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コーデリア侯爵邸にて

エレノアに連れられて、パトリシア達が部屋を出ていった。

部屋に残された私達はとりとめのないをしていた。

「珍しいドレスだって、着たら見せに来てくれるかな?」

「どうだろうね」

「香水にドレスって、商人でも来ているんですかね」

「商人が来ているのではなくて、コーデリア侯爵夫人が商人の出だからね」

コーデリア侯爵夫人の両親が営んでいるアシュベリー商会は貴族御用達の店だ。今はコーデリア侯爵夫人の弟が後を継いだようだが、コーデリア侯爵夫人はお茶会や夫人会で商品を紹介して、売り上げに貢献しているようだ。

「もしかして、侯爵家のエレノアが伯爵家の令嬢に絡まれたのって…」

ミシェルの言葉にセシルとエリオットも察したようだ。

「そういうことだよ」

平民が侯爵夫人になったことを、不満に思っている人間は少なからずいる。その親を見て育った子は、平民の血が混じったエレノアにぞんざいな態度をとっていた。伯爵家は愚か、男爵家の人間も…

あの日、パトリシアが仲裁に入らなかったら、エレノアはずっと同じ扱いを受けただろう。

パトリシアや私が後ろ盾になった今、エレノアが下位貴族に絡まれることはないだろう。余程の馬鹿でなければ、高位貴族に喧嘩を売るようなことはしないだろう。例外(ポリー)を除いて…

「それを聞いて、君達はエレノアのことをどう思った?」

「別に何も、エレノアはエレノアですから」

「うん、僕もそう思うよ。それに、トリシャちゃんたちも同じだと思うよ」

「エレノアは所作や言葉遣いも丁寧だし、立派な侯爵令嬢だよ」

エレノア自身もそう言ってくれると思って、今回屋敷に招いたのだろう。

「全くその通りだ!!」

バンッと扉を開けて入ってきたのは、パトリシアの頭を撫でた男。エレノアの兄君、イーサンだ。

「エレノアは自慢の妹だ!!君たちがあの子ことを分かってくれているようで安心した」

イーサンは当然のように、ソファに座り聞いてもいない話をベラベラと語り始めた。

「イーサン、いつから話を聞いていたんですか?」

「エレノア達が部屋を出てから、ずっと聞いていました」

つまり、最初から聞いていたということか、別に聞かれてはまずい話はしていないから構わないけど

「…暇なんですか?」

セシルが憐れむような視線をイーサンに向けると、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりにイーサンは捲し立てる。

「婚約者に当分顔を見たくないと言われてしまったんだ。確かに、記念日を忘れてしまった僕が悪いんだけど、顔を見たくないは言い過ぎだと思わない?それに、記念日がいつかは覚えていたんだよ。忙しくしていたから、その日が記念日だったことを忘れていただけで…」

セシルは声をかけてしまった手前、しっかり話を聞いているが、エリオットとミシェルは雑談をしている。

「そこの二人!!自分は関係ないとでも思っているのか?君たちは怒った女性の恐ろしさを知らないのか!!」

それが気に食わなかったイーサンが二人を説教するも

「いや、怒った女性の恐ろしさなら…」

「痛いほど知っています」

そう言ったエリオットとミシェルの瞳から光が消えた。エリオットはエリーゼ、ミシェルは三人の姉のことだろう。

「…そうか、カイル殿下はパトリシア嬢に怒られたことは?」

パトリシアに怒られたこと?少しからかってしまったときにムッとした顔をしたときはあったけど、あれは可愛かったから怒ってる感じではなかった。

「ないです」

「いや、そんなはずないです。実は怒らせていたなんてことはよくありますよ。記念日とかはちゃんと覚えていますか?」

記念日か、婚約した日に花を贈ってはいたけど

「そもそも、二人に記念日なんてあるの?」

「あるよ、婚約した日とか…」

初めて出会った日、刺繍入りのハンカチを貰った日…は怪我をさせてしまった日だから記念ではないけど、他にも

「姉さんは覚えていないと思いますよ」

…確かに、毎年不思議そうな顔をして受け取っていた。

「ま、まあ、政略結婚なら仕方ないですよ」

政略結婚ではない、けどパトリシアはそう思っているのかもしれない。

「…エレノアはお二人は本当にお似合いだと言っていました。えーと…その、だから、大丈夫ですよ…ね、セシル様」

「僕はそうは思いません」

「あ…はは、エリオット様はそう思いますよね」

「俺は…よく分からないです」

「ミ、ミシェル様は」

「僕はカイル様には釣り合わないと思うな。もちろん、カイル様にトリシャちゃんはもったいないって意味ね」

そうだ、ここに味方なんていない。いるのは恋敵だけだった。

「不敬もいいところだけど、覚悟はできてるのかな?」

「カイル殿下、落ち着いて…三人共早く謝って。そ、そうだ。パトリシア嬢に直接聞きましょう。今は衣装部屋にいると思うので、さあ行きましょう」


イーサンに腕を引かれて、部屋を出る。セシル達もついてきているようだ。パトリシアの言葉次第では、私は一生立ち直れないかもしれない。




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