98 悪役令嬢は省みる
私達は今、お父様の書斎に呼ばれている。私達というのは、セシルとレーネとダリルだ。因みに、アリシアが来たことは伏せてもらっている。
「何で呼ばれたか、分かっているね」
「はい、お父様」
私とセシルはお父様の向かい側に座っている。私達の後ろにダリルとレーネが立っている。
「カイル様から聞いたよ。セシルの指揮でエイベル子爵邸に行ったんだってね」
バレないとは思ってはいなかったけど、王国騎士団が来てしまった以上お父様の耳に入ってしまってもおかしくはない。
「私が巻き込んでしまったんです。全て私が悪いんです」
私一人ではリック達を救い出すことはできなかったけど、私が言い出したことに協力してくれたセシル達が説教を受けるのは違う。
「全て僕が決めたことなので、姉さん達は悪くありません」
「…セシル」
姉である私が不出来なばかりに…
「あの…」
ダリルが手を挙げる。
「なんだい?」
「パトリシア様とセシル様は俺…私の友人達のために行動してくださいました。罰を与えるなら私一人にお与えください」
「分かった分かった、ここで責任の押し付け合いでもしたら叱るつもりだったけど、うちにはそんな子はいないみたいだね」
お父様は困ったように笑っている。
「今回の件は、君達のおかげで片が付いたよ。でも、勝手な行動したことは褒められたことではないのは分かっているね?」
私達は静かに頷く。どうやら、エイベル子爵達は逮捕されたようだ。
「パトリシアがジェイク=エイベルに自白剤を飲ませたおかげで、あっさり白状したよ」
念のためと飲ませたけど、ちゃんと効果があったようで良かった。…あれ?何で自白剤を飲ませたことを知っているの?あのときはレーネしかいなかったはず
レーネを見ると、目を瞑っている。まあ、レーネは雇い主であるお父様に報告する義務があるから仕方ない。
「セシルもカイル様を通して、王国騎士団を呼ぶなんて良い判断をしたね」
それは私も驚いた、フローレス家の騎士団が来るとばかり思っていたから
「みんなが怪我をしていないようで、本当に良かったよ。カイル様から話を聞いたときは、心臓が止まるかと思ったよ」
お父様は本当に心配をしてくれていたんだ。何だか胸が痛い。
「でも、しっかり反省はしてもらうよ。パトリシアは一週間外出禁止。セシルは僕と一緒に王宮で仕事をしてもらう」
一週間外出禁止か、街には行けないけどそんなに重い罰ではない。むしろ軽すぎる。
私とセシルが返事をすると
「話は終わりだよ。部屋へ戻りなさい」
お父様はいつもと変わらない、優しい表情でそう言った。
ダリルとレーネ、セシルが部屋を出てそれに続こうとすると
「パトリシアは少し残りなさい」
と呼び止められた。
私は再び、お父様と向かい合うかたちでソファに座る。
あの場では穏便に済ませただけで、やっぱり私だけ怒られるのかな?
私が身構えていると、お父様はすくっと立ち上がり、私の近くまで来ると片膝をついて私の両手をギュッと握る。
「パトリシア、君が剣や護身術を習ったのは、自分の身を守るためだったよね?」
確か、剣の稽古をつけてもらいたいと、お願いしたときそう言った気がする。
「はい、お父様」
「それなら、どうして自ら囮になるようなことをしたんだい?」
囮?……私がいつ?もしかして、騎士団が来るまで時間を稼ぐために、男達について行ったことを言っているのか?時間稼ぎをするためで、囮になったつもりはないんだけど…いや、同じなのか……
「それに、カイル様が来なかったら刺されていたかもしれなかったんだってね」
あのときは完全に油断していた。すぐに短剣を構えたとしても、相撃ちになっていたかもしれない。
「…ごめんなさい」
「謝ってほしいわけじゃないよ。誰かの為に動けるのはパトリシアの良い所だからね……ただ、パトリシアに守られた人が、傷ついたパトリシアを見たときにどう思うかをしっかりと考えて欲しいな」
お父様はそれを言うために、私だけ残したのか…
確かに、私は私を心配してついてきてくれたレーネに、余計に心配をかけてしまった。
それに、私は時間を稼ぐからと言って、レーネに子供達を任せた。
もし、あのとき他に仲間がいたら、レーネ達も危険な目に遭ってしまったかもしれないのに、私の考えが足りないばかりにみんなに迷惑をかけてしまった。
私はあのとき、どうすれば良かったんだろう。大人しく騎士団が来るのを待っていれば良かったのかな?ダメだ、考えても分からない。
私が頭を悩ませていると
「今日はもう遅いから、考えるのは明日にしてゆっくり休みなさい」
お父様はそう言って、優しく私の頭を撫でた。
今日は疲れたからもう休もう。




