88 悪役令嬢とコーデリア侯爵夫人
エレノアが香水を片付けに行ってから、数分後、エレノアが慌てた様子で、扉を開けた。
「エレノア、どうしたの?」
いつも落ち着いている、エレノアがこんなに慌てているのを見るのは初めてだ。
「母が、珍しいドレスを仕入れたから、パトリシア様達に着てほしいと…」
エレノアのお母さんって、宝石に詳しいと聞いたことはあったけど、宝石だけでなく、香水やドレスまで…すごいなぁ、いや、そういうものなのか?
「へぇ、良いんじゃない?」
カイルが爽やかな笑顔でそう言った。カイルもドレスが着たいのかな?
「珍しいドレスだなんて、楽しみですね」
「そうね」
「それでは、母の所へ行きましょう。カイル様達には申し訳ありませんが、少しお待ちください」
私とアリシア、エリーゼでエレノアについていく。
「お母様、パトリシア様達をお連れいたしましたわ」
通された部屋は、広い衣装ルームだ。そこにいたのは、茶髪に黄色い瞳の目元がエレノアとそっくりな女性がいた。
「まあ、あなた達のお話しは、エレノアちゃんから聞いていたのよ」
「はじめまして、パトリシア=フローレスと申します。本日はお招き頂きありがとうございます」
私に続いて、アリシアとエリーゼも自己紹介をする。
「まあまあ、可愛い子達ね。さっそくだけど、あなた達に着てほしいドレスがあるの」
コーデリア侯爵夫人が侍女達に箱を持ってこさせた。
「じゃーん。これよ」
箱から出てきたのは、フリルにリボンが沢山の甘々のロリータドレスと、ベルベット生地にレースのダークなゴシックドレスだ。普段着ているドレスより飾りが多いなというぐらいにしか感想は浮かばなかったけど、確かに珍しいと言えば珍しい。
「お人形さんみたいで可愛いでしょ。こっちはパトリシアちゃんで、それからこっちはアリシアちゃんね。これはエリーゼちゃん」
私が渡されたのはゴシックドレスだ。コーデリア侯爵家の侍女が来て私達の着替えを手伝う。
これは…私が着ると悪役身が増している気がする。ドレスは黒いレースのジャケットにベルベットのチューブコルセットのドレス。スカートの裾にはフリルが添えられている。ヘッドドレスもドレスと同じ生地の物だ。
「まあ、やっぱり可愛いわ。肌が白いから本当にお人形さんみたいね」
コーデリア侯爵夫人が興奮気味に私の周りを見て回っている。
「あら、アリシアちゃんもお着替えが終わったみたい」
私も一緒にアリシアを見に行く。アリシアは純白のドレスにフリルと、ピンクのリボンがついた可愛いドレスに白いレースのボンネットを被っていた。
「可愛い、天使みたい」
儚げで、触れたら消えてしまいそう。それに羽根も見えてきた。
「アリシアちゃんも良く似合っているわ。可愛い」
「はわ…お姉様、素敵です」
アリシアは私の手を握る。消えてしまいそうだなんて思ったが、私の手を握るアリシアの手は力強かった。
「あら、エリーゼちゃんとエレノアちゃんも着替え終わったのね」
エリーゼは私のドレスと同じで黒色がメインカラーだが、フリルやレースは白色でダークな雰囲気はあまりない物だ。
「あまり着ない色ですけど、可愛いドレスですね」
エリーゼが袖や裾を持ち上げて、楽しそうに笑う。
エレノアはピンクのドレスに白いフリルとリボンの甘々なメルヘンなドレスだ。
「あなた達本当に可愛いわ。私の見立てに間違いわなかったわ」
コーデリア侯爵夫人は俊敏に動きながら、みんなのドレスを見て回る。
「そのドレスはあなた達にプレゼントするわ」
「いえ、そういうわけには」
私には珍しいかはよく分からないけど、貴重なドレスを簡単にいただくわけには
「良いのよ、気にしないで。あ、そうだわ。そのドレスを着てお茶会に参加してみて。そのドレスを沢山自慢して欲しいわ」
まあ、夜会で着ていくようなドレスではないな。結局、タダでいただくことには変わりがない気がする。
「そしてアシュベリー商会で購入したって、言ってくれたらいいのよ。それにそのドレスで、お花がいっぱいの庭園でお茶会なんて素敵でしょ?」
アシュベリー商会?聞いたことない。
「アシュベリー商会はお母様の実家で営んでいるお店ですの」
エレノアが耳打ちしてくれた。なるほど、宣伝してきて欲しいということね。
「分かりました。素敵なドレスをありがとうございます」
アリシアもエリーゼも気に入っているみたいだし、私だけ断るのも失礼だ。
そうだ、一つ聞いておかないといけないことがあったんだった。




