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89 悪役令嬢はお茶会を開く。

私はコーデリア侯爵夫人に言われた通り、お茶会を開くことにした。

お父様に許可を取り、誰を招待するか考えているとセシルが協力してくれた。まだ数回しか夜会に参加していないのに

「この令嬢はあまり良い噂を聞かないから、関わらない方が良いよ」

とか

「この令嬢と、この令嬢は呼んでも大丈夫だよ」

と的確に招待客を選んでくれた。


お茶会当日、エレノアとエリーゼは一足早く来て、準備を手伝ってくれた。

「少し緊張してきましたわ」

「今日は夜会で知り合った友人も来るし、招待客はセシルと一緒に決めたから大丈夫よ」

一緒にというより、ほぼセシルが決めてくれたけど

「お姉様、馬車が数台到着しました。デイジー達が案内してくれていますよ」

私は走ってきたアリシアの服や髪を軽く直し、私は着替えに行った。


準備も整い、庭へ向かう。今回はご令嬢だけしかいないため、何かあったときのためにダリルがついてくれる。

私の護衛騎士なのに、ランドルフ隊長が事あるごとにダリルを呼びつけているため、街へ行くときの護衛以外であまり私の側にいることはない。

まあ、ダリルがなりたかったのは騎士であり、私の護衛騎士というわけではないし、むしろ良いことではある。

「では、ダリル行きましょうか」

「は、はい!!パトリシア様」

ダリルは気合が入ったように、大きな声で返事をした。

「ダリルから見てこのドレスはどうかしら?」

前世だと、こういう系統のファッションは男性受けはあまり良くない。私としてはTPOさえ弁えていれば、自分の着たい服を着るのが一番だと思う。

「え!?あ、えーと、俺の髪と同じ色で…なんか、その嬉しいです。って、そういうことじゃないですよね」

普段着ているドレスのときはなんともないけど、夜会のときのドレスを見ると、取り乱したような反応をするような。

「ふふっ、そうね。でも、一緒に登場するならぴったりじゃない?」

「へ!?」



「本日はお茶会にご参加いただきありがとうございます」

招待状を送った令嬢達は、みんな参加してくれたようだ。公爵家からの招待状だから断れないというのもあるのだろうけど


「パトリシア様のドレス、素敵ですね」

さっそくドレスに食いついてくれた。

「ありがとうございます。このドレスはアシュベリー商会のものなの」

「ということは、エレノア様のお召しになられているドレスもですか?」

「はい、これもアシュベリー商会のものですわ」

「アリシア様やエリーゼ様のドレスもデザインが違うようですが、アシュベリー商会のものですよね?」

ステラも興味があるのか、ドレスをまじまじと見ている。

「そうです。ドレスは最近発売をしたので、よろしければ足を運んでみていただけたら嬉しいです」

「その、可愛いデザインだけど、私でも似合うものはありますか?」

ステラが恥ずかしそうにモジモジとしている。ステラは可愛いというより、綺麗な顔立ちだから着てみたいけど似合うのか不安なんだろうな。

「それなら、パトリシア様がお召しになられているようなデザインがお勧めですわ」

エレノアは興味を持ってもらえたことが嬉しかったのか、他の令嬢達にも似合うデザインや色、ヘアアクセサリーまで話している。みんなも真剣に聞いているし、ステラはメモを取っている。

「エレノア様、ありがとうございます。購入したら、みんなでそのドレスを着て、またお茶会をしたいです」

ステラの提案に他の令嬢達も頷く。

「是非、楽しみにしていますわ」

エレノアは嬉しそうに笑った。


「そういえば、あちらの騎士様は?」

「私の護衛騎士です」

普段、友人達が遊びに来るときはカイルがいることで、カイルのところの騎士とフローレス家の騎士達がいて警備が強固だけど、今回はカイルがいるわけじゃないから、ダリル一人でも大丈夫だろう。

「どこのご子息の方ですか?」

そっか、騎士は貴族しかなれないから、貴族だと思っているのか

「ふふっ、素敵でしょ、でも私の大切な護衛騎士だから、それは教えてあげられないわ」

公爵家の私がこう言えば、詮索はしないだろう。平民なのが悪いわけではないけど、平民を騎士にしたことで、他の騎士団から反感を買ってはいけない。それに、ダリルが傷つくかもしれないから

「い、いえ、そんなつもりは…ただ、お二人が一緒に来られたとき、この小説のお姫様と騎士様にそっくりで」

令嬢がずいっと見せてきたのは、『暗黒騎士と青いバラ』というタイトルの小説だ。

私は誤解とはいえ、ちょっと恥ずかしいことを言ってしまったことを後悔している。

「私も読んだことあります。このお姫様、お姉様に似てますよね」

「どんな内容なんですか?」

エリオットに粗相がないようにと言われたようで、口数が少なかった。エリーゼが口を開く。

「常に冷酷無慈悲で、誰かを信用することができなかった暗黒騎士様が、青いバラの乙女と呼ばれているお姫様に出会って、温かさを知って次第に恋に落ちて…」

「そして、お姫様には王子様と婚約の話がでて、身分差が二人を引き裂くのです…」

令嬢とアリシアがストーリーを教えてくれた。

「あのキリっとしたお顔立ちと、冷ややかな表情。パトリシア様以外にはご興味はないのでしょうね」

冷酷無慈悲な騎士様で、冷ややか表情ね。頑張ってポーカーフェイスを決めているだけで、普段から感情が顔に出やすくて分かりやすいダリルが、そんなふうに思われているとは…

ダリルを見ると無表情だが、耳が少し赤い。小説の登場人物に似ていると言われて照れているのかな?


エレノア達と他のご令嬢達を見送ると、ダリルは一息ついた。

「お疲れ様、暗黒騎士様」

「…俺、冷酷無慈悲ではないと思うんですけど」

冗談で言ったつもりだったが、ダリルはシュンと落ち込んでしまった。

「そうね、ダリルは温厚で優しくて、表情豊かだものね。私は暗黒騎士様ではなくて、ダリルが護衛騎士で嬉しいわ」

原作のダリルはちょっと、暗黒騎士に似ていると思う。

「…お、俺、走り込みに行ってきます!!」

ダリルは突然走ってどこかへ行ってしまった。

私もアリシアに借りて読んでみようかな?


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