が私と代わってくれれば良いだけの話です」
「お前は馬車の中でずっと一緒だっただろ」
「アリシア様立ち上がると危ないんで、セシル様も落ち着いて」
二人が揉めている中で申し訳ないけど、日常が戻ってきたような気がして、嬉しさで笑いが込み上げてきた。
「アリシアのせいで、姉さんに笑われているだろ」
「違います。お兄様のせいです」
「まあまあ、二人とも落ち着いて…」
でも、そろそろ仲裁しないと
「ふふっ、ダリルが困っているでしょ。仲良くしましょう」
私がそう言うと、セシルとアリシアは顔を見合わせた。
「お姉様がそうおっしゃるなら、今回はお兄様に譲ってあげます」
アリシアは少しむくれながら言った。
屋敷に戻ったら、セシルも忙しくなるだろうから、甘えてもらえるうちは甘やかしてあげたい。
そういえば、屋敷に戻ったらカイルにプレゼントするあみぐるみを作らないといけないことを忘れていた。




