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お嬢の婚約者

俺はフローレス公爵家の従者になった。セシル坊っちゃん付きの。

そんな俺が気になることはただ一つ、お嬢の婚約者だ。

あのお嬢との婚約を解消したがるなんて、ろくな男じゃないだろう。


お嬢が外出禁止を言い渡されてから、二人の男が来た。俺はなんとなく後をつけた。


一人目は、セシル坊っちゃんと同じぐらいか、それより少し低い背丈の男だ。

お嬢に変な草を持ってきて、喜ばれていた。てっきり、婚約者に対する嫌がらせかと思ったが、違うようで安心した。

会話の内容までは聞こえないが、その男はお嬢の服を脱がせようとしていた。俺は殴り込みに行こうとしたが、男は顔を真っ赤にして後退りをしていた。ただのヘタレのようだ。

お嬢に気があることは分かったが、お嬢とは仲が良さそうだし、婚約者ではなさそうだ。


二人目は、背の高い目つきの悪い男が来た。

その男は何をするでもなく、お嬢とベンチに座って話をしていた。やはり、会話の内容は聞こえないが、その男はお嬢を心配している様子だ。

お嬢もその男と話してから、少し元気になったように見える。

こいつもお嬢に気があるようだが、お嬢は気づいていない。まあ、とりあえず婚約者ではないのは確実だろう。



お嬢の外出禁止が解けた日、本来いるはずではないお嬢が食堂にいた。

何をしているのか聞くと、お嬢ではなくマリーという、お嬢の侍女が答えた。

「パトリシア様はご婚約者様とのデートのために、お料理をされているんです」

楽しそうなマリーとは対象的に、浮かない表情で淡々と手を動かしているお嬢。

とても、デートを楽しみにしているようには見えない。

「行きたくないなら、行かなきゃいいんじゃないか?」

「行きたくないというわけじゃないけど…今回はお礼もしないとだから」

お嬢は困ったように眉をひそめて笑った。

そんな顔をするぐらいなら、行かなければいいだろ。お礼ってそもそも何だよ。……お礼!?


まさか…あの日、お嬢を助けた貴族の男が…


セシル坊っちゃんに、お嬢の婚約者について聞いたが

「僕よりも背が高くて強くて、いけ好かない人」

と言っていた。


強さは知らないが、背は高かった。


お嬢が婚約者とのデートから帰ってきた。行く前の浮かない表情から、憑き物が落ちたように穏やかな表情になっていた。

婚約者から解放されたからなのか、はたまたデートで何かあったのか…


聞けないまま、一週間経った。


そして、今…お嬢はあの日の貴族の男に抱きしめられている。

これは一体どういう状況なんだ。

お嬢の表情は見えないが、男は満面の笑みを浮かべていた。


お嬢が貴族の男は別れてから、男の後をつけてみる。

男は応接室へ向かっているようだ。確か、セシル坊っちゃんのお客が来てるはず…


あれは、アリシア嬢。


「何でいるんですか?そろそろお帰りになられた方がよろしいのでは?」

「私はパトリシアに会いに来ているんだ。君には関係ないよ」

「お姉様はお忙しいんです。カイル様のお相手をする時間なんてありません」

「はいはい、まあ先程まで一緒にいられたから別に構わないけど…」


二人は顔こそ笑っているが、とても仲が良いようには見えない。

あのアリシア嬢が、あんなに警戒しているということは、あれがお嬢の婚約者…



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