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94 悪役令嬢は突入する。

私は今、侍女の格好をしている。というのも、私は一応王太子の婚約者だから、狙われるといけないからとセシルの指示で変装をすることになった。

セシルは公爵代理として、エイベル子爵邸に伺うつもりのようだ。

お父様は昨日から、王宮へ仕事に行っていて帰りは夕方になるそうだ。


侍女の服はドレスと違い、軽くて動きやすい。普段は着替えを手伝ってもらうところだが、今回は自分で身支度を整える。髪色も金髪は貴族以外では珍しいようなので、茶髪のウィッグをかぶって隠している。ウィッグは街へ遊びに行くとき用に買っていたものだ。

「お嬢様、準備は整いましたか?」

レーネが私の部屋に迎えに来た。アンナ達へ軽く説明をしたら、レーネに

「私もお供します。それが無理なら、行かせるわけにはいきません」

と言われてしまい。連れて行くことになった。


私はマリーに影武者を頼み、今日は具合が悪いから部屋から出られないということにしてある。アリシアにはカイルが来たときに、足止めをしてもらうようお願いしてある。一応今日は、婚約した日だから今年も来るだろうから


私はレーネに外套を着せてもらい。二人で勝手口から外へ出る。侍女達が買い物へ行くとき使うところなので、カゴを持って不自然にならないようにしている。

セシルは領地の視察ということで先に、正面玄関から出て行った。


「姉さん、こっち」

セシルの声が聞こえ、声の方へ向かうとセシルと二頭の馬を連れたダリルがいた。

「家紋の入った馬車で行ったら、意味がないからね」

そっか、愚かなエイベル子爵もフローレス家の馬車を見たら隠れるなり、逃げるなりするかもしれない。そうなればリック達を救出できなくなる。

セシルはしっかり考えていたのか、私が巻き込んだのに…不甲斐ないな。

「姉さん、はい」

「へ?」

セシルはすでに馬に乗って、私に手を差し出している。馬は二頭しかいないから二人で乗るのか

私はセシルの手を掴むと、そのまま引き上げてもらい、横向きで座る。

「高い、怖い」

これどうやって方向転換とかするの?めちゃくちゃ怖くない?でも、乗っている人の不安は馬にも伝わるって言うよね。でも怖い。

「大丈夫だよ。しっかり掴まっててね」

セシルの腰に手を回してぎゅっと抱きつく。

「…ちょっと、くっつきすぎ」

セシルがしっかり掴まっててって言ったのに、私は少し回していた手の力を緩めた。

「お嬢様でなくてすみません」

「は、いやっ別に」

レーネもダリルの前に乗せられている。

「準備は出来たね。行こう」


速い怖い、結構揺れる。景色なんて見ている余裕なんてない。

「姉さん、大丈夫?」

「ええ、少し怖いけど大丈夫」

後ろを走るダリルとレーネを見ると、レーネはダリルに掴まらずにスンッと澄ました顔をしている。レーネの体幹がすごいのか、ダリルの安定感がすごいのか


屋敷のようなものが見えてきて、ペースを落とした。

「ここからは歩こう。馬を盗まれても困るし、ここに繋げておく」

私はセシルの肩を借りながら、ゆっくりと馬から降りる。

「屋敷に着いたら、僕のことはセシル様。姉さんのことはマリーと呼ぶから」

「ええ、分かったわ」

気を引き締めていかないと


屋敷は小さくはないが、フェンスは開けっ放しで庭師も雇えない状況もあってか、建物にはツタがかかって花や木は枯れていた。

見た感じ、外に人を隠せそうなものはない。やっぱり、屋敷の中だろうか

「じゃあ、行くよ」

セシルが私達の前に立ち、扉を叩く。まだ起きていないのだろう、物音は一切しなかった。

鍵はかかっていないようだ。セシルは一呼吸置くと扉を勢いよく開けた。


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