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91 悪役令嬢は混乱する。

あれから色々考えているけど、私が気にしているだけで、カイルはなんとも思っていない可能性もある。それに、顔が赤く見えたのも照れていたわけではなく、ダリルと間違えたことに怒っていて、それで帰ったというだけかも…猫に間違えられて、相当憤慨していたのか。

これは不敬を働いたということになるのかな?それならちゃんと謝って、罰するのは私だけにしてもらわないと

「……様、お姉様」

「ご、ごめんなさい。少しボーッとしていたみたい」

アリシアとセシルとお茶をしていたのに、考え事に集中し過ぎた。

「姉さん、大丈夫?」

向かい側に座るセシルが、私の顔を覗き込むように見てきた。一昨日の件があってから、セシルと目が合うと思い出してしまい。恥ずかしくなってくる。セシルは私のことを心配して、わざとあんなことをしたんだろうけど…

私は悶々としていると、セシルとまた目が合った。セシルは何故か嬉しそうに笑っている。


「失礼します。カイル様がいらっしゃいました」

本当にいつも急に来るな。少し怖いけど、二人を巻き込むわけにはいかない。

「…少し行ってくるわね」

「姉さん、僕が言ったこと覚えていないの?」

セシルには一昨日、男の人と二人きりになると危ないと叱られた。

「大丈夫よ。ダリルを連れて行くから」

ダリルと言っても、猫のだけど

この子は、カイルとダリルの事が苦手なのか威嚇をしたり、毛を逆立てる。ダリルを抱き上げるとあくびをしながらニャーと鳴いた。

「まあ、それなら…でも気をつけてね」


「失礼します」

応接室の扉を開けると、ソファに座っていたカイルが立ち上がった。

「パトリシア…先日は、その…ごめんね。動揺してしまって」

思っていた反応と違って、拍子抜けしてしまった。

「顔を上げてください。私は気にしていませんので、カイル様もお気になさらないでください」

怒ってはなさそうだし、逆に謝られてしまった。

「そっか、気にしていないのか…」

カイルは何か呟いたあと、ソファに座った。

私は向かい側に座ろうとしたが

「パトリシア、こっちに」

またしても、隣に座ることになった。

カイルには気にしていないとは言ったけど、怒っていたわけではないなら、何で急に帰ったんだろう。膝の上で丸くなっているダリルを撫でながら考えていると頬を撫でられた。

「カイル様?」

「唇…切れてない?」

カイルが私の唇を指でなぞった。嫌でも思い出してしまい、顔が熱くなってきた。

「だ、大丈夫です」

顔を背けたいのに、顔を掴まれていてできない。目を逸らすことしかできない。

「ねぇ、私の目を見て」

カイルは私のことを真っ直ぐ見つめている。綺麗なアメジストの瞳には間抜けな顔をした私が映っている。

「事故だったとはいえ、君とキスできたことは嬉しかった。だから、なかったことにはしないで欲しい」

「ふえ?」

私は間抜けな声を上げてしまった。嬉しかった?それって、私のこと…いやいやいや、そんなわけない。カイルはからかっているだけだ。

「ふふ、可愛い」

カイルは私の開いたままの唇を、また指でなぞる。

「君の許可を貰えたときに、改めてしても良いかな?」

それは、私が許可を出さない限りはしないってことだよね?ってか、何で私と?とりあえず、返事をしないと

「…分かりました」

「良かった、ありがとうパトリシア」

カイルは穏やかな笑みを浮かべた。これで解放されると安心したのもつかの間、頬に何か柔らかい感触が…

「さ、さっき…許可を貰えたときって」

「唇には…ね」

カイルは楽しそうにニコニコと笑っている。やっぱり、私のことをからかっているだけに違いない。こういうとき、ダリルはいつも威嚇しているのに、何故か今日は大人しくし寝ている。


「お姉様!!大丈夫ですか?」

勢いよく扉が開くと、アリシアがズンズンと私に近づいてきた。後ろをセシルが続いている。

扉が開く音で驚いていた、ダリルはテーブルの下に隠れてしまった。

「これはこれは、カイル様連絡もなしにどうされました?」

「セシル、アリシア」

もしかして、心配して来てくれたのかな?

「お姉様、カイル様の隣は危険です。こちらに」

私はアリシアに手を引かれて、反対側のソファに座らさせられる。

セシルはカイルの隣に座った。

「君達はいつも私の邪魔をするね」

「いえ、そんなつもりはありませんよ。ただ、心配なんです。大切な姉さんがカイル様に何かされないか」

「心配はいらないよ、義弟君」

二人は顔は笑っているけど、何か怖い。

「お姉様お姉様」

アリシアに腕を引かれて振り返る。

「なあに、アリシ…」

「えへへ、お姉様の唇奪っちゃいました」

「へ?あ、え?」

「「アリシア!?」」


どういうこと?今アリシアにキスされたの?アリシアは女の子だし、そういう意味ではないんだろうけど、こっちの世界では普通なの?アリシアはニパァっと笑っているし、もしかして、こんなことで照れてしまう私がおかしいの?



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