93 悪役令嬢と作戦会議
ダリルの故郷を襲った犯人の目星がついた今、フローレス邸へ戻っている。
犯人の狙いがリックだったなら、再び村へ襲撃することはないとみた。そもそも、夜中に来るならまだしも早朝を狙ってきたのも不自然だ。最悪顔を見られる可能性があるのに
家につき、私が真っ先に向かうのはセシルの部屋。
「セシルいる?」
私が扉を叩くと、すぐに返事が帰ってきた。
「どうしたの姉さん?」
「セシルにお願いがあるの」
「分かったから、一回着替えてきなよ」
セシルに言われて、服が汚れていたのに気づいた。
「ごめんなさい。お待たせして」
服を着替え、改めてセシルの部屋に入る。お茶を頼んでいてくれたようで、ソファに座るとすぐにライラがお茶を淹れてくれた。
「で、どうしたの?」
「教えて欲しいことがあって、ヘストン子爵家って知ってる?」
セシルは私よりも、社交性があるからかそう言った話には詳しい。
「知ってるよ。でも、関わってはいけないよ」
「関わってはいけないってどういうこと?」
「エイベル子爵家は良い噂を聞かないからね。ところで、何でエイベル子爵家のことを?」
「ダリルの村が襲撃にあったの」
私の憶測が正しければ、犯人はヘストン子爵家だと思う。理由はまだ分からないけど
「村が襲撃に!?」
冷静なセシルも、流石に驚愕している。
「エイベル子爵はとにかくお金遣いが荒くて、女癖が悪い。今もいくつか怪しい話があるみたいだけど、そんなことをしていたとは」
そこまで知っているということは、エイベル子爵家の悪行は、余程有名なのだろう。
「それで、姉さんは何をするつもりなの?」
「エイベル子爵家に乗り込む」
私が何とかしないと、まずはリック達の救出が優先だ。
「作戦は?助けられるって見込みはあるの?」
セシルは淡々とした口調でそう言った。
「ないわ。でも、急がないと…誘拐された子供達が」
無謀かもしれないけど、私のせいだから私が助けに行かないと
「はぁ…僕も協力する。だから無茶なことはしないでね」
「無理についてこなくていいのよ。村の人達と同じぐらいあなたのことが大切だから」
私の正義感に、セシルを巻き込むのは間違っている。
「僕も姉さんが大切だから、協力するんだよ」
「ありがとう、セシル」
なんて良い子なんだろう。私がこの子も守らないと
「とりあえず、ダリルも呼んで作戦を立てよう」
「エイベル子爵家についてだけど」
ダリルをセシルの部屋に呼び、作戦会議を始める。
「姉さんには言ったけど、お金遣いが荒いから従者達も沢山解雇されているんだ。それに、ヘストン子爵令息も父親譲りの女好きで、侍女達だけでなく領民の女性にも手を出しているみたい」
絵に描いたようなクズっぷりに呆れて声も出ない。
「姉さんの憶測はあながち間違っていないと思うよ」
「え?どういうこと?」
「ヘストン子爵は人身売買に加担している可能性があるんだ」
それって、つまり…
「…リック達が売られるかもしれないってこと!?」
なおのこと早く助けに行かないと、私は思わずテーブルを叩いて立ち上がる。私の横でダリルの奥歯を噛みしめる音が聞こえる。
「姉さん、ダリルも一回深呼吸して」
落ち着いていられる状況ではないが、一度深呼吸をする。セシルは私とダリルの様子を見て、また口を開いた。
「さっきも言ったけど、エイベル子爵家は困窮しているんだ。だから、人を雇って誘拐なんてできない。それに、そのリックって人を誘拐したってことは顔を知っている人間が誘拐したってことだと思わない?」
「確かに…ということは、エイベル子爵とその息子が」
早朝に襲撃する時点で、慣れた人の犯行ではない。
「そういうこと、それに誘拐してすぐに売りに出すってなるとエイベル子爵の顔も割れる」
それなら、リック達はどこかに隠されているのでは?
「僕が思うに、エイベル子爵家の領地はあまり大きくない。運ばれるならエイベル子爵邸じゃないかな?」
セシルが地図を広げて見せてくれた。確かに大きくない領地で、売ることを考えたら屋根のある所に運ばれるに違いない。
「でも、時間がないのは確かだから、行くなら明日の早朝…」




