82 悪役令嬢は見守る。
お城でカイルとお茶をしたときに、今でもエレノアがお城に来てカイルとお茶をしたり、おしゃべりをしていると聞いた。
カイルは本当はエレノアのことが…なんて思ったけど、カイル本人は否定していた。エレノアは多分セシルのことが好きなはずだから、それを聞いて安心した。
でも、そうなると二人がどんな話をしているのか気になる。
「…さん、姉さん」
「セシルどうしたの」
いけない、考え事をしていてセシルの声に気が付かなかった。
「姉さんこそ、どうしたの具合悪い?やっぱりカイル様と一緒だと息が詰まるよね」
「それはどういう意味かな?」
「考え事をしていただけで、具合は大丈夫だから」
私達はこれから、夜会へ参加する。私とセシルで参加する予定だったが、カイルも参加するようで迎えに来てくれることになって、今に至る。
馬車では私の向かいにセシルとカイルが座っている。
「何を考えていたの?僕で良ければ聞くよ」
セシルは私を心配してくれているのか、怪訝そうな顔をしている。
「ありがとう。でも大したことではないから気にしないで」
もしエレノアがカイルに恋愛相談とかしていたとしたら、セシルの前で聞くのは得策ではない。
「セシルでは頼りないよね。私が代わりに聞くよ」
いや、そういう問題じゃないんだけど、考え事をするときは一人のときにしよう。
「本当に大丈夫ですから…」
でも何を話しているかを、聞くとなるとカイルからの方が良いよね。
「パトリシア様、今回はカイル様にエスコートしていただいたんですね」
エレノアが満面の笑みで駆け寄ってきた。前回、私がセシルにエスコートされていたのが嫌だったのかな?
「トリシャちゃんとセシルにエレノアだ」
ミシェルとエリオットが近づいてきた。
「ミシェル様にエリオット様、お久しぶりですわね」
「セシルとエレノアの晴れ舞台が見れなかったのは残念だったな」
そういえば、ミシェルとエリオットは前回来てなかったな。
あの日のエレノアは黄色の花の飾りがついたドレスを着ていたけど、今日はピンク色のお姫様のようなドレスを着ていてる。エレノアは暖色が良く似合うなぁ。華やかでとても可愛い。
「エレノアとセシルは友人を作らなくて良いの?」
「ご友人ですか?」
エリオットの問いかけに、不思議そうに首を傾げるエレノア。
「パトリシアは去年頑張ったもんね」
しみじみとカイルが言った。
あのときは、エリオット達と気軽に話せないなんて思っていたけど、なんだかんだこうして集まって話してるし、助けてももらったな。でも、ステラ達とモーリスと友人になれたし、今後のことを考えて友人とまでは言わなくても交流を深めておくに越したことはない。
「私も頑張らないとですね」
エレノアが少し不安そうにそう言った。
「エレノアもセシルも綺麗だから何もしなくても、人が集まってくるわよ」
それに公爵家と侯爵家の人間だから、嫌でも集まってくるだろうな。二人ならちゃんと見極められるだろうけど
「パトリシア様、私…頑張ります!!」
エレノアは気合十分といった様子だ。
「まあ、友人が増えれば視野も広がるだろうし…」
セシルも友人を作る気になったようだ。
「頑張ってね」
「パトリシアのことは心配しなくても良いよ、私がしっかりエスコートするから」
カイルが私の肩を抱き寄せてきた。
「エリオット様、姉さんをお願いします。カイル様には近づけないでくださいね」
セシルが私をカイルから離してくれ、エリオットの近くに立たされた。
「え?あ、うん分かった」
「僕もいるのに何でエリオット?」
ミシェルの声は届かなかったようで、セシルは歩いていってしまった。
二人が去って少し経った。近くで令嬢達に囲まれているセシルが見えた。弟がモテていることは嬉しいけど、エレノアの事を考えると複雑だ。
「…あの子ちょっと距離が近くない?どこの娘かしら」
「あれはナイセル伯爵家の令嬢だね」
「パトリシアとエリオットも近いよ」
カイルに言われてハッとしたが、無意識でエリオットの袖を掴んでいた。
「それにしても、セシルは作り笑いが上手だね」
私は両手を、カイルに掴まれてしまった。
確かに、普段の笑顔と違いどこか裏にあるような笑顔をしている。
「カイル様から学んだんじゃない?」
「あーあり得る」
カイルはミシェルとエリオットに、好き勝手言われても気にも留めずにセシルを見ている。
「セシルも早く婚約者ができると良いんだけどね」
カイルの意味ありげな呟き。これはやっぱりエレノアにセシルの事を相談されていたのでは?
あとでエレノアに探りを入れてみようかな




