エリオット=ブライスは苦労人
俺はパトリシア?の一度目の人生で起こった話を教えてもらった後、パトリシアの部屋を出た。
「エリオット様、姉さんは?」
部屋を出るなり、セシルとアリシアが迫ってきた。
まさか、ずっと部屋の前にいたのか?
「寝てるよ」
寝ると聞いただけで、眠りについたかまでは分からないけど
「とりあえず、場所を変えよう」
落ち込んでいるのか、膝を抱えて座っているカイルを連れて、応接室に戻る。
「何か分かったのですか?」
応接室に着いて、一番にセシルが口を開いた。アリシアはともかく、セシルとカイルに上手く誤魔化せるだろうか
「多分…薬の影響じゃないかな?」
「「薬ですか?」」
セシルとアリシアの声が重なる。
「パトリシアは熱があったんだよね?それなら解熱剤が原因かもしれない」
「お姉様は大丈夫なんですか?」
「高熱で、夢と現実の区別がつかない状態だったんだと思う」
これは本当にある症状だけど、パトリシアのはまったく関係はない。
「薬が悪かったってことですか?」
「いや、俺も詳しくは分からないけど薬自体が原因というわけではないらしい」
パトリシアと勉強するために得た知識が、役に立った。
「熱は下がってるみたいだし、少し寝たらいつものパトリシアに戻ってると思うよ」
「でも、ツンツンしたお姉様はもう見れないのですね」
「パトリシアは覚えていないと思うから、普通に接してあげて」
何とか誤魔化せた。
「お姉様はどんな夢を見ていたんですかね?」
セシルに抱っこをさせて、カイルの手を払いのけたと聞いていたけど、二人がどんな反応をするかを試したらしい。
「カイル様に意地悪されたんじゃない?」
「私はパトリシアに意地悪なんてしたことない」
少し前まで、落ち込んでいたカイルがムッとした顔してそう言った。
「夢の話でムキにならないでください」
セシルが鼻で笑った。
「まぁパトリシアは、カイルのことを嫌いになった訳じゃない事が、分かったんだから良いだろ」
俺達の知っているパトリシアは…だけど
「そっか…良かっ」
「嫌いではないけど、好きでもないと思いますよ」
アリシアがバッサリと切り捨てると、隣でセシルが頷いている。カイルがようやく立ち直りそうだったのに、この兄妹は…
「お姉様はカイル様にだけ敬語でお話ししますし、一線置いている感じがしますよね」
「それは、敬意を持ってそう接しているだけじゃ…」
弱っているのを良いことに、アリシアが痛いところを突いて、カイルにグサグサと刺さっている。
「エリオット様はカイル様に敬意を払っていないということですか?」
「そういうわけでは…」
「それにしても、お姉様は何でエリオット様だけ部屋に通したんですかね」
「……エリオットはパトリシア寝間着姿を見て、さらにはパトリシアの部屋に入ったんだよね」
カイルが俺の方を見て睨んでいる。何で俺が怒られる流れになっているんだろう。
「姉さんに冷たくあしらわれたからって、エリオット様に八つ当たりするのは良くないですよ」
セシルが、パトリシア以外を庇うなんて珍しい。とりあえず、セシルのおかげで助かった。
「エリオット様は姉さんに信頼を置かれているんですよ、カイル様と違って」
セシルは不敵な笑みを浮かべた。セシルは味方ではなかった、争いの火種を撒いて楽しんでいる。
案の定、カイルに睨まれている。
ブライス家の馬車に乗ってきたわけではないから、すぐには帰れない。はぁ、早く帰りたい




