81 悪役令嬢は再会する。
セシルとのダンスを終えり、お父様の元へ戻る。
「では、行ってくるよ。パトリシアは親しいご令嬢達か……カイル様と一緒にいるんだよ」
カイルの名前を出すまでの間は何だったんだろう。二人に手を振って見送ると
「パトリシア様」
黄色のドレスを着たエレノアが駆け寄ってきた。
「エレノア、久しぶりね」
「パトリシア様は…カイル様ではなくセシルと踊っていらしたのですね」
そっか、小説だとエレノアとセシルは結ばれる。セシルが私と踊っていたのが嫌だったのか
「最初のダンスは、エスコートをしてくれた人と踊るものでしょう。それでセシルと踊っただけよ」
誤解を解くために言ったつもりが、少し言い訳をしているようになってしまった。
「そうだったのですね。踊られている間、カイル様がものすごいお顔をされていましたので…」
挨拶をしてからはカイルの姿は見てなかったから、どんな顔をしていたのかは見ていない。そういえば、エレノアは誰と踊ったんだろう。
「エレノアはどなたと一緒に踊ったの?」
「私はお父様と踊りましたわ」
エレノアはコーデリア侯爵と踊ったんだ。エレノアとは付き合いが長いのに、コーデリア侯爵に挨拶をしたことはなかったな。
「パトリシア様と公爵様のダンスを見たお父様が私と踊りたいと言ってこられたんですわ」
私が社交界デビューしたときにも来ていたのか
「今はコーデリア侯爵様はどちらへ?」
「お父様は、ご挨拶に回っていますわ」
探しに行くのも大変そうだし、落ち着いてから私も挨拶に行こう。そんなことを考えていると、突然声をかけられる。
「二人とも楽しそうだね」
カイルは近づいてくるなり、私の肩を抱いてきた。
「まあ、カイル様。それでは、私は失礼しますね」
エレノアはお辞儀をすると去っていってしまった。もう少し話したかったのに…
エレノアを目で追っていたら、さっきまで後ろにいたカイルが目の前に移動していた。
「今日のドレスも似合ってるけど、少し妬いちゃうな」
カイルに頬を撫でられる。前から思っていたんだけど、カイルは頬を触るの好きだよな。子供のほっぺたならともかく、触って楽しいものじゃない気がする。そもそも何に妬いているんだろう。
とりあえず、褒められたから褒め返しておこう。
「カイル様も今日のお召し物も大変お似合いですね」
白地に金色の刺繍、白いタイに紫色の石がついたブローチ。実際お世辞なしに、似合っているし格好良い。
「ありがとう。君にそう言ってもらえてとても嬉しいよ」
「本当に良くお似合いですね。カイル殿下」
いつの間にか戻ってきたセシルが、私の前に立つ。
「セシル、お父様と一緒にいたんじゃ…」
「挨拶回りも終わったし、大丈夫だよ。そんなことより、エリオット様とミシェル様がいないからって、少々調子に乗りすぎでは?」
見かけないと思ったら、二人は来ていなかったのか
「調子に乗るも何も、私は婚約者と話しているだけなんだけど…それにエスコートもファーストダンスも、君に譲ってあげたんだよ。可愛い義弟君」
一応婚約者だから、カイルからエスコートをしてもらうのが普通だ。セシルがカイルに許可を取ったってこと?でも何でだろう。
「姉さん、そろそろ父上の所へ行こう」
セシルが私の手を握る。
「そうね、カイル様失礼します」
カイルにお辞儀をして、去ろうとしたが
「パトリシア、もう少し私と一緒に…」
空いている方の手をカイルに掴まれてしまった。カイルの顔を見ると、少し悲しげな表情をしている。
「…カイル様?」
私がそう問いかけると、ほぼ同じくらいのタイミングでエレノアの声が聞こえた。
「セシル、久しぶりですわね」
「エレノア…さっきも会っただろ」
「先程は随分と猫をかぶっていらっしゃったので、素を見られるのが久しぶりと言うことですわ」
セシルは挨拶回りに行ったときに、コーデリア侯爵に挨拶をしていたのか、私も一緒に行くべきだったな。
「せっかくですし、少しお話ししませんか?」
「ええ、良いわね」
「私とセシルがお二人のお飲み物をお持ちいたしますわね」
エレノア、セシルと二人になりたかったのかな?可愛いな
「え?僕も…姉さんすぐに戻るから、カイル様に気をつけて」
気をつけるって…何を気つけたら良いんだろう。エレノアとセシルが気になるし、見に行こうかなと一歩踏み出すと、カイルにまた手を掴まれた。
「……パトリシアは、私と二人でいるのは嫌?」
私の手を掴んだいた手が、力なく離れる。
「…嫌ではないです。…ただ、少し緊張してしまうというか、何を話したらいいか分からなくて…」
嘘はついていない。嫌ではないけど、好きでもない。でも、何かが引き金となって、拷問を受ける可能性はまだ捨てきれない。
「緊張…はは…そっか、パトリシアは本当に可愛いね」
眩しっ、目が潰れそうなくらい、眩しい笑顔を向けられる。
「でも、慣れてもらわないと困るから、近いうちに一緒にお茶をしよう。約束だよ」
そう言って微笑んだカイルが私の指先にキスをした。
私は気恥ずかしくて、顔が熱くなってきた。
エレノア達の邪魔はしたくないけど、二人とも早く戻ってきて




