113 悪役令嬢とルミネージュ王家
宿に一泊していよいよ、王都へ向かう。
思っていた通り、王都へ近づくにつれて寒さが増している。
「お姉様、私とくっついていればあったかいですよ」
そう言って、アリシアは私の腕にギュッと抱きついてきた。
「ありがとう、アリシア。とてもあったかいわ」
アリシアがついてきてくれて、本当に良かった。でないと今頃凍え死んでいたかもしれない。
吹雪いてはいないものの、粉状の雪から水分を多く含んだ雪に変わっていった。
雪遊びができるくらいには積もっているんだろうな。と思いつつ、皆とっくにそんなことは卒業している年齢になっていることに、一人ノスタルジーになっていると、「そろそろ着きますよ」と御者の声が聞こえた。
灰色のレンガでできた立派な城壁に囲まれていて、馬車の中からではお城は見えない。
城壁をくぐり、馬車が停まると私達は馬車から降りた。
そこには、イリース王宮と変わらないぐらいの大きさのお城が建っていた。
ルミネージュ王国の騎士団達に出迎えられ、私達はお城の中に入った。
見るからに高そうな壺や、美しい絵画の飾られた廊下を抜けると、重厚な扉が見えてきた。
「申し訳ございませんが、両陛下への謁見はカイル殿下とパトリシア嬢のみとさせていただきます。臣下、使用人の方々はグレンダという騎士が庭園などをご案内させていただきます」
壮年の騎士がそう言うと、私達の後ろから、グレンダがやって来た。
「先日もお会いしたかと思いますが、グレンダと申します。それでは、ご案内いたします」
アリシア達は行ってしまい、私は急に緊張をしてきた。
「大丈夫、お二人共お優しい方だから」
カイルが私の手を握った。
そうか、カイルは会ったことがあるのか、だから緊張なんてしていないのか
扉が開くと同時に、カイルの手が離れた。
「ルミネージュ国王陛下、本日はお招きいただきありがとうございます」
カイルがお辞儀をするのに合わせて、私もスカートをつまんで、カーテシーをした。
「顔を上げてください」
国王陛下は穏やかな声色でそう言った。私は入ってきたとき、緊張で顔を見れていなかったが、玉座には、優しげな顔をした、寒空のような灰色がかった青い髪に金色の瞳の初老の男性とプラチナブロンドに白銀の瞳の年齢不詳の女性が座っていた。
「カイル殿下、お久しぶりですね。そちらのレディはご自慢のご婚約者かな?」
「お初にお目にかかります。パトリシアと申します」
「まあ、可愛らしい。カイル殿下がご執心になるのも分かりますわ」
ご執心?カイルが?
「はい、自慢の婚約者です」
なるほど、シャルルの婚約もあるしそういう設定なのか
「お部屋はご用意してありますので、今日はゆっくりお休みください」
王妃陛下はそう言って微笑んだ。
謁見の間から出て、ようやく息ができた気がする。
でも、カイルの言っていた通り優しそうな人達だったな。
「私達も城内を案内してもらおうか」
カイルが、私に手を差し出してきた。
私がその手を取ろうとした瞬間。
「お会いしたかったですわ、カイル様」
ドタバタという足音と共に女の子がやって来た。
「私はルミネージュ王国第二王女。フローラ=ルネ=フリージアですわ」
寒空のような灰色がかった青い髪に、雪の様に白い肌と白銀の瞳の美少女は身だしなみを整えた後、美しい礼をした。
「お初にお目にかかります。イリース王国から参りました。カイル=ルーク=アルフォードです」
カイルは特に驚いた様子はなく、平然とした様子で挨拶をした。私もカイルに続いて挨拶をする。
「カイル殿下の婚約者で、フローレス公爵家が娘。パトリシア=フローレスと申します」
「貴方が、カイル様の婚約者ね」
身長は私より低いが、明らかに見下されているような視線を向けられている。
「ふーん…大したことなさそうね。私の方が可愛いしスタイル……も」
視線を顔から体へと向けられた。
「まさか貴方、身体でカイル様を籠絡して」
最近の子供は難しい言葉を知っているなと思いつつ、とんでもない誤解をされるのは非常に困る。
「私はそんなこと…」
「私がパトリシアを好きになって、婚約を申し込んだのですよ。それに好きになったのは五歳の頃ですから、そのような事実はありません」
私の言葉を遮って、カイルが否定してくれた。
「…そんな前から」
フローラ王女は落胆の表情を浮かべた。初対面のようだけ、カイルに一目惚れしたのかな?
「フローラ王女?」
カイルが心配そうに声をかける。
「…せん……」
「え?」
「認めませんわ!!カイル様と結婚するのはこの私ですわ」
フローラ王女は声を荒らげて、手袋を外すと私に投げつけてきた。
「カイル様を賭けて、私と決闘していただきます!!」
カイルを賭けて決闘?……何故!?




