114 悪役令嬢とルミネージュの王女
フローラ王女に、何故か決闘を申し込まれてしまい、困惑していたところ、フローラ王女を追ってきたのであろう、私達と年の変わらない青年がやって来た。
「フローラ様、突然いなくなったと思ったら…って、カイル王太子殿下とフローレス公爵令嬢!?フローラ様、何故応接室へお通しされなかったのですか?」
青年は私とカイルをチラチラと見ながら、フローラ王女と話している。
私達は青年の案内で応接室に通された。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。私はフローラ第二王女殿下の護衛をしています。ウォルトと申します」
青年…改め、ウォルトは挨拶をしたあと、扉の近くに下がった。
「で、決闘のお話ですが…」
「決闘!?誰と誰がですか?」
フローラ王女が話を切り出すも、ウォルトによって止められた。
「私とパトリシア様ですわ」
「何故そのような話に!?」
「それはもちろん、カイル様と結婚するためですわ」
自信満々に答えるフローラ王女と困惑を隠せないウォルトを横目に、カイルは優雅にお茶を飲んでいる。
「フローラ様のご婚約者様はシャルル殿下だと、何度もお伝えいたしましたよね」
ウォルトはため息交じりに、そう言った。
苦労してるんだろうな。
「ですが、私は十二歳でしてよ。六歳も下なんてありえないですわ」
まあ、フローラ王女の気持ちも分かる。大人になってからの六歳差と、子供の時の六歳差は全然違う。
「シャルルは誕生日を迎えていないので、正確には五歳差ですよ」
そこは割とどうでもいいんじゃ…
「それに、私はフローラ王女より六歳上ですが、そこは気にしないのですか?」
カイルは気持ち優しげな口調で、そう言った。
「恋に年の差なんて関係ありませんわ」
「それはお互い想い合っていないと、成立しないのでは?」
「カイル様が私のことを、好きになってくだされば成立しますわ」
フローラ王女はそんなにカイルの事が…
カイルは王太子だから、ルミネージュの王配になることはないけど、もしそうなったら…起こるかもしれない未来を完全に変えられるのでは?
「…パトリシア」
カイルに呼ばれて、顔を向けるとカイルの手が私の頬に触れて、顔が近づいてきた。
え?待って、嘘でしょ…
「この通り、私はパトリシアを愛しているので、パトリシア以外とは結婚をするつもりはありませんので」
びっくりした…本当にキスされるかと思った。寸止めだったけど…顔が熱くなってきた。
「人前で何するんですか」
ふりとはいえ、何でこんなところでそんなことを…
「ふふ、パトリシアは可愛いね。人前じゃなかったら良いのかな?」
フローラ王女を見ると、顔を真っ赤にしていた。そして、ウォルトも…
「こっここ、婚前にそのようなこと、破廉恥です!!」
「婚前でも、このくらいは普通ですよ。ね、パトリシア」
カイルに肩を寄せられる。ふりだったのに、何故当然のように答えているんだ。
「……やっぱり、許せませんわ。パトリシア様、手袋を拾った時点で、決闘は成立しているんですのよ」
拾ったも何も、投げつけられたのをキャッチしただけだ。
「決闘の内容は、剣術で…まあ、剣も握ったことのないであろうパトリシア様には、私が少し手加減をして差し上げますわ。ですが、カイル様を手に入れるのは私ですわ」
この子が次期女王で本当に大丈夫なのだろうか…友好国なのに、そんな事をしたら今後の関係に亀裂が入る可能性もあるだろうに…
「お言葉ですが、フローラ王女。カイル様は物ではありません。それに決闘とはいえ、王女様に刃を向けることはできません」
私がそう言うと、ウォルトはウンウンと頷いていた。
「……」
フローラ王女は黙ってしまった。どうしよう…不敬で捕まるかも、カイル助けて…
私は思わず、カイルの服を掴むと掴んでいた手を握られた。
「因みに、フローラ王女は私のどこを気に入っていただけたのでしょう」
聞いちゃうんだ…
「…お顔」
「そうですか、それならシャルルは私とそっくりなので、結婚する頃には今の私と変わらない容姿になっていると思いますよ」
確かに、シャルルの容姿はカイルとそっくりだ。性格はだいぶ違うけど、将来的にはフローラ王女好みの容姿になること間違いなしだ。
「ですが、カイル様はお顔だけでなく、…凛々しくてお優しくて…欠点のない完璧なところも素敵で…」
初対面のはずだけど、どこからそんな情報が?
欠点のない?完璧な?まあ、私が知らないだけで、他所ではそう思われるように振る舞っているのだろうな。
以外と打たれ弱くて、すぐに落ち込んだり、拗ねたりしてる気がするんだけど
「逆にお伺いしますが、パトリシア様は、カイル様のどこが好きなんです?」
何でそういう流れに…下手なことを言って怒らせるわけにはいかないし、かといって優しいとかだと、誰でも言えるとか言われそうだ。
「えーっと……可愛いところですかね?」
「「「可愛い!?」」」
ウォルトまで声が重なった。
「パトリシア、カッコいいの間違えでは?」
それを自分で言うところは少し鼻につく。
「間違ってないですよ。少なくとも、私といるときは子供みたいで可愛らしいですよ」
以外と甘えん坊だし、シャルルが生まれたり、王太子になったことで、甘えられなくなってしまったのだろう。
「可愛い…まあいいか…フローラ王女、ということなので、私はパトリシアとの婚約を解消するつもりはありませんし、決闘をさせるつもりもありません」
カイルがそう言うと「分かりました」とフローラ王女が小さく呟いた。
あれ?国同士の関係性を考えた結果、千載一遇のチャンスを逃してしまったような……




