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106 悪役令嬢とおそろい

社交シーズンに入り、夜会に参加するために準備をしている。

カイルから贈られてきたドレスを着せてもらい、今はマリーに髪型を整えてもらっている。


「やっぱりパトリシア様は、そういったお色も良く似合いますね」

マリーは楽しそうに私の髪を梳かしている。

カイルから贈られてきたドレスは、オフショルダーにふんわりとしたスカートが可愛らしい、淡い紫色のドレスだ。


「じゃ~ん、今日は愛らしさ溢れるサイド編みおろしにしてみました」

「とてもお似合いです。マリー腕を上げたわね」

「ですが、何か足りないような…」

私はこれで十分な気がするけど、レーネは腕を組んで悩ましげな顔をしている。

「うーん…そうですね、あ!お花を刺したら可愛いんじゃ」

「…そうね、レーネ頼めるかしら?」

「すぐに摘んできます」

レーネが部屋を出ようと、扉を開けると「痛っ」と言う声が聞こえてきた。

「申し訳ありま…リックでしたか」

謝罪の言葉を言いかけたレーネだったが、リックだと分かるとそのまま部屋を出て行った。

「俺だとしても、ちゃんと謝ってけよ。ったく…ってお嬢何だその格好」

リックがレーネから私へ視線を移すと、目を見開いてそう言った。

その格好って…着替えの途中ではないし、アンナ達が着替えさせてくれたから、着方を間違えているわけでもないはず

「…嫁入り前の女がする格好じゃないだろ」

「へ?」

私は思わず間抜けな声を出してしまった。

夜会で着るようなドレスはどれもこんな感じだと思うんだけど、それに胸元が開いているわけでもないし

「何か羽織るものを…風邪引いちまうんじゃ」

リックが珍しくオロオロしている。

「リック、落ち着いて。そもそもあなたはセシル様の従者でしょ、何故ここに来たの?」

「坊っちゃんの準備は整っている。それよりお嬢に羽織るものを」

「会場へ入るまでは、ローブを着るから大丈夫よ」

私がそう言うと、リックは少し落ち着いた。 



「とてもお似合いです」

レーネが摘んできてくれた花を、三つ編み部分に飾ってもらい、準備は整った。

エントランスへ向かおうと、ドアノブに手をかけると

「なぁ、本当にその格好で行くのか?不埒な事を考える奴らもいるだろうし…」

リックはまだ心配しているようだ。

「セシル様もご一緒だし、会場ではカイル様がエスコートされるからリックが心配する必要はないわよ」

アンナが諭しても、リックは心配そうにしていた。



会場まではセシルからエスコートをしてもらい、会場前で待っていたカイルと交代した。

「私が贈ったドレス、とても似合っているよ。すごく可愛い」

「あ、ありがとうございます」

屋敷を出る前に、アリシアとセシルも褒めてくれたけど、皆ストレートに褒めてくれるから少し恥ずかしい。

「照れてる顔も可愛いね」

目を逸らしたが、カイルに顎を持ち上げられ、目を合わさせられる。

「それ以上姉さんに近づかないでください」

セシルが間に入ってくれたおかげで、カイルの手が離れた。


「そろそろだね。パトリシア行こうか」

カイルの腕を掴んで、会場に入った。


すでに集まっていたエレノア達の姿が見えたので、向かう。

「トリシャちゃん、可愛いね。花の妖精かと思ったよ」

「淡い色のドレスも良くお似合いですわ」

「ありがとう。エレノアも綺麗よ」

みんなが褒めてくれるのは、カイルのドレス選びのセンスが良いからだろう。

「それ本物の花?」

「ええ、うちの庭園の花よ。今日は三つ編みだから、エリオットとおそろいね」

「お…おそろい」

エリオットはそう呟いて、何故か口元を手で隠した。

「ずるい、僕もトリシャちゃんとおそろいにしたい」

エリオットを押し退けて、ミシェルが前に来た。

「三つ編みなら、簡単にできるから後でやってあげる」

「本当に?やった、トリシャちゃんありがとう」

子供のようにはしゃぐミシェルを見て、思わず顔がほころぶ。

「髪型をおそろいに…ね。でも、パトリシアの着ているドレスは、私のベストと同じ刺繍が入っているんだよ。それに…」

カイルが私の首のあたりをじっと見つめる。

何?痕は消えたはずだけど

カイルに手を掴まれて、エレノア達と少し離れた所に連れて行かれた。

「何で、ネックレスをつけていないの?私はつけてるのに」

カイルが、むくれたように小声で言ってきた。

ネックレス?贈られてきたのはドレスだけだと聞いていたんだけど…

カイルが、自分の首元からネックレスを見せてきた。

見覚えがあるデザイン、二年前にカイルにあげたネックレスだった。そういえば、色違いのネックレスを貰っていた。

「つい最近まで、ずっと詰襟の服を着ていたので、忘れてました」

それに今日の髪型は編みおろしだから、ネックレスをしていても見えないだろうし

「……今日は仕方ないけど、今度はつけてほしいな」

カイルは少し悲しそうな顔をして、私の頬を突いてきた。


夜会も盛り上がりを見せた頃、私達は隅の方へ集まる。

「はい、出来た」

三つ編みのハーブアップにしたのだけれど、中性的な顔立ちのせいか良く似合っている。

「ありがとうトリシャちゃん」

「喜んでくれて良かった」

「僕も髪…伸ばそうかな」

とセシルが呟いた。セシルも三つ編みにしたいのかな?今の長さでもできないことはなさそうだけど…

「パトリシアの周りはいつも賑やかね」

ステラが婚約者と一緒にやって来た。

「来年はエリーゼとアリシアもいるんだよね」

「今でも騒がしいのに、もっと騒がしくなりそうだね」


今はカイルへの恐怖心も前ほどないし、来年の社交シーズンも問題なく迎えることができるだろう。

まあ、今年の社交シーズンは始まったばかりだけど


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