74 悪役令嬢とガーネット姉弟
ミシェルから招待状が送られてきて、私はガーネット伯爵邸に向かう。
久しぶりだな、薬草とか見れたら良いな。
「トリシャちゃん、いらっしゃい」
馬車から降りるとミシェルが出迎えてくれた。
「ミシェル、この前はありがとう」
あの日は、ミシェル達のおかげで私は助かったのにお礼もろくにできていなかった。
「どういたしまして」
ミシェルは優しく笑う。
私に気を使ってくれたのか、私達は薬草園に向かって歩いている。
そういえば、ミシェルは知ってるのかな?どうしてあんなことが起きたのか
「ねぇミシェル、ポリー様は何故あんな事をしたのか分かる?」
「…あの子はカイル様の事が好きだったみたい。それでトリシャちゃんを…」
ミシェルの拳に力が入っている。強く握りしめていたせいか、血が出ている。
「ミシェル、手を貸して手当するから」
「え?あれ、血が出てた」
本人は気づいてなかったのか、でも私のために怒ってくれているのかな?ミシェルも優しいな
「トリシャちゃん、いつも包帯とか持ち歩いているの?」
私がポーチから包帯を出していると、ミシェルが不思議そうに聞いてきた。
怪我をしたときのためというのもあるが、ダンスの練習で頻繁に靴擦れしてからは、靴擦れ予防のためにかかとにガーゼを当てている。スニーカーとかがあれば良いのに
「ええ…あ、でも私よりもガーネット伯爵に手当を頼んだ方が良かったわよね」
素人との手当よりも、医者であるフランクさんの方が適切な手当ができるだろうし
「ううん、トリシャちゃんに手当してもらえて嬉しいよ。ありがとうトリシャちゃん」
ミシェルは怪我をしているのに、ニコニコと笑っている。
それにしても、ポリーも言ってくれたら婚約者の座なんて譲ったのに…と言いたいところだけど、平気で人を陥れられる人が王太子妃になるのはちょっと…それにカイルにも相応しくない。やっぱり、アリシアみたいに可憐で優しくて賢い子が…まあ、アリシアはカイルの事を恋愛対象として見てないけど。きっと、私が婚約者でなくて別の人が婚約者だったとしても同じようなことは起きていたんだろうな。
「カイル様と結婚した方が良いのかな…」
「…あの夜会でカイル様はトリシャちゃんの婚約者であることを話しちゃったからね」
そっか、でもカイルが悪いわけではないから文句は言えない。けど、婚約解消されたらこの国には居づらくなる。外国語の勉強でもしようかな?
「…トリシャちゃんはカイル様のこと好き?」
ミシェルは少し俯いている。
「うーん、嫌いではないけど…好きかと聞かれると…」
分からない、カイルを信じても良いのかが…今の所は優しいけど、何かの拍子で小説のような顔を見せる可能性だってある。
「じゃあ…」
「ミシェル、あんたパトリシア様に何させてるの!?」
ミシェルが何かを言いかけたとき、ミシェルと同じ髪色の女性がやって来た。
「私が勝手にやってることなので、ミシェルは悪くないですよ」
私がそう言うと
「…そうだったのですね。誤解とはいえ、ご挨拶もなしにはしたない姿をお見せしてしまい申し訳ありません。私はガーネット家の三女レジーナと申します」
ミシェルのお姉さんだったんだ。髪色的に血縁だろうとは思ったいたけど、ミシェルが可愛い系ならレジーナは綺麗系だから分からなかった。
「ミシェル、こんな所ではなくて応接室にお連れしなさい。お茶も用意しないと」
ミシェルとお姉さん達って仲が良くなかったんだよね?ミシェルが変わったことで仲良くなったのかな?
「パトリシア様、応接室にご案内します」
「ありがとうございます」
本当はもう少し薬草をみていたいけど
応接室に行ってからは、レジーナも一緒にお茶をした。
「ミシェルはパトリシア様のおかげで変わったんです。なんとお礼を言っていいのか…」
「いえ、私は何も」
私が直接何かをしたわけではないし、変わろうと努力をしたのはミシェルだ。
「トリシャちゃんのおかげだよ」
ミシェルがそう言ってくれるなら、まあいっか
その後は、レジーナからミシェルの幼少期の話を聞いて終わった。
ミシェルも涼しい顔して「そんなこともあったね」と笑っていた。本当に仲良くなったみたいで嬉しいな。
「ミシェル、パトリシア様ってカイル様の婚約者なんでしょ」
「知ってるよ、トリシャちゃんと出会ってから、カイル様本人に言われたから」
ミシェルはそんな前から知っていたなんて、それならなおさら
「…それなら」
「でも、まだ婚約者ってだけで結婚はしてないでしょ、なら僕にだってチャンスはある」
ミシェルはパトリシア様に巻いてもらった包帯に口づけをした。
強がりを言っているようには見えないけど、王族を敵に回すようなことだけはしないで欲しい。




