セシルと交流会
はぁ、どうにも息が詰まる。今日は男性のみの交流会だ。交流会と言っても、政治的な話が多いだろう。
父上に「せっかくだから参加しなさい」と言われしまい参加をしたが
「あのときのパトリシア様は気高くてお美しかった」
「水をかぶられた姿も色っぽくて…」
こんな不愉快な話を耳に入れるぐらいなら、参加しなければ良かった。
「トリシャちゃんは人気者だね」
「ミシェル様」
ミシェル様が飲み物を持ってきてくださった。ここに来て、ようやく知り合いに会った。カイル様とエリオット様も来てはいるようだけど、まだお会いしていない。
「大丈夫だよ。ああいうのはカイル様がなんとかしてくれるから」
ミシェル様の言っていた通り、カイル様がいつもの目が笑っていない笑顔で、姉さんの噂をしている連中に近づいていった。
「私の婚約者の話で、随分と盛り上がっているようだね」
「カ、カイル殿下」
「ぼ、僕達はこれで失礼します」
流石がカイル様、連中は尻尾を巻いて逃げていった。
カイル様は僕に気づいたのか、こちらに向かってきた。
「セシルも来ていたんだね。パトリシアは元気にしている?」
つい最近家に来ていたくせに、白々しい。
「はい、元気ですよ。カイル様との事を忘れているぐらい」
あの日、カイル様と二人で話していたことよりも、アリシアにキスされたことが衝撃だったのか、姉さんは混乱してしまい。最終的に女性同士のキスは挨拶のようなものという解釈に至り、アリシアもこれ幸いと、寝る前に額にキスをしてもらっている。僕はしてもらったことないのに…
「へぇ、私の帰ったあと何かあったのかな?」
「いえ、特には」
言って、面倒なことになるのも嫌だし、適当に誤魔化して逃げるか
「そういえば、姉さんがまた薬草の勉強を始めたみたいですよ。近いうちに招待させていただくことになると思いますよ」
薬草の勉強を始めたのは本当だけど、招待するかは分からない。
「それって、もちろん僕も招待してもらえるよね?」
「姉さんに聞いておきます」
姉さんに招待するように話しておかないと、それとエリオット様のことも招待しないと
やはり、慣れない所にいると疲れる。姉さんの事を聞きたがって、近寄ってくる奴らを軽くあしらってようやく一息ついた。政治的な話をするものだと思っていたから、チェスを楽しんでいる人や、下世話な話で盛り上がっている人がいて驚いた。
「フローレス公子様、少しお話よろしいでしょうか?」
「あなたは、モーリス=ミルトン男爵令息」
何度か夜会に参加はしているが、話したことは一度もなかった。この人も姉さんに…
「彼は、トリシャちゃんと仲が良いけど、トリシャちゃんの事をそういう目で見ていないから大丈夫だよ」
いつの間にか、僕の背後にいたミシェル様が耳打ちしてきた。
「パトリシア様にはよく相談に乗っていただいていたので、ご挨拶にと思いまして」
姉さんは優しいから、相談に乗ってあげていたのか、手紙のやりとりをしているわけではないし、本当に姉さんの事をそういう目で見ているわけではないようだ。
「フローレス公子様はパトリシア様と、仲がよろしいようですね」
「…僕はそう思っています。でも、姉さんがどう思っているかは、僕には分かりません」
姉さんは、僕の事をどう思っているんだろう。あんなことをした後でも、普通に接してくれているし、嫌われてはいないと思うけど
「前にパトリシア様も、似たようなことをおっしゃっていましたよ」
「姉さんが!?」
前にということは、姉さんも僕にどう思われているか不安だったのかな
「似たようなことを言うところも、仲が良い証拠ですよ」
それからミルトン男爵令息と少し話した、ミシェル様は僕にミルトン男爵令息の情報を教えてくれた後、エリオット様と話に行っていた。
僕が話終わったあと、また飲み物を持って来てくれた。
僕は少しミシェル様を誤解していたかもしれない。姉さんにしか興味がないのかと思っていたが、僕にも気を配ってくれるとは…
「ミシェル様、姉さんの食欲がないみたいで、医者に診てもらうのも断られてしまったのですが、今度様子を診てもらってもよろしいですか?」
アリシアが、姉さんにキスをしたとき「胸がいっぱいで、お腹もいっぱいなので」と言って、その日の夕食は少ししか手を付けていなかった。姉さんの食欲が落ちたのは、あの一件が起こる前だからアリシアとは別の理由だろうけど、心配だ。
「分かった、僕に任せて」
ミシェル様は医者の息子だし、それなりに知識もあるだろうから安心だろう。
「ミシェル様って、意外と気が使えるんですね」
思わず失礼なことを言ってしまったが、ミシェル様はニコッと笑って
「セシルはトリシャちゃんの大切な弟君だからね」
と言った。カイル様に言う嫌味っぽい感じがない。ミシェル様はエリオット様の次に信頼できるかもしれない。




