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謁見の間にて

パトリシアの見送りをしたときに、パトリシアからキスをされた。正確には頬にだが…でも、私の長年の片思いが実を結んだ…というわけではなさそうだ。私がお礼はキスで良いよと言ったことを真に受けて…いや、冗談で言ったわけではない。それに、パトリシアからしてくれたことには違いないし…そもそも、キスなんて好きでもない相手にはしないだろうし、パトリシアは私にネックレスもくれた。もしかしたら、もしかするのでは…

「殿下…カイル殿下」

「何だ」

私としたことが、従者の気配に気づかないとは

「医者は何ともないと言っておりましたが、まだ体調はすぐれませんか?」

そういえば、医者が来ていたが、私は特に体調は崩していない。

「大丈夫だ」

「それなら良かったです。カイル殿下が真っ赤な顔で死ぬかもしれないとおっしゃっていたのでとても心配したんですよ」

それで医者が呼ばれたのか、申し訳ないな。


「カイル殿下、ラッセル伯爵がお見えです」

来たか、あちらはどう出るのかな?

父上はすでに謁見の間にいらっしゃるんだろうな。

「カイル殿下、この度は娘が…ポリーがご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした」

ラッセル伯爵が跪いている。表情は伺えないが、ラッセル伯爵の顔色はは青ざめている。

「面を上げよ」

父上の言葉でラッセル伯爵は顔を上げる。

「ポリー=ラッセルには辺境地にある修道院へ行ってもらう」

修道院…罪を犯した女性が収容される場所だ。

「修道院ですか!?あの子は…ポリーは、私の大切な娘なんです。どうか更生のチャンスをお与えください」

父上の裁定に不満があるようだ。本当に親子揃って厚かましい人間だ。

「そうですか、大切な娘…」

「フローレス公爵にとってパトリシアも大切な娘なんですよ」

「…それは」

私の言葉にラッセル伯爵は目を泳がせている。

「逆の立場でも同じことを言えるのですか?」

きっと、無駄に騒ぎ立て事を大きくするだろう。

「…ラッセル伯爵、いやハドリー残念だ…お前が自分の娘を焚き付けたのだろう」

父上も気づいていたのか、まあ私が気付けるのだから当たり前ではある。

「四年前の狩猟大会の件、お前も関係しているのか?」

ポリー=ラッセルはあの日、箝口令が出ていた暗殺未遂の件を知っているようだった。

「いえ、私は…」

ラッセル伯爵は身体を震わせ、汗を垂らしている。

「調べはすでについている。よって、ラッセル伯爵家の爵位の返上及び財産、領地の没収。イリース王国から出ていってもらう」

少々甘い気もするが、仮にポリー=ラッセルが修道院から逃げ出したとしても帰る家はないのだから妥当だろう。

ラッセル伯爵もといハドリーは、騎士達によって連れて行かれた。

「本当ならアルフレッドも呼ぶべきだったんだろうが、あいつは血の気が多いからな」

父上はため息交じりにそう言った。私も話には聞いていたが、狩猟大会のあの件でアルフレッド宰相は手を付けられないほどだったと…

あの温厚そうな見た目からは想像もできない。いや、片鱗は見えてはいたか…

「カイルお前はパトリシアとの結婚の前に、アルフレッドを懐柔させないとだな」

父上…アルフレッド宰相を懐柔できたとしても、簡単には結婚させてはもらえないんですよ。アリシアとセシルがいる限りは…


流石にあの二人も、パトリシアの邪魔はしない。つまり、パトリシアが私のことを好きになってくれたら邪魔はしないだろう。それに、あの日の夜会でパトリシアを婚約者だと発表した事で、これからは堂々とパトリシアをエスコートできる。時間はたっぷりある。ゆっくりと時間をかけてパトリシアの心を射止めてみせる。


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